代表離脱を電撃発表せざるを得なかったアウディ。ウィートリーとビノットには権力闘争のうわさも
アウディのチーム代表ジョナサン・ウィートリーがアストンマーティンに移籍しようとしているという報道が出た後、アウディは迅速かつ断固たる反応を示した。それはある意味、避けられない行動だった。シーズン中にこの種の噂にさらされることは、いかなるチームにとってもマイナスだが、アウディのような大手自動車メーカーにとっては、その状況が数日以上続く事態は耐え難いものだ。
こうした出来事が起きた際に懸念されるのは、企業イメージが傷つけられることだ。大手自動車メーカーであれば、なおさらである。しかし問題はイメージだけにとどまらない。幹部の一人がライバルチームに移籍する見込みだという報道は、アウディの評判に直接的なダメージを与えるだけでなく、社内に混乱をもたらす。メンバーたちは、ウィートリーに対してどう接するべきか、分からなくなってしまうからだ。

さらに悪いことに、日本GPの週末が迫っている時期だっただけに、アウディはこのままではメディアがチームのパフォーマンスにまったく注目しなくなるということを分かっていた。関心はすべてチーム代表の去就問題に向けられ、チームにとって望ましくない雑音となることは明らかであり、アウディとしてはそれを断固として避けたかったのである。
そのため、アウディは、「噂についてはコメントしない」と表明してからわずか数時間後に、「個人的な理由により、ジョナサン・ウィートリーは即時にチームを離れる」とする声明を発表した。
当面は、アウディF1プロジェクト責任者であるマッティア・ビノットが、チーム代表の役割も担う。しかしこれはあくまで暫定的な措置であり、「チームの将来の体制は、F1の進化し続ける環境に適応するなかで、後日、完全に定められる」とチームは述べている。
ウィートリーの離脱は電撃的な事件だったが、以前から内部では、ウィートリーとビノットの間に緊張が急速に高まっていることを感じ取っていた者もいたようだ。ふたりとも、自分がチームの最高ポジションに就くという認識のもとで採用された。しかし、ビノットは2024年の8月に合流できたが、ウィートリーはレッドブルとの契約に縛られており、ヒンウィルのチームに移れたのは2025年4月だった。

その結果、ビノットは7カ月のアドバンテージを得て、フェラーリ時代の腹心たちを引き連れてアウディに加わり、意思決定の中心に立つことができた。一方のウィートリーに残された役割は、レースチームの運営とメディア対応という補佐的なものであり、レッドブルを離れる決断をした際に彼が望んでいたものとは明らかに異なっていた。
そうした事情を考えると、ウィートリーの決断自体はさほど驚くべきことではない。とはいえ、アウディにとって初のシーズンをわずか2戦消化した段階というタイミングは、誰にとっても予想外だっただろう。