セットアップ変更で正解にたどり着いたフェルスタッペン。週末を通したRB21の仕様を比較/F1 Topic
なぜ、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)は2025年F1第21戦サンパウロGPの予選でQ1落ちし、レースで3位表彰台を獲得したのか?
これはフェルスタッペンもローラン・メキース代表も語っているように、セットアップ変更が大きく影響している。では、レッドブルはサンパウロGPの週末、どのようなセットアップ変更を行ったのか? フェルスタッペンと角田裕毅のマシンスペックを写真で確認しながら、推測していきたいと思う。なお、写真は影の部分を見やすくするために、明るく加工している。
最初に、レッドブルがサンパウロGPに持ち込んだフロアは新旧2スペックあったので、その違いをおさらいしておく。旧型は絞り込み部分が波状になっているのが特徴で、新型はスムーズにラインとなっている。またフロアエッジの小さなフィンが旧型が4枚であるのに対して、新型は前方に1枚追加されて5枚となっている。


新型フロアは前戦メキシコシティGPにおいてフェルスタッペン車にのみ投入されたが、サンパウロGPでは角田にも投入された。すでに角田はメキシコシティGPから最新のフロントウイングを使用しており、それはサンパウロGPでも同様だった。つまり、2台は空力的には同じスペックでセッションをスタートしていた。


しかし、セッションがスタートして間もなく、角田がクラッシュしたため、コースに復帰したセッション後半は角田はフロントウイングもフロアも旧型を使用していた。

フェルスタッペンはもちろん、フロントウイングもフロアも新型を搭載。これに対して、角田はフロントウイングはスペアがないためFP1同様、旧型のままだが、フロアは新型に戻されている。しかし、FP1での走行時間が少なくなったせいで、セットアップを煮詰められなかったためか、角田のスプリント予選は18番手に終わった。


チームはスプリント予選で18番手に終わった角田をピットレーンからスタートさせることを決定。チームのデータ収集のため、スプリント予選とは異なるセットアップに変更した。フェルスタッペンがバンプで跳ねることを不満にしていたため車高を上げ、グリップが足りないことからリヤサスペンションをソフト寄りにしたと思われる。なお、スプリント予選からパルクフェルメ状態となっているため、フェルスタッペンのフロントウイングとフロアはスプリント予選と同様。ピットレーンからスタートする角田は変更は可能だが、こちらもスプリント予選と同様、フロントウイングが旧型で、フロアは新型だった。

角田の空力仕様はスプリント同様、フロントウイングが旧型で、フロアは新型だったのに対して、フェルスタッペンはこの予選からフロアのみ、旧型に変更した。それら空力的な変更とともに、角田がスプリントで試した車高とソフト寄りにしたリヤサスペンションを移植することにした。しかし、この大幅な変更によってマシンの状態はさらに悪化。タイヤに熱が入らずに2台そろってQ1敗退となった。
今度はフェルスタッペンがピットレーンスタート覚悟でレースに向けて、空力仕様はそのままに、セットアップのみ大幅に変更した。これが功を奏し、フェルスタッペンはレースで復調、3位表彰台を獲得した。一方、角田はフロントウイングは旧型で、フロアは新型のままだった。
2台が同じ仕様の空力パーツで走ったのは、フリー走行1回目の序盤の数分間だけだけだった。このことから、フェルスタッペンが予選で失速した原因は、スプリントで試した角田(新型フロア)の車高とソフト寄りのサスペンションを、旧型フロアに変更するマシンに移植したことが要因だったと考えられる。
つまり、サンパウロGPでの正解の空力パッケージとセットアップは、新型のフロントウイングに旧型のフロアを装着し、車高は低めで、サスペンションも硬めだった可能性が高い。フェルスタッペンはそれで走って3位に入賞したのに対して、角田はすべてがフェルスタッペンと異なる仕様だったことがわかる。それが角田が望んだものなのか、それともチームのデータ取りのためだったのかは、不明だ。