2023.12.18

【F速プレミアム】
記録づくしのシーズンとフェルスタッペンのチームメイトでいることの難しさ/スペイン人ライターのF1コラム


(c)Red Bull
 2023年シーズンは歴史に残る圧勝劇を飾ったレッドブル・レーシング。マシンだけでなくマックス・フェルスタッペン自身もいま絶頂期の中にいる。スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアが2023年シーズンのF1を総括する。
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 レッドブル・レーシングの2023年シーズンは、間違いなく歴史に残るものだ。今年の彼らの成功としては、マックス・フェルスタッペンの3度目のドライバーズタイトル獲得、そしてセルジオ・ペレスの2位獲得と、チームのコンストラクターズ選手権タイトル獲得が挙げられる。彼らは22戦のうち合計21戦で優勝を飾ったが、完全勝利を止めたのはシンガポールGPで優勝したフェラーリのカルロス・サインツだけだった。21回表彰台に立ったフェルスタッペン自身も、1年間でひとりのドライバーが獲得したトップ3フィニッシュの回数では史上最多を記録した。それでもペレスの表彰台登壇回数が9回なので、レッドブルはメルセデスが2016年に達成した年間33回の記録を超えることはできなかった。

 実際、メルセデスは今シーズンのレッドブルよりも多くの表彰台を獲得したシーズンが4回ある。2014年、2015年、2016年、そして2019年だ。そしてそれはより少ないレース数で達成された。しかし“チェコ”(セルジオ・ペレスの愛称)にチームが期待していたかもしれない競争力がなかったとしても、現実にこれらの記録は、レーシングチームが世界選手権、特にF1で達成した最高の記録のひとつとして記憶されるだろう。レッドブルは今ではメルセデス、フェラーリ、マクラーレンといった偉大なチームに加わることができたし、このシーズンでは、まるで自分たちだけでレースをしているかのようだった。
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(c)Red Bull
 この成功は、勝利の組み合わせにすべてのパーツが完璧に配置されたおかげだ。エイドリアン・ニューウェイと、レッドブルが意のままにできる技術チーム全体が、素晴らしいシャシーを作り上げた。2021年の支出が予算制限を超えたことに対するペナルティのために、チームは風洞使用時間を制限されたが、それでも2022年から2023年シーズンを通してとてつもない競争力を発揮し続けることができた。

 マックス・フェルスタッペンも、レーシングドライバーとして最高の一面を見せた。2017年と2018年にはクラッシュやミスを犯すことが多かったナンバー33の短気なドライバーが、今では『完璧なマシン』となって、サイボーグのようにドライビングしている。予選では速く、レースペースは信じられないほど効率的で大胆なオーバーテイクをし、防御は固い。フェルスタッペンに、ルイス・ハミルトン、フェルナンド・アロンソ、もしくはシャルル・ルクレールのようなチームメイトがいるところを夢見ないではいられないが、現実に今年セルジオ・ペレスが完璧なマシンでどれだけ苦戦したかということに目を向けると、ドライバーが違いを生んだのだということが分かる。

 アレクサンダー・アルボンは最近のインタビューで、フェルスタッペンのチームメイトでいることがどういうものか、そしてどれだけパフォーマンスを発揮するのが難しいかということについて非常に興味深い考えを披露した。彼は2019年後半から2020年末までフェルスタッペンのチームメイトだったことを指摘しておくのは重要だ。アルボンは、自身のマシンの好みはフェルスタッペンのものに似ていたのに、フェルスタッペンはドライビングの面では常に先を行ってしまうと説明した。アルボンは、フェルスタッペンはドライビング中に非常に正確に意見を伝えることができ、不安定なマシンをなだめてスピードを残らず引き出すことができたと説明した。一方のアルボンは、マシンの反応が非常に敏感だと、自身のドライビングが緊張して硬くなってしまうのを感じたという。

 世界チャンピオンの何が仲間を圧倒するのかについての、興味深い洞察だ。もちろん、F1でレッドブルのパートナーとして最後の2シーズンに突入したホンダのことを忘れることはできない。マクラーレンとの困難なスタートを切ったホンダだが、レッドブル、そして後にはトロロッソも彼らのエンジンには信頼を置いた。このエンジンは最終的に両チームを表彰台のトップに導き、ついに世界タイトルを次々と獲得させるまでになったのだ。F1で最高のエンジンがなければ、レッドブルは2021年に勝つことはできなかっただろうし、彼らがそうしたようにこの2年間で圧倒的優位に立つことはなかっただろう。そういう意味では、アストンマーティンが2026年以降にホンダのエンジンで何ができるようになるのか考えずにはいられない。そしてレッドブルは、フォードブランドではあるが、独自のパワーユニットで同等の競争力を持てるだろうか?

 当初は2023年シーズンを総括するのにすべてのチームについて話をしたかったのだが、ある意味でシーズンをまとめる唯一の方法は、実際に優位にあったレッドブルのことを話すことではないかと考えている。しかしそれでも、シーズン中に私の目を捉えたいくつかのことについて言及する機会を逃したくない。

 まずメルセデス、フェラーリ、マクラーレンだ。この3チームは困難とともにシーズンをスタートしたが、調子を取り戻して大きく競争力を高めることができた。特にマクラーレンについては誰も予想していなかったが、彼らは素晴らしい仕事をした。彼らの信じられないほどエキサイティングなドライバーペアは、2024年シーズンも驚かせてくれるだろう。

 そしてまったく異なるふたりのドライバーによる、ふたつの傑出した成果があった。一方ではアロンソが、相変わらずのハングリーさを見せていた。アロンソは8回表彰台を獲得し、最終的にランキング4位になった。アストンマーティンはまだタイトルを懸けて戦う準備はできていないかもしれないが、彼らが2024年に予想外なマシンを作ったらどうなるだろうか? そしてアロンソはいつまで続けるだろうか? 2024年は彼の最後のシーズンになると私は考えているが、おそらく彼は2025年になっても残ることができるだろう。そしてアルボンは単独で、ウイリアムズF1チームをコンストラクターズ選手権7位という驚くべき順位に導いた。彼は間違いなくふたたびトップのシートを目指して叫んでいる。2020年よりもはるかに準備が整っていることは明白だ。今は空きを見つけるのは難しいが、彼は確実に勝ち取るだろう。

(c)XPB Images
(c)XPB Images

 そして最後に角田裕毅だ。私はこう言わなければならない。ワオ!アルファタウリのマシンはあまり競争力がなかったが、角田はチャンピオンシップで貴重なポイントを獲得することができた。最終的にチームが獲得した25ポイントのうち、17ポイントが角田によるものだ。彼は成熟した走りをし、シーズン中の特有のミスを除けば、F1デビュー以来コース内外で素晴らしい成長を示した。彼が2020年のアルファタウリのようなマシンをドライブしているのを見たら、私は魅了されるだろう。ところで、アブダビGPで角田が5周をリードしたということは、彼が今やF1レースを最も長くリードした日本人ドライバーになったということであると知っていただろうか?それ以前は、2004年にニュルブルクリンクで開催されたヨーロッパGPで2周をリードした佐藤琢磨だった。歴史が作られたのだ!

(c)AlphaTauri

 2024年に向けて、仕事はすでに始められている。私は次のシーズンがどうなるのか待ちきれない思いだ。ところで角田裕毅のチームの名前はどうなるのだろうか?“アルファタウリ”のチーム名がF1から消えることは知っているが、新たなチーム名はまだ確認されていない。なお、レッドブルの飛行機は“フライング・ブルズ”と呼ばれている。だからレッドブルの2番目のレーシングチーム名のアイデアは……知りたいものだ!

(Alex Garcia/Translation: AKARAG)

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