F1王者バトン、“鬼才を鬼才たらしめる”やり方を続けるニューウェイへの関心を明かす「彼のマシンに乗ってみたい」
ジェンソン・バトンは2009年のF1世界チャンピオンだが、偉大なドライバーたちとともに名を連ねる彼でさえ、ライバルを羨ましく思う気持ちは拭えないという。
イギリス人のバトンは、2021年から2025年までウイリアムズのシニアアドバイザーを務めた。そして2026年より、チームアンバサダーとしてアストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チームのチームウェアに身を包むことになった。アストンマーティンは現在、前代未聞のメカニカルトラブルに見舞われているが、バトンは意外にも、コックピットに座っているドライバーたちを羨ましく思っている。
数十年にわたり、ニューウェイは他のドライバーにとって死神のような存在だった。彼の設計したマシンは、ライバルたちを打ち負かし、26もの世界タイトルを獲得した。
バトンは、空力的に優れたニューウェイのマシンに勝つことにキャリアの大半を費やした。しかし今、バトンはアストンマーティンのアンバサダーとしてガレージからその様子を見守る立場にある。
「この新世代のマシン、特にエイドリアン・ニューウェイが設計したマシンをぜひとも運転してみたい」とバトンは、アストンマーティンの公式サイトで始まった連載『Jenson's Journal』に綴った。
「これまで何年も彼のマシンとレースで戦ったが、彼と一緒に仕事をするのはどんな感じだろうかといつも思っていた。そういう意味では、ランス(・ストロール)とフェルナンド(・アロンソ)が少し羨ましいと言える」

またバトンは、デジタル時代にあってもなお、ニューウェイのアナログな才能のファンだという。
「エイドリアンが仕事をするのを間近で見るのは魅力的だ。彼は昔ながらのやり方で、ノートを片手に製図板にアイデアをスケッチしている。でも、それこそが彼を鬼才にするんだ」
そう語ったバトンは、ちょっとした企業スパイ行為を明かした。
「僕は彼のノートをこっそり覗き見ようとしたかもしれない……彼は気づいてしまったけどね」

バトンが自ら「嫉妬」と明かしたのは、特に痛烈なことだ。というのも、彼自身が完全に新しい技術を経験したことがないことを自覚しているからだ。2026年のレギュレーションは、まるでハンマーで叩きつけるかのような衝撃を与えて施行された。複雑なハイブリッドシステムが導入されたことで、アストンマーティンはホンダ製パワーユニットの異常振動に見舞われている。
開幕戦オーストラリアGPではストロールが予選を欠場する屈辱的な事態に陥り、悲惨なスタートを切ったにもかかわらず、バトンは完璧なプロフェッショナルな態度のままだった。バトンはチームの「悪夢」のような現場について、公の場では一言も批判の言葉を口にせず、その代わりに新型マシンがアロンソとストロールにもたらす知的な挑戦に焦点を当てた。
「僕たちは新たな技術時代に突入しているので、今年は特に興味深い年だ。しかし変わらないものもある。F1は今もなおモータースポーツの頂点だ。F1マシンを運転する感覚に匹敵するものはない。パワー、ブレーキング、そして限界ギリギリのところでマシンが動く感覚。決して飽きることはない。これらのマシンは、この世のものとは思えないほど速い」

しかしバトンは同時に、この時代はただアクセルを強く踏み込むだけではなく、精神的な鍛錬の時代であるとも主張した。
「これらのマシンの仕組みは進化している。パワーユニットの挙動は、ドライバーがこれまで慣れ親しんできたものとはまったく異なる」
「以前は、コーナーを通過したら、どれだけのパワーがあるかを正確に把握できた。しかし今は、前のコーナーでのブレーキや、ハイブリッドシステムがどのようにエネルギーを配分するかといった要素に左右される」
「つまり、ドライバーはこれまで以上に臨機応変な対応が求められるということだ。それを上手にこなせるドライバーは、正当な理由で際立つ存在となる。一方そうでないドライバーは、悪い意味で目立ってしまうだろう」