4度の王者ベッテル、F1界復帰の可能性を閉ざさずも“目的”が必要と語る「ただここにいるためにいたいわけではない」
4度のF1世界チャンピオンであるセバスチャン・ベッテルは、F1への復帰を計画していないが、ミッション次第ではパドックへの復帰を排除していない。2022年を最後にアストンマーティンでレースを終えたベッテルは、真の目的と意義をもたらす場合にのみ、スポーツにおける新たな役割を検討するだろうと語った。
F1第21戦サンパウロGPの週末、インテルラゴスで自身の新しい環境プロジェクト『F?REST』のプロモーションを行ったベッテルは、ふたたびF1で地位を得る意欲があるかどうか質問された。彼の答えは、トレードマークである正確さと主義にもとづくものだった。

「もし時間を有効活用できて、挑戦があり、人間的な要素があることなら、それは僕が本当に好きなことだし、やるだろうね」とベッテルは『Reuters』に語った。
しかし彼は、潜在的な見返りは地位や報酬ではないことをすぐに明らかにした。
「目的がなければいけない。僕はただお金を稼ぐためにここにいたいわけではないし、ただここにいるためにここにいたいわけでもない。それは自分ではないし、間違っているように感じる」
「もしかしたら新しい役割なのかもしれない……わからないけどね。僕はドアをノックして、『ねえ、こういうことをやるために僕を雇わないか?』と言っているわけではない」
38歳になったベッテルは、将来に対する好奇心は旺盛のようだが、良心も健在だ。
2022年末に引退して以来、ベッテルは環境保護活動へと軸足を移している。彼の『F?REST』の取り組みは、アートやコミュニティの関与を通じて生物学的多様性にスポットライトを当てることを目指している。このプロジェクトはベッテルが現在どのようにエネルギーを注いでいるかを反映している。ブラジルでのCOP30気候サミットの準備期間において、ベッテルはウイリアム王子のアースショット賞にも出席し、持続可能性の分野で高まっている彼の発言力を強めた。
しかしベッテルは、F1の根底にある矛盾を忘れてはいない。F1は移動と消費の上に成り立つ世界的なスポーツであり、今やグリーンテクノロジーと持続可能性の象徴として自らを改革しようとしているが、これは困難な課題だ。
「もしF1が前進して変化をリードすることができれば、将来も存在する場所があるだけでなく、他に向け『さあ、同じことをしよう』と明確な目的を持って示すことができるだろう」とベッテルは語った。
それは、ベッテルのレース引退後のアイデンティティの両面、つまり、依然として挑戦を愛する競争者と、その挑戦に意味を持たせたいと願う擁護者を融合させた理念だ。




ベッテルが指導者やアドバイザーとしてF1に復帰するという考えは、突飛なものではない。ベッテルの元所属チームであるレッドブルは、ヘルムート・マルコの後継者計画に彼が関わっているのではないかとの憶測の中心となっている。マルコはチームのコンサルタントを長年務めているが、現在82歳だ。現チャンピオンのマックス・フェルスタッペンも、ベッテルがミルトンキーンズに戻ってくることを歓迎すると公言している。
しかしベッテル自身は、チームでの地位を得るためにロビー活動を行う気配を見せていない。彼の口調は野心ではなくオープンさを示唆している。つまり、彼は緊迫感を信頼性に変えた人物なのだ。
ヘルメットを脱いでから2年が経ち、ベッテルは自身の決断に満足していると語った。
「いつやめるかを自分で選べたというのは、とても恵まれたことだった。僕はその決断をしたが、後悔はしていない」とベッテルは語った。
「でも、しばらくはここにいられることを願っている」
この最後の一言は、別れの言葉というよりは軽い約束のように聞こえる。ベッテルはF1に背を向けたわけではなく、その価値を測る基準を変えただけであるということだ。それが持続可能性、指導教育、あるいはまだ定義されていないリーダーシップの役割を通じてであろうと、ひとつ確かなことは、セバスチャン・ベッテルがF1パドックに戻ってくるとしたら、それは懐かしさのためではないということだ。それは目的のためとなるだろう。
