2022.06.08

【F速プレミアム】
【王者フェルスタッペンの戦い】選手権リードも慎重な姿勢は崩さず「勝利と敗北が紙一重なのはよく知っている」


(c)XPB Images
 モンテカルロで行われたF1第7戦モナコGP。采配が振るわなかったフェラーリに対し、レッドブル陣営は優れた戦略でセルジオ・ペレスの優勝、そしてマックス・フェルスタッペンが3位という好成績を上げ、チャンピオンシップ争いでさらにリードを広げた。スイス在住のF1ジャーナリスト、マチアス・ブルナーがフェルスタッペンの週末を振り返る。

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 潮流は変わりつつある、それも急速に。オーストラリアGPの終了時点では、フェラーリのエース、シャルル・ルクレールが71点差で選手権をリードし、マックス・フェルスタッペンは3戦で2度のリタイアを喫して、わずか25点しか獲得していなかった。ところが、それからの4戦でマックスは3勝(イモラ、マイアミ、バルセロナ)をあげ、いまや125対116で首位に立っている。

 今季の選手権を牽引するふたりのドライバーは、いずれもモンテカルロでの好成績を切望していた。ルクレールはこれまで戦ってきたどのレースカテゴリーでも、この母国でのレースを完走したことがなかった。一方、フェルスタッペンはF1世界選手権の至宝とも称されるこのグランプリで、昨年優勝を飾っている。
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 マックスにとって、プラクティスと予選は必ずしも順調ではなかった。6つのセッション(フリープラクティス3回と予選Q1からQ3まで)のうち5つで、ルクレールが最速だったのだ。フェルスタッペンは悔しそうに語っている。「予選の最後のランは、途中でそれまでのベストをコンマ2〜3秒上回っていて、シャルルとポールを争えそうだった。ところがクラッシュが発生して、そのラップを最後まで走ることができなかった」

 皮肉なことに、予選終盤に赤旗の原因となったのは、他でもないマックスのチームメイト、セルジオ・ペレスだった。トンネル手前の右コーナー、ポルティエでバリアにクラッシュし、避けきれなかったフェラーリのカルロス・サインツにもヒットされたのである。この2台がコースをふさぐかたちで止まったため、マックスを始めとする他のクルマは通れなくなり、赤旗が提示された。

 彼の言葉を借りれば「ドタバタだった」レースを、フェルスタッペンは3位で終えた。結果を左右したのは、レッドブル陣営の優れた戦略と、対照的に大いに議論の余地があるフェラーリ首脳陣の采配だった。マックスは言う。「土曜の夜、ベッドに入った時点では、シャルルに対する選手権ポイントのリードを拡げられるなんて予想していなかった。思いがけない幸運に恵まれたよ」

「週末全体を通じて、クルマは文句なしと言える感じではなかった。僕にはもっと鋭く反応するフロントエンドが必要なんだ。でも、チェコはわずかにアンダーステア気味のクルマにもうまく対処できる。ともあれ、彼がこのレースで勝って、僕もすごくうれしいよ」

 その幸運は暗転する可能性もあった。レッドブルのドライバー両名がいずれもピットアウト時にイエローラインを踏み越えたとして、フェラーリが抗議を提出したのだ。しかし、スチュワードの裁定は「ペナルティを科す必要なし」というものだった。

 第1戦バーレーンGPと第3戦オーストラリアGPでリタイアを強いられたことについて、マックスはこう語っている。「焦ってはいないよ。シーズンは長い。遅かれ早かれ、敵方も不運に見舞われるはずさ」。実際、彼の見方は正しかった。第6戦スペインGPでは、ルクレールがエンジントラブルでリタイアしている。

 また、モナコの週末を前にして、フェルスタッペンはこんな話もしていた。「ここまで3連勝というのは悪くない。だけど、僕ももう何年もこの世界にいるから、勝利と敗北が紙一重だということはよく知っている」

 レッドブル・レーシングのボス、クリスチャン・ホーナーは、今年のフェルスタッペンが以前とは別人のようだと評した。「タイトルを勝ち取ったことで、ずいぶん精神的に落ち着いたと思う。その好例が、スペインでのスタート直後の攻防だ。マックスはいいスタートを切ったが、最初のコーナーで大きなリスクを取ってまでルクレールと争おうとはしなかった。賢明にも、そこで自分を抑えることができたんだ。チャンピオンとは、そういうものだよ」

(c)XPB Images

(Mathias Brunner/Translation:Kenji Mizugaki)

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