F1イギリスGP分析(1)ハミルトンの記録的勝利を支えたメルセデスW15のアップデート
2024年F1第12戦イギリスGPで、メルセデスのルイス・ハミルトンが2021年サウジアラビアGP以来の勝利を挙げた。オーストリアとの2連勝を達成したメルセデスW15の改善点について、F1i.comの技術分野担当ニコラス・カルペンティエルが分析し、マシン細部の画像も紹介する(全2回)。
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非常に困難なコンディションだったイギリスGPで、メルセデスのルイス・ハミルトンが2年半ぶりの優勝を果たした。ハミルトン自身の冷静さ、そしてW15が競争力を発揮したことが、大きな勝因だった。

39歳6カ月で104回目の優勝を果たしたハミルトンは、21世紀以降では最年長のグランプリ勝者となった(それまではキミ・ライコネンの39歳4日)。そしてシルバーストンでの9回目の優勝は、同一サーキットでの最多優勝記録を更新するものだった。
この週末のハミルトンは、全盛期が蘇ってきたかのような落ち着きとスピードを見せた。ポールシッターのジョージ・ラッセルをハーフウエット路面で仕留め、マクラーレン勢が近づいてきて追い抜いても平静を保ち、その後マクラーレンの2つの戦略上の失敗を利用して首位を快走した。終盤には、ペースに優れるハードタイヤで猛追するレッドブルのマックス・フェルスタッペンの突撃を跳ね返した。
ともに幾つかのアップデートをイギリスGPに投入したマクラーレンとレッドブルだったが、ハミルトンとは対照的に、ランド・ノリスとフェルスタッペンはどちらも週末にミスを犯した。ノリスは土曜日の予選Q3でミスを犯し、最後のアタックを放棄。ラッセルにポールポジションを奪われた。
一方フェルスタッペンは、予選Q1でコースオフ。グラベルに進入した際にフロアに大きなダメージを負ってしまう。ダウンフォースを約100ポイント(1周あたり約1秒)を失うほどのダメージで、何とか応急修理を施したものの、最終的に4番グリッドが精一杯だった。

さらにメルセデスはここ数戦のレースで、大幅な進化を遂げた。特にモナコGP以降は、非常に空力効率のいい新フロントウイングが、大きな武器となった。さらにカナダGPでは、再設計されたサスペンションアーム、スペインGPでは軽量化されたフロア(形状は全く同じだが少なくとも数グラム軽い)、そしてオーストリアGPで新しいビームウイングとダンパー(化粧パネルで隠されている) が組み込まれている(赤矢印参照)。ちなみにこの部分の改良は、公式コメントではあくまで冷却の改善が目的とされている。
しかし実際にはこのダンパーには、左右の前輪を連動(同時に沈み込み、または上昇)させることで、ブレーキ時や加速時のクルマのダイブを制御し、圧力中心の移動を極力少なくする効果がある。その結果、新しいフロントウイングで最適化された空気の流れをより効果的に活用することで、より安定した挙動が期待できるようになった。
ハミルトンとラッセルはオーストリアGP以来、クルマのバランスに非常に満足している。これが過去2レースにわたるブラックリーの進歩を説明する秘密のひとつと言えそうだ。
(第2回に続く)
この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています