2025.05.14

【F速プレミアム】
ピアストリに見た“チャンピオンの資質”/スペイン人ライターのF1コラム


2025年F1第6戦マイアミGP オスカー・ピアストリ(マクラーレン)
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 F1第6戦マイアミGPを終えチャンピオン候補のひとりとなっているオスカー・ピアストリ。チームメイトであるランド・ノリスとは違う魅力を持ったピアストリの魅力をスペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアが語る。
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 いつものように、F1は魅力的な2025年シーズンを迎えている。私たちレースファンやジャーナリトたちは、時にばかげて聞こえるほどに、よくそのように言うものだ。毎年のように面白いと感じるのは、実際のところ不可能だろうか?

 そんなことはない! モータースポーツは物語に満ちた世界であり、パドックで何か興味深い出来事が起こらないまま1年が過ぎるということは極めて稀だ。しかし、私にとって今シーズンの最大の話題のひとつは、執筆時点で新たなチャンピオンシップリーダーとなったオスカー・ピアストリの決定的なステップアップだ。

 ピアストリはF1に参戦してまだ3年目だが、驚くべき成熟ぶりを示しており、2025年のタイトル獲得の最有力候補だと言っても何の問題もないだろう。ただし、まだ18レースが残っていることを忘れてはならない。しかしそれにもかかわらず、オーストラリア人ドライバーが最初の6レースで4勝を挙げるなど好成績を収めているのを見て、私はなぜ自分が彼を主なタイトル候補と見ているのか、そして普通のドライバーと世界チャンピオンになる可能性を秘めたドライバーの違いは何なのかということについて考えさせられた。それでは、詳しく話をするとしよう。

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 F1ドライバーを評価する際に最初に見るべきことのひとつは、ジュニア時代のキャリアだ。カートは才能を披露する場にはなるが、ほとんどの場合まったく違う世界なので、評価を始められるのは、ドライバーがシングルシーターに乗り始めてからだと私は考えている。マックス・フェルスタッペンが、F1デビューを果たす前にFIA F3で1年間過ごしたことや、キミ・ライコネンがザウバーと契約する前にフォーミュラ・ルノーのレースに数回しか出場しなかったことなど、いくつか明確な例が思い浮かぶ。近年、オリバー・ベアマンはプレマを下してイタリアF4でチャンピオンに輝くという、それまで不可能と思われていた偉業を達成した。

 ピアストリについては、結果がすべてを物語っている。ピアストリは、2016年末から2017年初頭にかけてF4 UAE選手権の3ラウンドに参戦した後、F4イギリス選手権に参戦し、すぐにトップ集団入りして、圧倒的な強さを見せたジェイミー・キャロラインに次ぐ2位でフィニッシュした。資金不足がキャロラインのさらなる上昇を阻んだのは残念なことだった!

 その後ピアストリは、2018年にフォーミュラ・ルノー・ユーロカップに参戦。それ以来、ピアストリの星はかつてないほどに輝きを増した。彼はシリーズ2年目のシーズンでタイトルを獲得し、2020年にはFIA F3でルーキータイトルを獲得、2021年にはFIA F2でふたたびルーキータイトルを獲得した。

 直下カテゴリーで3年連続のタイトル獲得は前代未聞のことで、ピアストリのジュニアキャリアはシャルル・ルクレールやルイス・ハミルトンらと肩を並べるものになった。これだけでも彼を他の同世代のドライバーから際立たせるのに十分だったが、現在のF1の特異性により、彼はアルピーヌのテスト兼リザーブドライバーとして1年間過ごさざるを得なかった。しかし実際には、彼はそのシーズンを有効活用し、2023年シーズンに向けてマクラーレンに“引き抜かれる”前に、信じられないほどの走行距離を稼いだ。彼がちょうどよいタイミングでウォーキングのチームに加わったのは、いわゆる『チャンピオンの幸運』なのかもしれない。

 F1キャリアを始めて半年、マクラーレンはふたたび競争力を取り戻し始め、ピアストリはなんと2023年の鈴鹿で初の表彰台フィニッシュを飾った。そして翌年の第13戦ハンガリーGPではグランプリ初優勝を果たした。2025年に入ってからは、第6戦マイアミGP時点で4勝を挙げこれまでのところはるかに説得力のある成績を残している。ここで、客観的なデータは置いておいて、もう少し具体的ではないもの、すなわち、“チャンピオンの資質”について考えてみよう。

 最近のF1世界チャンピオンを見れば、彼らが他のドライバーと一線を画す何かを持っていることは明らかだ。フェルスタッペン、ハミルトン、ニコ・ロズベルグ、セバスチャン・ベッテル……。彼ら全員に共通していたのは、勝利のためにもう一歩踏み出す準備ができていたということ。いかなる犠牲を払ってでも一番になろうとする野心だ。

 それに加えて、もちろんドライビングの才能、スピード、技術力、そしておそらくチームと協力する能力もあるだろう。これまでのところ、ピアストリはこれらの点すべてを明示してきたが、2025年のタイトル獲得のもうひとりの大本命とも言える、彼のチームメイトと彼を分ける決定的な点がひとつある。

 昨年12月にF1パドックで次のシーズンの主なタイトル候補は誰かと尋ねていたら、ほとんどの人がランド・ノリスと答えただろう。このイギリス人ドライバーは速く、才能があるが、ピアストリは彼に勝るところがある。それは個性だ!

 まあ、それは不公平な言い方かもしれないが、簡単に説明すると、ピアストリはレーシングカーのなかで決断を下すときは、ずっと冷静沈着で落ち着いている。ノリスは非常にカリスマ性があるし、そのことに疑いの余地はないが、ピアストリよりもプレッシャーを感じている場面を何度も見せてきた。これは、ピアストリが自分の感情に左右されることなく状況を管理できることを意味している。

 もちろん外から見れば、これはレースを見る“退屈な”方法かもしれない。私たちは皆、何よりもまず楽しんでいる派手なドライバーたちが好きだ。しかし、これが彼らの仕事であることを忘れず、ある程度の距離を置いて見なければならないことをわかっている、リラックスした競技者の姿を見るのも、とても爽快なものだ。しかし誤解しないでほしいのは、ピアストリが使っている戦略は、これだけではないということだ。実際のところ、私たちが知る限りでは、彼はまさに適切な性格に恵まれている。彼は人生を楽しんでおり、あらゆる面でF1キャリアを愛しており、そのおかげでプレッシャーを遠ざけることができている。

 ピアストリがどんな人物なのか、もうひとつ彼の母親であるニコールから直接聞いたひとつの逸話をお話ししよう。2年前、マクラーレンのドライバーふたりは、バーレーンでのイベントに招待され、宮殿のプライベートルームに宿泊することを許された。ニコール・ピアストリが説明するところによると、ビデオ通話で息子に電話をかけた彼女は、部屋の真ん中に息子のスーツケースが開かれ、中身がそこら中に散らばっていることに気づいたという。彼はF1ドライバーかもしれないが、結局のところ、彼は何よりもまずオスカー・ピアストリその人なのだ。そして、そのことを常に覚えておくことが、世界チャンピオンになるための鍵となるかもしれない。

2025年F1第6戦マイアミGP オスカー・ピアストリ(マクラーレン)
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(Alex Garcia/Translation: AKARAG)

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