2025.11.13

【F1第21戦ベスト5ドライバー】完璧な週末で王座に近づいたノリス。ラッセルができないことをやってのけたアントネッリ


2025年F1第21戦サンパウロGP ドライバーズパレード
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 長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、各グランプリウイークエンドのドライバーたちの戦いを詳細にチェックし、独自の評価によりベスト5のドライバーを選出する。今回は第21戦サンパウロGPの戦いを振り返った。

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■完璧な週末を過ごしたノリスが、タイトル争いで圧倒的に有利に

ランド・ノリス(マクラーレン):予選1番手/決勝1位

ランド・ノリス(マクラーレン)が優勝
2025年F1第21戦サンパウロGP ランド・ノリス(マクラーレン)が優勝

 ランド・ノリスはサンパウロで完璧な週末を過ごし、スプリントとメインレースの両方の予選でポールポジションを獲得した後、両レースを制した。オスカー・ピアストリが再び厳しい週末を過ごしたことで、ノリスは残り3レースの段階で、チャンピオンシップでのリードを24ポイントに広げた。これは、ノリスがタイトルを確保するために、もはや勝利を挙げる必要がないことを意味する。仮にピアストリが残り3つのグランプリとカタールでのスプリントレースすべてで勝利したとしても、ノリスはすべてのレースでチームメイトに次ぐ2位でフィニッシュすれば、2ポイント差でチャンピオンの座を獲得できるのである。

 したがって、ノリスは自らの運命を自分自身でコントロールできる立場にある。一方、ピアストリがタイトルを獲得する可能性を確保するには、少なくとも1回は他のドライバーが自分とチームメイトの間に割って入る必要がある。

 ブラジルでの日曜決勝において、ノリスは一度もミスを犯さず、深刻なプレッシャーを受けることもなかった。アンドレア・キミ・アントネッリがギャップを詰めた場面や、異なる戦略を取ったマックス・フェルスタッペンが一時的にレースをリードした際も、ノリスはペースを上げてトップの座を譲らないだけの余裕を持っていた。

■初のコースで今季最高のパフォーマンスを見せたアントネッリ

アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス):予選2番手/決勝2位

アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)が2位獲得
2025年F1第21戦サンパウロGP アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)が2位獲得

 本人でさえ完全には説明できない理由により、アンドレア・キミ・アントネッリのルーキーF1シーズンにおける最高のパフォーマンスが、彼が一度も走ったことのないサーキットで発揮された。いかなるミスも許されない難しいコースにおいて、19歳のアントネッリは、週末の初めから、はるかに経験豊富なジョージ・ラッセルを上回る走りを見せた。

 アントネッリはスプリントと決勝の両レースで、ノリスに対抗できた唯一の存在だった。スプリントレースの最後の5周では、MCL39のソフトタイヤが劣化するなか、ノリスにプレッシャーをかけ続けた。日曜日、再びフロントロウからスタートした後、アントネッリはピアストリとルクレールとの接触の後も、幸運にも走り続けることができた。その後は一度もミスを犯すことなく、最後までノリスに緊張感を与え続けた。

 レース終盤の5周、フェルスタッペンがより新しいソフトタイヤを履き、DRSを使用しながら攻撃してきたが、アントネッリはうまく防御した。この戦いぶりは、アントネッリが極めて速いだけでなく、卓越したレースクラフトを持ち、エネルギーマネジメントなど、マシンのツールを非常に効率的に使いこなせることを示している。

 ラッセルがフェルスタッペンの攻撃を一度も防げなかったのに対し、アントネッリはフェルスタッペンを5周にわたって背後に抑え込み、メルセデスが8年前から見抜いていた彼の才能を、改めて証明してみせた。

■ピットスタートから表彰台。16位アップという新たな偉業達成のフェルスタッペン

マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選16番手/決勝3位

表彰台を祝うマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とチームメンバーたち
2025年F1第21戦サンパウロGP 表彰台を祝うマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とチームメンバーたち

 スプリントレースで4位に終わった後、マックス・フェルスタッペンはRB21のハンドリングに満足しておらず、チームとともに、予選に向けてセットアップに大幅な変更を加えることを選択した。結果は惨憺たるもので、フェルスタッペンはQ1すら通過できず、チームは振り出しに戻ることとなった。セットアップを見直し、完全に新しいパワーユニットをマシンに搭載したことで、フェルスタッペンはピットレーンスタートとなったが、最終的なリザルトは、それが正しい判断であったことを証明した。

 フェルスタッペンは、序盤に左フロントタイヤがスローパンクチャーに見舞われ、緊急ピットインをしなければならなかったが、そこから猛烈な追い上げを開始した。前方のマシンを次々と抜き去り、ミディアムタイヤでのロングスティントを54周目まで引っ張ると、一時的にレースリーダーとなった。

 背後のライバルたちはより新しいタイヤを履いていたため、フェルスタッペンがトップに立っていたにもかかわらず、レッドブルは彼をピットに呼び戻し、新品のソフトタイヤに交換。再び猛攻を仕掛けた結果、残り9周のところでラッセルを抜き去った。一方、アントネッリは攻撃に耐え抜いたため、フェルスタッペンは16ポジションを上げての3位となった。数々の記録を打ち立ててきたフェルスタッペンにとって、今回のポジションアップは新たな記録となった。

■ベアマンが後方に23秒差をつけて6位獲得

オリバー・ベアマン(ハース):予選8番手/決勝6位

オリバー・ベアマン(ハース)
2025年F1第21戦サンパウロGP オリバー・ベアマン(ハース)

 トップチーム以外のチームは7位または8位をめぐって戦うはずだったが、フェラーリ2台が戦線離脱したことで、その争いは6位をめぐるものへと変わった。そこで圧倒的な走りを見せたのは、最近ますます印象的なパフォーマンスを見せているオリバー・ベアマンだった。

 予選では、Q1で3番手、Q2で2番手だったにもかかわらず、グリッド8番手に終わった。ベアマンは、17周目に最初のピットインを行い、新品ミディアムタイヤへ交換。その後は後方のドライバーたちよりも遅い42周目までスティントを引っ張り、十分なマージンを築いて、ユーズドミディアムに履き替えた。

 最後の29周は落ち着いた走りを続け、ピアストリの14秒後方でフィニッシュした。後ろを走る1ストップのリアム・ローソンとニコ・ヒュルケンベルグが残りのフィールドを抑えて走っていたことで、ベアマンはローソンに23秒の大差をつけた。

 ルイス・ハミルトンが再び期待外れの週末を過ごすなか、ベアマンはフェラーリに対し強い印象を与え、ハミルトンの契約が来年末に更新されなかった場合、自分が後任としてふさわしいということを強くアピールした形だ。

■相性抜群のブラジルで再び輝いたガスリー

ピエール・ガスリー(アルピーヌ):予選9番手/決勝10位

ピエール・ガスリー(アルピーヌ)とアイザック・ハジャー(レーシングブルズ)
2025年F1第21戦サンパウロGP ピエール・ガスリー(アルピーヌ)とアイザック・ハジャー(レーシングブルズ)

 インテルラゴス、あるいはブラジルには、ピエール・ガスリーから最高のパフォーマンスを引き出す、何か特別なものがあるようだ。彼はここを訪れるたびに、素晴らしい走りを見せる。ガスリーがF1で初めて表彰台に上ったのはインテルラゴスであり、ハミルトンとの最終ラップの激しい戦いを制した。去年も再び表彰台に立ち、“チーム・エンストン”に久しぶりの良き日をもたらした。

 明らかにグリッド上で最も遅いマシンに乗っているにもかかわらず、ガスリーは、週末を通じて驚異的な走りを見せ、スプリントレースでもメインレースでもフランコ・コラピントを完全に脇役に追いやった。スプリント予選は思いどおりにいかず13番手スタートとなったが、見事なオープニングラップで10位に浮上。その後、ピアストリがリタイアし、ヒュルケンベルグが後退したことで、ガスリーは9番手に繰り上がった。

 1ポイントが視野に入ったガスリーは、ランス・ストロールを激しく追い上げ、残り2周で抜き去って、チームの士気を高める1ポイントを獲得した。

 メインレースの予選でガスリーはまさに圧巻の走りを見せ、Q1で2番手、Q2で6番手のタイムを記録、9番グリッドを獲得した。レースでは常に攻勢に出てポジションを上げるために懸命に戦ったが、トップスピードが足りず、終盤にはアイザック・ハジャーとヒュルケンベルグを抜くことができず、7番手ローソンの背後に到達することはなかった。それでも非常に粘り強い走りの末、ガスリーはさらに1ポイントを獲得した。



(Text : Luis Vasconcelos)

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