後半戦を見据えたターボとMGU-H交換。エンジンとの組み合わせでやりくりに問題なし【トップチーム密着:レッドブル編】
2025年F1第7戦エミリア・ロマーニャGPで優勝して、再びドライバーズチャンピオンシップ争いに加わったレッドブルのマックス・フェルスタッペンが、第8戦モナコGPの金曜日に新しいパワーユニットのコンポーネントを投入した。8戦目にして、早くも3基目の投入に、後半戦でのフェルスタッペンのグリッドペナルティは不可避かと思いきや、ホンダ・レーシング(HRC)の折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー)はそれを否定した。
ただ、折原GMはイモラでの予選でクラッシュした角田裕毅(レッドブル)のパワーユニットをレースに向けて新品に交換した際に、その理由を次のようにも語っていた。
「モナコGPは市街地コースなので、クラッシュする確率が高い。そのため、イモラで新しいものを入れて、プールに入れておきたかったんです」
新品のエンジンは使用済みのエンジンに比べて馬力がある。そのエンジンを低速コースのモナコで使用するより、モナコ以外のパワーを必要とするサーキットで使用したほうがいい。イモラはパワーサーキットのひとつなので、クラッシュした角田のパワーユニットをレースに向けて新品にするにはちょうどよかった。
それでは、なぜHRCはモナコでフェルスタッペンに新品のパワーユニットを投入したのか。それはモナコで新品にしたコンポーネントと関係しているようだ。HRCが投入したのはエンジン(ICE)ではなく、ターボとMGU-Hだった。
折原GMはこう説明する。
「理想的にはモナコでは新しいコンポーネントを使いたくないですが、データ的にHRC Sakuraで確認したいことが出てきました。それ(ターボとMGU-H)を無理にモナコGPに戻して入れるよりも、ここで新しいのを入れても、あとで新品に載せ替えれば、新品として使えます。たとえば、4基目のICEと組み合わせれば、年間4基というレギュレーションにほとんど影響なくシーズンを乗り切ることができので、新品を入れることにしました。その間にHRC Sakuraでの点検も時間をかけて行えます」
折原GMによれば、各コンポーネントの寿命はすべて同じというわけではなく、エンジンのほうがターボとMGU-Hよりも短い。そのため、モナコGPで使用したターボとMGU-Hを、モナコGPの後に新品のエンジンに搭載しても、ほぼ新品としてシーズンを通して使用できるというわけだ。
パワーユニットマニュファクチャラーにとって、年間4基というレギュレーションを守るうえで重要なことはエンジンをどこで入れるかで、それに合わせてターボとMGU-H、そしてMGU-Kをどこでどう使用するかを決めているにすぎないのである。
したがって、フェルスタッペンがモナコGPで3基目のターボとMGU-Hを使用しても、年間4基というスケジュールに変わりはないと折原GMは語った。あとは、現在HRC Sakuraで確認している1基目か2基目のターボとMGU-Hが問題なく、今後も使えるかどうかだろう。
モナコGPでの3基目の投入は、チャンピオンシップ争いにおいて厳しい状況に陥ったというよりも、むしろチャンピオンシップ争いが大詰めを迎える後半戦へ向けて、布石を打ったと考えるべきかもしれない。