2023.07.07

【F速プレミアム】
アルピーヌの株を取得しF1に進出するハリウッド/スペイン人ライターのF1コラム


(c)XPB Images
 リバティ・メディアがF1オーナーになって以降、マルチメディア展開が加速している。そんななか、ハリウッドの投資家グループがアルピーヌF1の株式を取得した。今後どのような展開が待っているだろうか。スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアがF1トピックについて語る

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 数カ月前に私が触れたように、F1においてアメリカが徐々に存在感を増してきていることは否定できない。もちろんリバティ・メディアがF1のオーナーになってからのことだが、Netflixの『Drive to Survive(邦題:栄光のグランプリ)』シリーズの成功によって信じられないほど多くの新しいファンが増えたし、マイアミとラスベガスGPの追加も保証された。テレビのドキュメンタリーシリーズが、F1のように確立されたブランドにこれほどの変化をもたらすことができると考えるのは面白い。したがって、MotoGPがこの方式をコピーしようとしたのも不思議ではない。そしてWRCがNetflixからアプローチを受けていた事実も私は知っている(ただし、少なくとも当面は、オファーは拒否されたようだが)。

 F1においてアメリカの存在感が増大していることのもうひとつの結果として、ハリウッドが登場するようになった。ルイス・ハミルトンがプロデューサーを務め、ジョセフ・コシンスキー監督、ブラッド・ピット主演による映画制作が現在進んでいる。(シルバーストンでのイギリスGPの現場で撮影が行われることが予想されている)しかし映画を超えたところで、ハリウッドはF1に入る別の道を見つけた。6月末、オトロ・キャピタル、レッドバード・キャピタルパートナーズ、マキシマム・エフォート・インベストメンツは共同事業として、アルピーヌF1チームの株式の24%を取得したと発表した。
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 表面的には、これはF1参入を目論む企業集団による一歩に見えるかもしれない。しかしながら、このグループにはハリウッド業界での俳優としてよく知られているライアン・レイノルズとロブ・マケルヘニーが関与している。彼らがアルピーヌを選択したことは不思議に思えるが、F1参入が決して簡単ではない(アンドレッティ、パンテーラ、フォーミュラ・イコール、ハイテックなど名を知られた候補でさえ)ことと、他のチームを買収できないことを考えれば、理にかなった動きだ。言い換えれば、アルピーヌは現在多額の投資を行うことができるなかでも最高の選択肢だということだ。

 しかしこれが何を意味するのか完全に理解するためには、このプロジェクトを別の角度から見る必要がある。レクサムAFCというサッカーチームについて聞いたことはあるだろうか?聞いたことがあるのなら驚きだが、実はこれは世界で3番目に古いプロサッカークラブなのだ!1864年に設立されたウェールズのこのクラブは、プレミアリーグでは決して強豪ではなかった。実際には、昨年はイングランド5部で優勝し、2023年-2024年シーズンは4部でプレーすることになる。なぜこのことを私が説明するのか?

 それは2021年にレイノルズとマケルヘニーがレクサムAFCを買収したからだ。それによってチームはビデオゲームFIFAにフィーチャーされたり、成功を収めたドキュメンタリーシリーズ『ようこそレクサムへ』に出演するなど、あらゆる種類のマーケティングの機会につながることができた。

 さて、私はまったく同じプロジェクトをアルピーヌF1チームで再現するアイデアがあると言っているわけではない。何しろこれは、F4チームを買収してF1のトップに導くのに相当するような話なのだ。それにはずっと長い時間がかかる。彼らにしてみれば、長すぎて意味をなさないだろう。しかしアルピーヌは興味深い立場を示している。イギリスの田舎に拠点を置くこのF1チームには、F1における豊かな歴史があるが、最近の状況は波乱万丈だ。彼らに優勝する十分なポテンシャルがあることは明らかだ。おそらくチームが必要としているのはスポンサーからの追加のサポートだが、それは通常マーケティングの機会を通じて得ることができるものだ。

 2億ユーロ(約315億円)の契約がチームにプラスの影響を与えることは容易にわかる。彼らの施設はあまりにも時代遅れのものなので、レッドブル、メルセデス、フェラーリと戦えるようになりたければ、それを変える必要がある。例としては、まさにアストンマーティンが行ったことだ。彼らは新しい社屋を建設した。新たな技術力はアルピーヌが勝つために必要なものかもしれないが、資金が流入し続ければ、勝てる可能性は高くなる。それに加えて、アルピーヌがF1の昔からのファンと新しいファンの間で人気のあるブランドになれば、プロセスは非常に容易になるだろう。

 もちろんこれはすべて机上の空論だが、モータースポーツというものが単純であることはめったにないことを我々は知っている。まず、レクサムAFCとは異なり、レイノルズとマケルヘニーはアルピーヌF1チームを完全に買収したわけではない。そのため、彼らが望むとおりにチームを運営する自由度はかなり低いということだ。しかし、彼らがチームを宣伝するために、特にアメリカでその人気と専門知識をうまく活用しなかったら、私は驚くだろう。だが気になるのはアルピーヌがそのアイデンティティを維持できるかということだ。結局チームはF1が最も利益を得ることができる場所だと理論づけたため、ルノーグループのスポーツブランドを宣伝するために名前を変えたばかりなのだ。

 それでもアルピーヌは主流の自動車メーカーとは程遠い。彼らはそれほど多くのクルマを製造していない。F1には今もプレミアムブランドを引き付ける洗練されたイメージがあるとしても、チームは通常それを裏付ける数字を持っているものだ。アルピーヌは話が別で、2017年の復活以来、ラインアップにあるモデルはひとつだけだ。だが誤解しないでほしい。私はアルピーヌA110が好きだ。このクルマはある意味ではヨーロッパのGT86/GR86のようだ。コンパクトなFR車で、手ごろな価格でスポーツカーのフィーリングを提供しようとしている。しかしそれだけでは、この名前をこれほど見立つように使用する正当性が十分ではないだろう。アルピーヌがより幅広いラインアップを揃えた市販車を作るようにするか、もしくはチームが別の名前を採用するか、容易に想像できる。

 これは、アンドレッティ・オートスポートを関与させるのに理想的なプラットフォームになる可能性があると推測する向きもある。アンドレッティ-ルノーの提携のうわさがあることと、新たな投資家がアメリカ人であることからだ。この時点で判断するのは難しいことだ。しかし私は、予想だにしなかったこの新たな展開に、非常に興味をそそられている。私はいわゆる“純粋主義者”で、オールドスタイルのF1が好きなので、こうした新しいことが少々不自然に感じることがある。しかし明らかにこのスポーツでは、絶え間のないイノベーションと新たなチャンス、そして予想外に関与した人々が生涯のレースファンになることが重要だ。そしてこれは私も楽しめるものだ。

(Alex Garcia/Translation: AKARAG)

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