2024年F1第13戦ハンガリーGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

【】【F1第13戦無線レビュー(1)】フェルスタッペンとレッドブル陣営に不穏な空気「アンダーカットを放置して、素晴らしい戦略だ」

7月25日

 2024年F1第13戦ハンガリーGP。スタート直後に3台が横並びでターン1に飛び込み、ランド・ノリス、オスカー・ピアストリ、マックス・フェルスタッペンによる首位争いで幕を開けた。だがフェルスタッペンとレッドブル陣営の間には、序盤から戦略などをめぐり不穏な空気が流れていた。ハンガリーGP前半を無線とともに振り返る。

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 オスカー・ピアストリ(マクラーレン)が、ついにF1初優勝を遂げた。しかし終盤に首位に立ったランド・ノリス(マクラーレン)をチーム側が必死に説得し、順位を交換しての勝利。それだけにピアストリも、喜び爆発という感じではなかった。

 レーススタート前、グリッドに向かうセルジオ・ペレス(レッドブル)が、前日の予選で大破させたマシンを修理したメカニックたちに、感謝を伝えた。

ペレス:素晴らしい仕事をしてくれた。いいレースで応えるよ。
ヒュー・バード:よし、行こう。

 スタート直後、マクラーレンの2台とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が、3ワイドで1コーナーへ突っ込んでいく。アウト側のフェルスタッペンは大きくコースをはみ出したものの、ノリスの前、2番手で戻った。

1周目
ノリス:マックスはポジションを返さないといけない。
ウィル・ジョゼフ:わかってる。
ノリス:最初からアウト側に行っていた。それでコースオフしたんだ。あれは、ありえないよ。

2024年F1第13戦ハンガリーGP
2024年F1第13戦ハンガリーGP オスカー・ピアストリ(マクラーレン)、ランド・ノリス(マクラーレン)、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 フェルスタッペンの言い分は、真っ向から対立するものだった。

フェルスタッペン:押し出された。エイペックスでは、僕が前だったのに。
ジャンピエロ・ランビアーゼ:了解した、マックス。

 しかし結局は2番手を譲る羽目になった。

4周目
ランビアーゼ:審議に入っているから、譲った方がいい。この件は、あとで話そう。ターン1でランドに譲るんだ。
フェルスタッペン:どうしてそういう決断になるんだ? そんなの、XXXだ!

 ペナルティを科されるのを避けたレッドブルだったが、フェルスタッペンは納得がいかない。この後のフェルスタッペンとランビアーゼは戦略をめぐってかなり険悪なやり取りを重ねるが、早くもこの辺りからギスギスした感じだった。

14周目
ジョゼフ:ランド、僕らはマックスとレースしてる。ギャップは2秒9。いい感じだ。

ランド・ノリス(マクラーレン)
2024年F1第13戦ハンガリーGP ランド・ノリス(マクラーレン)

 首位を行くピアストリに追いつくよりも、背後のフェルスタッペンを引き離すことに集中しろという指示だった。

 一方、はるか後方を走るフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は、怒りを露わにしていた。

15周目
クリス・クローニン:もしランスがピットインしたら、1秒後ろ。角田は3秒半後ろになる。
アロンソ:そんなのどうでもいい。相手が誰だろうが、もうレースに負けているんだ。

フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)
2024年F1第13戦ハンガリーGP フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)

 ウイリアムズやハースの仕掛けたアンダーカットに反応し、7周目というかなり早めのピットインだったアロンソ。これが結果的に裏目に出て、7番手から14番手へと大きく後退してしまう。完全に戦意喪失という感じだった。

18周目
フェルスタッペン:ブレーキもダメだし、ターンインもできない。フロントもリヤも最悪だ。

 マクラーレンのペースについていけないフェルスタッペン。かなり欲求不満の溜まっている口調だった。

 ここまで4番手につけていたルイス・ハミルトン(メルセデス)は、16周目にハードタイヤに交換。走り出してすぐに、グリップ不足を訴えた。

21周目
ハミルトン:このタイヤは、間違いなくグリップが低いね。

 この時点で14番手だったアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)も、ハードタイヤに手こずっていた。

28周目
ジェームズ・アーウィン:アレックス、プランBの可能性も考えていてくれ。
アルボン:わかった。でもいい考えだとは思えない。タイヤがもう死んでいるからね。

 ウイリアムズのプランBはおそらく、第2スティントのハードをできるだけ引っ張って、最後にミディアムで順位を上げる戦略だったのだろう。しかしアルボンは、この時点でまだ20周ほどしか入っていなかったにもかかわらず、「タイヤはもう持たない」と訴え、次の周にピットに向かった。結局ハード→ハードと繋いだアルボンは入賞圏内に復帰することなく、14位完走に終わった。

アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)
2024年F1第13戦ハンガリーGP アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)

 ハードのグリップ不足は、フェルスタッペンも同様だった。

36周目
フェルスタッペン:ブレーキバランスがマイナス5なんだけど、全然曲がらない! 信じられないよ!

 ブレーキバランスをかなり前側にしているにもかかわらず、酷いアンダーステアが解消されないようだった。

 さらに40周目にハミルトン、シャルル・ルクレール(フェラーリ)がピットインしたのに対し、レッドブル陣営はなぜか動かなかった。これでふたりに先行されてしまったフェルスタッペンは、皮肉たっぷりの無線を投げた。

42周目
フェルスタッペン:アンダーカットをそのまま放置して、本当に素晴らしい戦略だね。
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F1第13戦無線レビュー(2)に続く



(取材・まとめ 柴田久仁夫)