2022.10.14
【F速プレミアム】
優秀なドライバーでもF1に昇格できないスーパーライセンスの難題/スペイン人ライターのF1コラム
(c)INDYCAR
アルピーヌへの移籍が発表されたピエール・ガスリー。代わりにアルファタウリへのシート獲得が噂されていたインディカードライバーのコルトン・ハータはスーパーライセンスを獲得できずシートを逃すことになってしまった。F1に値する有望なドライバーと目されていたハータの障害となったものは何だったのだろうか。スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアがスーパーライセンスの問題点を語る。
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F1は1年のなかでもかなりにぎやかな時期を乗り切ったのではないだろうか?前回も触れたように、今年の「シリーシーズン」は非常に活発であり、多くのドライバーが2023年に空いているあらゆるシートを選んできた。アルピーヌはふたつ目のシートにピエール・ガスリーを迎え入れる決断をし、アルファタウリはガスリーの後任としてニック・デ・フリースと契約した。
(c)XPB Images
今年の夏のある時点では、多くの人たちがこれらシートのうち2シートを誰が獲得するか簡単に推測できると考えていた。ガスリーはレッドブルから自由になってアルピーヌに行き、インディカードライバーのコルトン・ハータがアルファタウリでガスリーのシートを獲得する。基本的にレッドブルは満足のいく後任が見つからない限りガスリーの放出を望んでいなかったが、彼らは後任を見つけたかに思えた。そして多くの人々は、ハータがF1に参戦できるようにスーパーライセンス規則に特例が設けられるという兆候を見ていたのだ。
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そうした人々はこの部分で間違いを冒した。そう、F1とリバティ・メディアは確かにアメリカ市場の成長に関心がある。彼ら次第ということであれば、ハータは2023年F1でレースをすることを許可されていたことだろう。しかし実際にスーパーライセンス規則を扱っているFIAがここで障害となった。この規則は選手権へのアクセスを制限するもので、商業的側面とは関係がない。言い換えれば、規制団体(FIA)は商業権保有者(リバティ・メディア)に屈する必要はないのだ(そして実際彼らはそうしなかった)。
現在のレギュレーションの詳細は非常にシンプルだ。要約すると、F1でレースをするのに必要なスーパーライセンス資格を得るためには、いかなるドライバーも3年間のうちにスーパーライセンスポイントを40ポイント獲得する必要がある。FIAが直接サポートしているF2やF3などのシリーズでは多くのポイントを得ることができるので、本質的にはF1入りするのに『最良の方法』となっている。その選択に同意するかに関わらず、ピラミッドになんらかの秩序を与えるためにあるひとつの道を理想とすることは、理にかなっている。
しかしこれには他のシリーズにとってはマイナスとなる望ましくない効果がある。たとえばF2でのランキング5位は、インディカーでの3位とスーパーフォーミュラでの2位と等しい。理論上はこれは公平に見える。F2のレベルは極めて高く、通常はF1ドライバー候補でいっぱいのチャンピオンシップだ。『成功していない』ドライバーでもしばしば他の場所で非常によいシートを見つけ、才能を証明している。
しかしながら、F2が昇格のために戦うワンメイクのチャンピオンシップであるのに対して、インディカーとスーパーフォーミュラはプロのシリーズだ。つまり政治的かつ経済的利益が作用しており、同様にエンジンにとって重要な技術的側面も持っているということだ。素晴らしいドライバーとチームがいたとしても、単にエンジンに十分な競争力がないという理由で結果が悪ければ、ドライバーは絶対にF1に到達できない。
このことについてはずっと話していられるだろう。この件についての真実は、現在のシステムには欠陥があるということだ。優れたドライバーたちは、F2ではなくインディカーでレースをしたためにF1の外に取り残されてしまう。
たとえ彼らのライバルたちが積極的に「このドライバーはF1でも十分やっていける」と言ってもだ。だがそれでも、これは以前よりもよいシステムであることが分かっている。以前はGP2で15位のドライバーがチームにお金を払い、300kmのテストをするだけでスーパーライセンスを獲得できたのだ。
F1グリッドに24台や26台のマシンがいるのなら、それでも問題にはならないかもしれない。20台しかない現在の状況では、最高のレースだけが行われるようにすることは理に適っている。しかし、これはウイリアムズのニコラス・ラティフィがハータよりも優れているということを意味するのだろうか?おそらくそうではないが、規則はどこかに設定されなければならない。そして規則がひとつの特例のために曲げられたり無視されるというのなら、他のすべての有望なドライバーたちはどこに置き去りにされるのか?
だがハータに話を戻すと、ここに次のような事実がある。2019年から2021年シーズンの間、ハータは必要な40ポイントのうち32ポイントのスーパーライセンスポイントを獲得した。
つまり、彼が合計8回のフリー走行セッションをこなしていたら、あと8ポイントを獲得できたことになる(レギュレーションはドライバーが100kmを走行するフリー走行セッションを10回行い、10ポイントまで獲得することを許可している)だがこれが可能だったのは2021年から2022年のことだ。
問題は今シーズンに入ると、2020年から2022年の過去3年間だけをカウントすることになることだ。この期間のハータのスーパーライセンスポイントは29ポイントだ。フリー走行のアイデアを使うにはあまりに隔たりがあるので(どのみちカレンダーには十分なグランプリが残っていない)、彼には見込みがないのだ。
また、彼の状況を複雑にしていることがある。スーパーライセンスポイントの問題はさておき、彼は史上最年少でのインディカー優勝者なのだ。ハータは7勝を上げており、力強い才能を持つ(多少荒削りのところはあっても)、シリーズで最速ドライバーのひとりだ。このようなドライバーがF1でレースをできないことは筋の通ったことだろうか?おそらくそうではないだろう。
しかし私が知っているのは、FIAが例外を作らないという正しい決定を下したということだ。ハータがF1に値しないからではなく(彼には十分な力があるだろう)、規則に従う必要があるからだ。そうでなければ、誰もが独自の例外を作り出す前例ができてしまうリスクがある。とはいえ、スーパーライセンスポイントに関する規則は見直す必要があることもまた事実だ。
そしてこれに関連することだが、岩佐歩夢はF2シーズンをトップ4位内で終えれば、スーパーライセンス資格を得るのに十分なスーパーライセンスポイントを獲得することになる。岩佐はハータよりも準備ができているだろうか、角田裕毅に加え2人目の日本人がF1シートを獲得できればクールではないだろうか。今のところは、夢をみることしかできないが!
(c)XPB Images
(Alex Garcia Translation: AKARAG)
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