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【】松田次生のF1目線:レッドブルの進化が際立った3連戦。メルセデスはここが正念場

7月13日

 フォーミュラ・ニッポンの元チャンピオンで、現在はスーパーGTでニスモのワークス車両でGT500を戦い、スーパーフォーミュラではチーム監督としてKCMGを率いる松田次生がF1について語る連載企画。今回は2021年第7戦フランスGP、第8戦シュタイアーマルクGP、第9戦オーストリアGPを振り返ります。

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 この3戦はレッドブルの進化が目立ちましたね。トータルパッケージではメルセデスを上回っていると思います。メルセデスはドラッギーな特性だと思うのですが、ダウンフォースが強いため足が硬く、小さいコーナーはうまく曲がれないようです。

 ハミルトンは予選でものすごくオーバーラップを使うのですが、もしかしたらダウンフォースが強い分、ピッチ変化が大きいのかもしれません。それを抑えるためにアクセルを同時に踏んでいるのかも。

 ちなみにハミルトンはブレーキング時はほぼエンジンブレーキなしですが、フェルスタッペンはしっかり手前からシフトダウンしており、どっちがベテランだかわからないふたりです(笑)。

 直線はレッドブルの方がメルセデスよりほんの少し速いみたいですね。ですが、それ以上に速いのがマクラーレンです。マクラーレンはドラッグが少ないけど、同時にダウンフォースも少ないようですね。だから高速コーナーは遅く、全部ストレートで稼いでいるイメージです。決勝で他車が抜きあぐねているのは、それが理由だと思われます。

 フェラーリはタイヤに厳しいコースが苦手なのかもしれませんね。フランスでは厳しかったけど、レッドブルリンク2戦は最終的に上に来た。コースを選んでしまうマシンという感じです。

 ドライバーでは、ノリスとラッセルが目立っていましたね。ノリスとリカルドのドライビングを見ると、高速コーナーではふたりの差がはっきりと出ています。レッドブルリンクで言えば、4〜7コーナーでノリスの方が速いです。リカルドの方がブレーキを早く戻している割には早くアクセルを踏めていません。

 リカルドは今までダウンフォースが多いクルマをドライブすることが多かった分、今のクルマに慣れていないのかもしれません。

 改めてノリスはすごいなと思うのですが、同じようにラッセルもすごいです。予選でミディアムでQ3進出は本当にビックリさせられました。このふたりはクルマのポテンシャル以上のリザルトを残していると思います。それは同時にフェルスタッペンにも言え、最近はアロンソもこれに肉薄している印象です。

 アロンソは、予選でベッテルに引っかかっていなければQ3に進出していたでしょう。あれはベッテルが悪いというよりは、チームが連絡してあげなければいけません。

 さて、シリーズの流れはすっかりレッドブルにあるようです。そこでカギとなるのがセカンドドライバーの働きですが、オーストリアGPでのルクレールに対しての2度にわたる押し出しは、ちょっとひどいかなと。

 ペレスはノリスから同じような妨害を受けていますが、そこまでひどくはない。これらすべてに5秒ずつのペナルティが出ていますが、個人的にはノリスはなしで、ペレスの2回はもっと重くても良いかと思いました。せっかく1-2が獲れたはずなのにとてももったいないですね。

 今回で流れを変えないとメルセデスはまずいと思っていましたが、変わりませんでした。少なくとも次のホームコース、イギリスで変えないと、今季は厳しいのではないかと見ています。

 メルセデスはクルマのコンセプトから変えていく必要があると思っています。ここが正念場です。最近はハミルトンのコメントでも、クルマに対して批判的な内容が増えてきました。「もっとアップデートしないと勝てない」とか。今まで他のドライバーは、ずっとそう思っていたんだよと、彼に言いたいです(笑)。

(Tsugio Matsuda)