2025.03.08
2024年のF1ラスベガスGPはチケット売り上げが期待を下回る。来場者データを活用し、今年の開催に向け戦略を修正
(c)XPB Images
華やかできらびやかなF1ラスベガスGPは、視覚的には壮観だったものの、2024年の2回目の開催では期待されたほどの経済的利益をもたらさなかった。むしろ、昨年11月のグランプリは厳しい警鐘となり、商業権利保有者のリバティ・メディアが慌てて再調整を迫られるほどの数字を記録した。
F1のアメリカでの優位性を確固たるものにすることを目的とした、ストリップ地区のハイリスクなショーは期待外れに終わり、現在シリーズは2025年に向けてチケット販売とホスピタリティ戦略を刷新し、強化を行っている。
この冷酷な真実は、先週行われたアナリストとのF1第4四半期および通期の電話会議で、リバティ・メディアの最高会計責任者ブライアン・ウェンドリングが明らかにした。
ウェンドリングは「ラスベガスGPは、主にチケットの売り上げで期待を下回った」と認めたが、その言葉はF1幹部にとっては衝撃的だった。パドッククラブの収益が上昇し、貨物取引により財源が膨らんだ輝かしい2024年シーズンだったにもかかわらず、ラスベガスはつまずいたのだ。
「これは、ラスベガスGPでの特定のホスピタリティサービスが低調だったことによって相殺された」とウェンドリングは述べ、ストリップ地区の輝きのなかで高級スイートルームが半分空いている状況を描写した。
その副次的影響は、ブラックジャックのまずい手札よりも深く突き刺さるものだった。F1の10チームへの支払額は2023年の12億1500万ドル(約1810億1500万円)から、昨年は12億6600万ドル(約1886億2800万円)に増加したが、営業利益の一部としては、62.6%から61.5%に減少した。
「チームの支払いにもとづいた計算ミスの大部分は、ラスベガスに関連したものだった」
11番目のチームとしてキャデラックの参入が迫っていること、そしてそのためにおそらく分配資金が希薄化することに、各チームはすでにいらだちを感じていたが、ラスベガスの不振によりパドックでは不満が巻き起こった。
■新CEOのチャンによる本格的な取り組み
2025年1月に就任したリバティ・メディアの新CEOデレック・チャンは、ラスベガスの財政不振に対処するために迅速に行動したことを強調した。
チャンは「ベガスの財政状況は、収益およびOIBDA(Operating Income Before Depreciation and Amortization:償却前営業利益)に関して社内の期待を下回った」と認めたが、彼は諦めるつもりはない。
「しかしながらチームは、F1のレースにおける経済的成功と、ラスベガスのコミュニティのための継続的な成長およびプラスの影響をサポートし、2025年に利益をもたらすための変更を迅速に実施した」
チャンは、何が売れたのか、誰が来たのか、どこで現金が消えたのかを分析した2年分のデータを持っている。彼の解決策とは何か? それは全面的な刷新だ。
「我々はこのデータを活用してチケット商品と価格戦略をさらに修正しており、同様に重要なこととして、コスト構造を積極的に管理している」
古い戦略は廃止された。2024年の失敗から学んだ教訓として、地元の“親密な”雰囲気を醸成するために、チケット販売は社内で行うことになった。現在はロンドンオフィスがショーを運営しており、ラスベガスのオペレーションを統合して効率を最大限に高めている。
「この変更は、現在ロンドンにある商業、金融などさまざまな分野において強力な組織を活用するものだ」
「同時に、我々は地元ラスベガスのチームの一部を強化している」
■失敗から未来へ
F1ファンが“シン・シティ”を無視するのは賢明ではないだろう。チャンは、このグランプリはアメリカにおけるF1の最高峰であり続けると断言している。
「デンバーとロンドンのチームが、ここ数年で短期間でこのようなイベントを開催できたことは、非常に印象的だ」
アメリカで急成長中のファン層、メディアの話題性、スポンサーの資金などのハロー効果は、依然として魅力的だ。
「我々はF1のエコシステム全体への利益について、長きにわたって話し合ってきた」
「ここにいる我々全員が、ここに来た当初の財務指標のいくつかに失望したと思う。しかし私の考えでは、それらはすべて耐えうるものであり、修復可能だ」
ストリップ・サーキットを確保するために、3億ドル(約447億2500万円)を投じた土地買収の後、F1の賭けは3年間の軽い試みではなく、2032年まで確保された。昨年初めて導入された自由席入場料では、期待したほど席が埋まらなかったが、チャンは方式を微調整している。
2025年のグランプリを刷新することで、F1はラスベガスを財政上の教訓の物語から勝利の物語へと変えることを目指している。シャンパンが流れ続け、チームが笑顔でいられるような物語だ。
(autosport web/Translation : AKARAG)
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