2025.03.25

【代表のコメント裏事情】V10エンジン復活論に「時期尚早」と反対したメルセデス。一方FIAはすでに議論を開始


2025年F1第2戦中国GP クリスチャン・ホーナー代表(レッドブル)&トト・ウォルフ代表(メルセデス)
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 2025年F1第2戦中国GPでは、V10エンジンが復活するという話題に花が咲いた。事の発端は、今年2月に行われた合同発表会『F1 75 Live』のイベント後、国際自動車連盟(FIA)のモハメド・ビン・スライエム会長がSNSを通して次のようなメッセージを公開したことだ。

「持続可能な燃料で動くV10の轟音を含め、さまざまな方向性を検討する必要がある。どの方向を選ぶにせよ、我々は研究開発費のコスト管理を確実にするために、チームとメーカーを支援しなければならない」

 これにより、V10エンジン復活の噂に火がつき、様々なF1関係者がV10エンジン復活について言及し始めた。そして、この中国GPではFIAのシングルシーター部門ディレクターであるニコラス・トンバジスがFIAとして正式に議論を開始していることを認めた。

 将来的に検討される可能性があると思われてきたV10エンジン復活が、現在では積極的に推進され、なかには2026年のレギュレーションを廃止し、2年間現行のパワーユニットを継続使用し、2028年からV10が復活される話も実しやかに囁かれ始めている。

 中国GPの金曜日に開かれたFIAの記者会見に出席したレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表はこう語る。

「我々は2026年から新しいレギュレーションを始めようとしている。しかし、そのレギュレーションには限界がある。電動化と内燃機関の分断によるいくつかの欠点を大幅に補う必要がある状況に追い込まれている。だから、V10エンジン復活にロマンを求めるのは理解ができる」

「問題は、それがいつから導入されるべきかだ。というのも、2026年から新しいレギュレーションが導入されようとしているからだ。でも、ファンのひとりとして思うのは、将来どのようなタイミングで採用されるにせよ、V10エンジンが唸りを上げるというコンセプトは、スポーツにとって非常にエキサイティングなものになるだろうということだ」

クリスチャン・ホーナー代表(レッドブル)
2025年F1第2戦中国GP FIA会見 クリスチャン・ホーナー代表(レッドブル)

 ホーナーがV10エンジン復活を推すのも無理はない。レッドブルが現在搭載しているパワーユニットのうち、主要4コンポーネントはホンダ・レーシング(HRC)が開発・製造したもので、ホンダとのパートナーシップは今シーズン限りだからだ。2026年からレッドブルは自ら立ち上げたレッドブル・パワートレインズ(RBPT)が開発・製造したパワーユニットを搭載することになるが、RBPTがライバルたちと肩を並べるまでには、時間を要すると見られている。それならば、2026年レギュレーションをリセットして、一気にV10へ移行したいと考えるのも当然だろう。

レッドブル・パワートレインズのファクトリー
レッドブル・パワートレインズのファクトリー

 これに対して、メルセデスのトト・ウォルフ代表は、「さまざまな選択肢について議論するのはよいことだが、現時点では少し時期尚早だと思う。新しいエキサイティングなレギュレーションを開始するまであと1年だ。いまは2026年のレギュレーションに集中すべきだ」と過熱気味のV10復活議論に釘を刺した。

 そのメルセデスとパートナーを組むマクラーレンのザク・ブラウン(マクラーレン・レーシングCEO)もこう語っている。

「V10は間違いなくクールだ。だが、現実的になるべきだ。新しいレギュレーションまで1年を切った今になって、テーブルを引っくり返すのは得策ではない。アウディは2026年のレギュレーションのためにずっと準備してきた。アルピーヌだって、自社開発を諦めて、メルセデスからパワーユニットを調達することにした。これをいまさらやめるなんて……。どうやって事態を収拾しようとしているのか」

 新しいレギュレーションのパワーユニットを開発するために費やされた開発費は5億ドル以上とも言われている。V10復活は魅力的な選択肢だが、それをチーム間の政争の具にしては、エンジンメーカーや技術者に対してあまりに失礼な話。冷静な話し合いが行われることを望む。

ザク・ブラウン(マクラーレン・レーシングCEO)&クリスチャン・ホーナー代表(レッドブル)
2025年F1第2戦中国GP FIA会見 ザク・ブラウン(マクラーレン・レーシングCEO)&クリスチャン・ホーナー代表(レッドブル)


(Text : Masahiro Owari)

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