予選に向けた変更で「マシンは明らかによくなった」一方で別の問題が発生。グリップ皆無の難局【角田裕毅F1第21戦展望】
2025年F1第21戦サンパウロGPの金曜日のスプリント予選で18番手に終わった角田裕毅(レッドブル)。レッドブルはピットレーンスタートを覚悟のうえで、パルクフェルメ・ルールを破った。
当初、この一報を聞いたときは、旧型に変更したフロントウイングを新型に変えるためかと思ったが、国際自動車連盟(FIA)からの報告によると、変更したのはリヤウイングで、金曜日と異なる仕様に変更し、かつそれに合わせてセットアップも変更したという。このリヤウイングの変更は、金曜日に装着していたリヤウイングに損傷があったわけではなく、異なる仕様とセットアップをトライするためだった。
「リヤウイングを変えたのは、マシン全体のパフォーマンスを改善させるのに違うアプローチを試すためです。だから、スプリントでの主な仕事はデータを取ることです」
リヤウイング変更の理由を、角田はそう説明した。
前夜からの雨により路面が完全に乾き切っていないダンプ・コンディションで行われたスプリントでは、その路面に足をすくわれてクラッシュするマシンが続出し、赤旗が出る波乱の展開となった。そんななかで、角田がリスクを冒してオーバーテイクを試みるようなことをしなかったのは、そのためだった。
「このセットアップで走ってみて、ポジティブな点とネガティブな点の両方が見えました。改善できる余地はまだたくさんあると思います」
チームからの公式な発表はないが、スプリントで角田が装着したリヤウイングは、金曜日に装着していたものよりもダウンフォースをつけた仕様だった。ポジティブな点は、金曜日よりもグリップが増したことだったと考えられる。一方でリヤウイングを立てた分、ストレートスピードが上がらないというネガティブな点が出てしまった。ハースの2台が相次いで抜いていったリアム・ローソン(レーシング・ブルズ)に、セクター2で追いつきながら、DRSを使用してもオーバーテイクできずに14位でチェッカーフラッグを受けたのは、そのためだったと思われる。


スプリント開始と同時にパルクフェルメ・ルールは解除されるので、予選までにセットアップの変更ができる。そこで、チームは予選に向けて、角田のリヤウイングを金曜日で使用した仕様に戻した。

リヤウイングの変更に合わせて、リヤサスペンションのセッティングをどうしたのかはわからない。だが、チームメイトのマックス・フェルスタッペンのセッティングについて、ローラン・メキース代表が「スプリントレース以降に大幅に変更した」と言っていることから、角田に試したリヤサスペンションのセッティングを移植した可能性が考えられる。つまり、角田はリヤウイングだけを金曜日の仕様に戻し(フェルスタッペンと同じ仕様)、リヤサスペンションのセッティングはスプリントで試したものを維持した可能性がある。
ところがその組み合わせで走るのは、フェルスタッペンだけでなく、角田にとっても今週末初めて。果たして、予選ではその組み合わせは機能しなかった。
Q1に出場したドライバーのなかで最下位となった角田が「ゼロ・グリップ」と言い、Q1で16番手に終わったフェルスタッペンも「素晴らしいほど、まったくグリップがなかったよ。ゼロだ」と異口同音に訴えたことを考えると、レッドブルの2台は、サンパウロGPで何か大きな問題を抱えていたとしか考えられない。
角田は、セットアップ変更だけが問題だったとは考えていないと言う。
「セッティングのせいにしたくはありません。セッティングは問題なかったと思います。なぜなら、タイヤを機能させることができたからです。少なくとも僕たちのガレージ側では、スプリントから変更したパーツに関しては、かなりの進歩を遂げることができました。マシンは明らかによくなったと感じています。でも、別の問題が発生しました。それが何かは言えませんが、かなり深刻な問題です」
それはいったいなんなのか。2台が後方に沈んだレッドブルは、パワーユニット交換も含め、その原因を探るべく、日曜日に向けて、ピットレーンスタートを覚悟して、何かを変えてくる可能性が考えられる。
