2024.09.12
【F速プレミアム】
王者フェルスタッペンの戦い:レッドブル、数々のアップグレードで失われた車のバランスに苦戦
(c)XPB Images
前半戦の圧勝が嘘のように苦戦を強いられているレッドブル、F1第15戦オランダGPではマックス・フェルスタッペンが2位表彰台を獲得したものの、第16戦イタリアGPでは6位と表彰台争いもできない状況になってしまった。F1スイス在住のF1ジャーナリスト、マチアス・ブルナーが2連戦のレース週末を語る。
--------------------------------------
夏休み明け以降の24年F1シーズンは、夏休み前のシーズンを鏡に写した反転画像のようだ。レッドブルのモータースポーツコンサルタント、ヘルムート・マルコが指摘したように、「マクラーレンが最速のオールラウンドカーとなり、私たちを脅かしている」のである。
マックス・フェルスタッペンは、21年、22年、23年と母国のザントフォールトでのレースを3連覇してきた。だが、今年のオランダGPをランド・ノリスに次ぐ2位で終えた彼は、「全力を尽くした結果がこれだった」と認めざるをえなかった。
状況の変化の速さには、ただ驚かされるばかりだ。開幕戦のバーレーンと続くサウジアラビアでフェルスタッペンが圧勝したときには、このままレッドブル・レーシングが全勝してしまうのではないかと懸念する人さえいた。しかし、その後の開発競争ではライバルチームの方がペースが速く、効率も良かった。
マックスは言う。「シーズン前半戦の方がクルマのハンドリングは良かった。タイヤマネージメントにも問題を抱えている。以前はそれが僕らの強みのひとつだったのに、まったくわけがわからないよ」
時として、一歩前に進むためには、一歩退かねばならないこともある。レッドブル・レーシングはモンツァでフロアの一部を旧仕様に戻すという実験をした。以前のワーキングウインドウが広いクルマを取り戻すことを狙った試みだった。
モンツァでの予選を終えたフェルスタッペンは、困惑の表情を浮かべていた。「Q2ではバランスは良かったんだ。ところが、Q3ではどちらの新品タイヤセットでもクルマが曲がろうとせず、アンダーステアが強すぎた。あれは本当にショッキングだった」
結局、マシンの気まぐれな挙動は解消されず、予選のひとつのセクションと次のセクションの間でバランスが変わってしまう現象の原因は、依然として理解できないままだった。
■regist■
フェルスタッペンのイタリアGPスタート前のコメントは、すでにあきらめ気味のようにも聞こえた。「ここでいったい何が起きているのか、まったく解明できていないんだ」
それでもマックスは果敢に戦ったが、ドライバーにはどうしようもない問題が足枷となった。「エンジンのパワーをフルに使ってドライブできなかった。そして、少しプッシュし始めると、すぐにタイヤにグレイニングが起きた。なかななか難しいレースだったよ」
もうひとつ、彼が口にしなかった問題もあった。この週末に持ち込まれたモンツァ専用のウイングセットが、理想的とは言いがたいものだったのだ。
フェルスタッペンはこのレースを6位でフィニッシュした。唯一の救いは、ポールポジションからスタートしたタイトル争いの最大のライバル、ノリスが、シャルル・ルクレール、オスカー・ピアストリの先行を許し3位にとどまったことだ。
マルコはこう語っている。「何かが起きているのは間違いない。中国GPまでは、このクルマはバランスが良く、ドライバーが予測したとおりの挙動を示していた。それが失われてしまったんだ。それはセットアップの問題ではなく、アップグレードとして投入したパーツのどれかが関係しているようだ。何とかして以前の速いクルマを取り戻す必要がある。それができなければ、ドライバーズとコンストラクターズの両タイトルの防衛はきわめて困難になるだろう」
中国まではバランスが良かったのだとすれば、その時点での仕様に戻してみるという手は考えられないだろうか。だが、フェルスタッペンはそのアイデアには否定的だ。「いや、あの時期と比べると、ライバルたちの開発はずいぶん進んでいるからね。おそらく乗りやすくはなるだろうけど、速さが足りないという結果になると思う」
レッドブル・レーシングは、コンストラクターズ選手権でマクラーレンにわずか8点差まで追い上げられている。フェルスタッペンとノリスのドライバーズ選手権の得点も、いまや303対241だ。
(c)XPB Images
(Mathias Brunner/Translation:Kenji Mizugaki)
最新ニュース一覧
2024-09-12更新
2024-09-10更新
2024-09-08更新
2024-09-04更新
2024-09-03更新
最新PHOTO一覧