【】【F1第6戦モナコGPの焦点】見る者の心を惹きつけた60周を超える接近戦。伝統のモナコに立ちはだかる“抜けない”現実

5月29日

 時代とともに、コースには大小さまざまな改修が加えられてきた。山側は歴史的建物があるため変更が不可能で、改修は常に、海側を埋め立てることによって実現してきた。それぞれの時代のノウハウが蓄積されてきたからこそ、こんなに小さなコースでF1の走行が可能になり、観客は世界一の至近距離から走行中のマシンを見ることができる。

XPB Images

 それでも、2003年以来のコースも、今日のF1には難しくなりつつある──。ラップタイムの差が何秒であろうと“絶対に”抜けない現実が立ちはだかるのでは、天候変化がない限り、グランプリが予選とピット作戦に占められてしまうのだ。近年は同じ日にインディ500が開催されているため、モータースポーツファンにはコントラストが鮮やかすぎる。

 問題はオーバーテイクが不可能という現実以上に、ドライバーがタイヤ管理に専念し、作戦にポジションを委ねてしまう点、コース上のアクションに乏しい点にある。

 今日のF1のダウンフォースがあればトンネルの後半、ターン9以降はDRSを使えるようにしても危険ではないかもしれないし、ヌーベルシケインのブレーキングをもっと大きくするレイアウトも考えられる。

 特殊なピットのレイアウトも問題を生んでいる。ハースがFP1でブラックフラッグを必要としたのはピットガレージ裏のサインボードが役割を果たせないためで、Q1のシャルル・ルクレールのように車重測定の指示を見逃す問題が他カテゴリーでも起こっているのは、ピット入り口からウェイブリッジまでの距離が短すぎてカーナンバーを示すタイミングが遅れるためだ。フェルスタッペンとボッタスの接触も基本的にはピットロードの狭さに起因する。

 ハミルトンの武勲がいっそう輝くのは、抜けないと分かっていてもフェルスタッペンがプレッシャーをかけ続け、挑戦を諦めなかったから。でも、毎年そんな“挑戦者”は望めないし、100%不可能となれば期待も生まれ辛くなってくる──。時にはそこに成功の可能性が垣間見えるよう、伝統のモナコも新たな進化を遂げるべき時かもしれない。

(Masako Imamiya)