2023.05.12
【F速プレミアム】
レースが増えると問題も増えるF1のジレンマ/スペイン人ライターのF1コラム
(c)XPB Images
F1第4戦アゼルバイジャンGPはスプリントのグランプリが新フォーマットで開催された。金曜日に予選(決勝レースのグリッドを決める)を行い、土曜日の午前にスプリント・シュートアウト(スプリントでの予選を決定)、そして午後にはショートレースであるスプリントを実施。そして日曜日に通常の決勝レースを行った。いつもとは違うフォーマットはどのような評価だったのだろうか。スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアがスプリントフォーマットについて語る。
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アゼルバイジャンGPを見終わって、がっかりした気持ちでテレビを消した人は手を挙げてほしい。私ひとりではなかったと思うのだが……。こういうことも時にはあるものだ。もちろんF1は素晴らしいし、素晴らしいレースも頻繁に行われる。そしてレースがそれほど良くない時でも、他に考えるべき興味深いことがしばしば起きるものだ。そういう意味では、バクー・ストリートサーキットはその独特な特性によってほぼ毎年面白いレースが行われている。では、なぜ今回私はがっかりしているのだろう?
バーレーン、サウジアラビア、オーストラリアでは“通常”の3回のレースウイークがあったが、その後のアゼルバイジャンは2023年シーズン最初の“スプリントウイークエンド”だった。それに加えてフォーマットが新しくなり、各レースに向けた2回の予選セッションがあった。遠回しな言い方をするつもりはないのではっきり言うが、金曜日の予選の方がよかった!
これは個人的な意見かもしれないが、現在のF1予選システムは、最高のもののひとつだと感じている。本当に素晴らしいものだと心から思っているので、使うべきタイヤやセッションの割り当て時間を変更することは過ちだと思う。
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(c)XPB Images
しかしより重要なことは、スプリントを見ていると、このレースの目的はレース時間を増やしてテレビ視聴者を獲得し、より多くの(日曜日だけでなく土曜日の)チケットを売るためだけのものに思えることだ。ところでこれはMotoGPについて私が持っている感想と同じだ。MotoGPは世界中、特にヨーロッパでの視聴率の低下に苦しんでいるところだ。トレンドが変化して、スプリントが若い視聴者たちとのつながりをより強められることは否定できない。必ずしもモータースポーツのファンというわけではなく、ドライバーたちをきっかけにスポーツが好きになった人たちだ。これをホットなNetflixのドラマシリーズと考えよう!とにかくそのようなものとして、だ。
今後、スプリントフォーマットの週末はあと5戦ある。だが状況を明確にしておこう。各チームはスプリントを気に入っていない(より多くのレースにかかる関連コストのせいだ)。多くのドライバーもスプリントを気に入っていない(マックス・フェルスタッペンは廃止を公に提案している)。効果はよくてもまちまちだ。アゼルバイジャンで見られたことを例にとってみよう。金曜日の予選は日曜日のスターティンググリッドを決めるが、これは素晴らしかった。エキサイティングで緊張をはらみ、予想外の展開があり、テレビを消した時にはレースへの満足と興奮を感じていた。対照的に、土曜日の午前中は繰り返しのように感じられた。非常に似た結果が出て、それほど興奮するものではなかった。スプリントの付与ポイントが非常に少ないことを考えると、これは普通のことだろう。
そして次に私が問題視していることだが、個人的にスプリントのアイデアは気に入っていないが、F1がこのレースを成功させたいのなら、十分に重要性があると感じさせる必要がある。たとえばMotoGPはスプリントレースにハーフポイントを付与している。F1はメインレースのポイントの3分の1強を与えているに過ぎない。任意のふたつの順位の差は1ポイントしかない。日曜日の優勝者は25ポイントを獲得するシリーズでだ。スプリントで2位を走っているとき、1ポイントを得るために優勝を狙いたいだろうか? 十分なモチベーションがなければ、ドライバーはリスクを取らなくなる。マシンにダメージを負うことは大きな問題だからだ。そのうえ、予算制限があることから、マシンのダメージは開発リソースをさらに減らしてしまうかもしれない!
結局、レースの大部分でドライバーたちは互いに1.5秒差で走行しているのが見られた。リスクを犯す理由も、競争する理由もない。これが決勝レースだったら、ドライバーたちが何もしたくないという状況は当然のことだと言えるだろうか?
日曜日のレースが一番エキサイティングなイベントではなかったことは、土曜スプリントのせいではないので、その意味ではスプリントを批判したくない。しかし“より多くのレース=より盛り上がる”という意図があるはずだが、現実にはそうなっていない。「もちろんそんなことはない!」と思う人もいるかもしれない。私もその意見には同意する。しかし私はF1が大好きなので、F1が失敗に終わるような間違った選択をしているのを見ると、残念だと感じるのだ。
要するに、ここでF1が犯しているミスはメインイベントのなかに“ミニイベント”を作り出していることだ。そしてこのスポーツの性質上、ちょっとした盛り上がりが生まれるわけだ。しかし繰り返しになるが、我々はシーズン中に23回のレースウイークがあるという状況にある。
私は子どもの頃、F1を毎週開催してほしいと考えていたものだった。今になってなぜ当時の私がそのように考えていたかわかった。それは16戦や17戦が完璧な回数だったからだ。十分に楽しむことができ、もっと多くを求めるようになる。今では観すぎのように感じる。F1はレースを追加して盛り上げようとしているが、その逆になっていると私は感じる。レースの数が少なければ、1戦ごとの重みが大きくなる。
レッドブルが2022年シーズンのように難しいスタートを切っているところを想像してみてほしい。今では、彼らには挽回するのに20戦以上のレースがある。そして最高のマシンなら挽回することは簡単なのだ。
しかし厳しいスタートを切った後で、その後14戦や15戦しかないとしたら? 各レースの結果は重大になり、すべてのミスがより高くつく。そしてリスクに対してリターンも多くなる。すべての報いが、より満足できるものになるのだ!そう考えると17戦は最適な回数だとは思わないだろうか?
今ではすべてのレースがそこまで重要ではないと感じられる。それに加えて、ジャーナリスト、メカニック、エンジニア、そしてドライバーですら苦しめられる時がある。野球やフットボールやその他の全国的なスポーツとは対照的に、F1は世界的なイベントなので、家を離れて過ごす時間が非常に多い。シリーズの取材にかかるコストはひどく高くなっている。関係者の家庭はますます壊れていく……私は多くの問題を見ているが、リバティ・メディアによるこのアプローチはそれほど成功していないと感じている。
注目すべき点がもうひとつある。今年、シーズン前半には2回のスプリントがある。シーズン後半には4回あり、カタールとアメリカ、ブラジルとメキシコのそれぞれ2回は連続して開催される。まるでF1は、これがF1の未来だという考えにファンを慣れさせようとしているようだ。MotoGPのように、フルシーズンでスプリントが行われるようになるのだろうか? 個人的にそのアイデアは嫌いだ。これまでの一部のスプリントが実際に楽しかったことは否定できない。しかしそれらは決勝レースほどの楽しめたとは言いがたい。あなたはどう思うだろうか?
(c)XPB Images
(Alex Garcia/Translation: AKARAG)
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