2024.11.19

【F速プレミアム】
フェルスタッペンの歴史に残る戦い/スペイン人ライターのF1コラム


(c)XPB Images
 残り3レースとなった2024年F1シーズン。サンパウロGPでの勝利でタイトル争いで俄然有利な状況となったマックス・フェルスタッペン(レッドブル)。上位チームが拮抗した力を持っていることもこの状況を後押ししている。スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアが終盤となったタイトル争いについて語る。
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 F1第21戦サンパウロGPの後、マックス・フェルスタッペンが2024年の世界チャンピオンになると私は絶対的に確信していると言っても許してもらえるだろう。もちろん、これは予想外のことではない。それにシーズンを通してこの文章を読んでいた人なら、ランド・ノリスとマクラーレンがチャンピオンシップで猛烈にプッシュしているにもかかわらず、フェルスタッペンは比較的余裕のある立場にいると私が常に感じていたことを覚えているだろう。しかし、それでも『スーパーマックス』にとってなんという1年だろうか!

 インテルラゴスのレースは、非常に難しい状況を最大限に活用するフェルスタッペンのスキルと、ノリスがタイトルをかけて彼に挑戦することがいかに困難であったかを浮き彫りにした。彼の戦闘的なスタイルに関する最近の論争にもかかわらず、レッドブルのエースが他のドライバーがもがくような状況でも輝くことができる大きな才能を持っていることは否定できない。実際、よく知られている彼のスムーズで正確なドライビングこそが、彼が雨天時に特に優れている理由なのだ。
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 しかしそれ以上に、ブラジルはノリスにとって常に不利な状況だったことを示していた。だからこそ私は、彼がライバルからタイトルを奪い取ることはできないといつも感じていたのだ。明らかに競争力の高いマシンはあったものの、ノリスは大きなポイント差を縮めなければならず、いかなるミスも許されなかった。彼の仕事はチャンピオンシップリーダーとの差を継続的に縮めることだった。大きく縮めるほどよかったのだ。一方でフェルスタッペンは、冷静に損失を最小限に抑えることに集中できただろう。

 この状況はチャンピオンシップリーダーにさらなるプレッシャーを与えると考える人もいたかもしれないが、皮肉なことにそれは逆だった。ノリスに負けることは予測できることだったので、主な焦点は常に彼のチャンスを最大化する方法に置かれていた。

 そして、もしフェルスタッペンがレースを4位ではなく5位で終えたとしても、それは決して大きなドラマにはならないだろう。しかし、ノリスの場合はその逆だった。ライバルよりひとつ上の順位でフィニッシュしただけではプレッシャーをかけ続けるのに十分ではないことが多かったし、皮肉なことにノリスがチャンピオンに近づけば近づくほど、彼自身にかかるプレッシャーは大きくなった。

 速いチームメイトを抑えなければならないという、内部の混乱にも対処しなければならなかったことは、確かに助けにならなかった。オスカー・ピアストリは、チャンピオンになる素質があることを示しており、シーズン全体ではノリスより優れているわけではないが、2025年のタイトル獲得の脅威とみなされるだけの十分なスピードを見せている。またフェラーリと、それほどではないがメルセデスが上位にいたことで、ノリスにとっては状況がさらに困難になった。ノリスは突然、自分の実力以上のライバルたちと戦うことになった。

 このような状況では、統計を調べると結果の予測に役立つことがよくある。もちろん、モータースポーツは単なる数字以上のものだが、F1レースは長年続いているため、過去を振り返ることで学べることが常にひとつかふたつはある。それはどういう意味か。

 たとえば、フェルスタッペンは今シーズン8勝を挙げているが、一方のランド・ノリスは3勝だ。もちろん、ライバルより優勝回数が少なくてもタイトルを獲得することは可能だが、それほど大きな数の差があると不可能だ。その上、ポイント差が大きすぎる。

 中盤戦以降、レッドブルとマクラーレンのマシン性能に大きな差があったので、ノリスのチャンスが現実的に感じられた。2024年シーズンの展開がエキサイティングだったのはまさにそのためだと主張する人たちもいるだろう。そして「記録や統計は破られるために存在している」という考え方もある。

 実際、私もそれには同意するが、ノリスがフェルスタッペンに最も近づいたのは第20戦メキシコGP後で、47ポイント差だったということを考慮する必要がある。つまり、4レースを残す時点で、ほぼ2レース分のポイントに相当する。参考までに、これはキミ・ライコネンが2007年シーズンの最後の2レースで逆転しなければならなかった割合と似ている。

 そして、今シーズンの残り3レースに向けて、まだ大きなストーリーがひとつ残っている。もちろん、各レースの展開を見るだけでなく、他のタイトル争いもある。マクラーレンは現在、フェラーリを抑えてコンストラクターズ選手権をリードしている。両者の差は36ポイントあり、まだ何が起こるか分からない。レッドブルでさえフェラーリより上位でフィニッシュする可能性は十分にあるが、それはフェラーリが最後の3レースでパフォーマンスを著しく落とした場合だ。

 昨年の結果を見ると、マクラーレンはカタールでは明らかに競争力が高かったが、ラスベガスでは苦戦した。一方、フェラーリはレッドブルと互角に戦えたが、アブダビではかなり拮抗した展開となった。したがって、残り3戦で両チームが激しい戦いを繰り広げるには完璧な条件が揃っており、一方でフェルスタッペンは自身4度目のチャンピオンシップを納得のいく形で締めくくろうとしている。

 正直に言って大きな前提となるが、2024年シーズンのこれまでの展開を考えると、フェルスタッペンがタイトルを獲得することは歴史的な偉業となるだろう。世界選手権の獲得回数で、アラン・プロストとセバスチャン・ベッテルと並ぶだけではなく、1983年以来のコンストラクターズ選手権3位のマシンでチャンピオンになる快挙となるのだ。

 この偉業を1983年に達成したドライバーが誰かご存知だろうか?それはネルソン・ピケ(ブラバムBMW)だ。つまり、フェルスタッペンの恋人ケリー・ピケの父親であり、3度のF1世界チャンピオンだ。それを思うと彼らが開く家族でのディナーを想像せずにはいられない!

(c)XPB Images
(c)XPB Images

(Alex Garcia/Translation: AKARAG)

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