「プランCでいけば十分勝負できる」ノリスとは異なる戦略で巻き返しを狙うピアストリ【F1第21戦無線レビュー(1)】
2025年F1第21戦サンパウロGP。スタート直後の混乱によりセーフティカーが出動し、レースは6周目から仕切り直しとなった。ターン1には3台が並んで進入し、その結果2番手に浮上したオスカー・ピアストリ(マクラーレン)だったが、10秒ペナルティという大きな痛手を被ることになった。サンパウロGP前半を無線とともに振り返る。
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前日の予選でまさかのQ1落ちを喫したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、パワーユニット(PU)のエレメント交換、セットアップの変更により、ピットレーンからのスタートを選択した。
フェルスタッペン:一応情報だけど、こちらのエンジンの方が振動は少ないね。

ポールシッターのランド・ノリス(マクラーレン)がホールショットを決めるなか、後方では何台かの接触事故が起きていた。
1周目
ヨルン・ベッカー:ガビ、大丈夫か。
ガブリエル・ボルトレート:ストロールに押し出された。
ベッカー:ダメージは? フロントウィングがなくなっているようだね。
ボルトレート:僕がいないみたいに、かぶせてきたんだ。
カルロス・サインツ:右前にダメージだ。
ガエタン・イエゴ:了解。
ルイス・ハミルトン:パンクチャーだ。ダメージを受けた。
リカルド・アダミ:わかった。
一方オリバー・ベアマン(ハース)は、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)をかわして8番手に上がった。
ロナン・オヘア(→ベアマン):ナイスジョブだ。必要ならブレーキバランスを見直そう。

フェルスタッペン:これは確実にセーフティカーだね。
ボルトレートのクラッシュで、セーフティカー(SC)が導入された。
ピエール・アムラン:ステイアウトする。
アイザック・ハジャー:どうしてピットインしないんだ?
アムラン:ターン10と14のストレート上に破片が落ちている。
アジャ:わかっている。で、どうなの?
アムラン:順位を大幅に落としてもいいのか? 今は、いい位置につけている。
アジャ:訊いただけだよ。そんなに突っかかるなって。
アムラン:わかった。すまない。タイヤについては、我々に任せてくれ。

ハミルトンはSC中に緊急ピットイン。しかし車体のダメージを直し切れなかった。
5周目
ハミルトン:フロアは大丈夫?
アダミ:ダメージを受けたままだ。
ハミルトン:リヤのダウンフォースが全然ない。
レース再開直後のターン1では、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)、アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、シャルル・ルクレール(フェラーリ)が3ワイドで進入し、イン側のピアストリがブレーキをロックさせ、真ん中のアントネッリに接触し、その反動でアウト側のルクレールにぶつかって行った。
6周目
ルクレール:左フロントサスが壊れた。もう止まる。
ブライアン・ボッツィ:マシンを止めろ。
ピアストリ:スペースを残してくれなかった。
スタラード:了解。今のところマシンは大丈夫そうだ。
ピアストリ:完全に白線の上を走らされたよ。(アントネッリも)ルクレールに挟まれていたのかもしれないけど。とにかく僕は、まったく行き場がなかった。
スタラード:同感だ。リプレイ映像は、まさにそんな感じだったよ。
アントネッリ:クルマは大丈夫?
ボニントン:OKだ。もし変な感触があれば知らせてくれ。
アントネッリ:(2台が)鞭で打つみたいにぶつかってきたんだ。
ボニントン:わかった。映像を見直している。
最終的にピアストリに非があるとして、10秒ペナルティが下った。

2台を抜いていたフェルスタッペンが、8周目にピットイン。ハードタイヤからミディアムタイヤに交換した。
ジャンピエロ・ランビアーゼ(→フェルスタッペン):右前にパンクがあったと思ったから、ピットに入れたんだ。
9周目にレース再開。6番手のジョージ・ラッセル(メルセデス)は、直後の1、2コーナーでリアム・ローソン(レーシングブルズ)を抜いて行った。
ラッセル:次のクルマは?
マーカス・ダドリー:1秒5前だ。
12周目にはハジャーもかわし、4番手に上がった。
ダドリー(→ラッセルに):ナイスワークだ。プランBで行くぞ。
この時点ではタイヤのタレも大きくなく、1回ストップ戦略で行くつもりだったようだ。

後方ではペースの上がらないハミルトンを、フェルスタッペンが難なく抜き、14番手に上がっていた。
ランビアーゼ(→フェルスタッペンに):ミディアムのコラピントのペースは(1分)15秒4。先頭集団は(1分)14秒3で走っている。
いうまでもなくフェルスタッペン陣営は、上位入賞しか考えていない。
14周目
ハミルトン:このままだとクラッシュする。精一杯やっているけど、クルマはめちゃくちゃ不安定だ。
アダミ:ダメージは高速域で、より大きい影響がある。
ハミルトンは直後にピットイン。そのままリタイアかと思われたが、タイヤを交換してレースに復帰した。

17周目、ソフトスタートのベアマンが早めのタイヤ交換に向かった。
オヘア(→ベアマン):ピットインで、ハジャーを抜くぞ。
ハジャーも18周目にピットインしたが、ベアマンが先行。アンダーカットに成功した。
ハジャー:どうして僕たちが後ろにならなきゃいけないんだ!?
首位を独走するノリス。スタートタイヤのミディアムは、まだ大丈夫そうだ。
20周目
ウィル・ジョゼフ(→ノリス):こちらの意見としてはプランBかな。プランDでもいいかもしれない。
21周目
スタラード(→ピアストリ):10秒ペナルティを受けた。でもペースはいいから、プランCで行けば十分勝負できる。
この時点でマクラーレンはワン・ツー体制だったが、ピアストリは10秒ペナルティを消化しなければならない。担当エンジニアにどう返事したのか、ノリス、ピアストリともに公表されなかったが、1回ストップを視野に入れつつ、タイヤの状態に応じて臨機応変に対応していくようだった。

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F1第21戦無線レビュー(2)に続く