2025.10.21

レッドブルの違反“ゲートウェルエリアへの立ち入り”を解説。妨害を疑われるも、意図的な指示無視を否定/F1 Topic


2025年F1第19戦アメリカGP ランド・ノリス(マクラーレン)のグリッドのすぐ脇には、ゲート1がある
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 2025年F1第19戦アメリカGPのレース後、スチュワード(審議委員)はレッドブルのチームマネージャーを召喚した。スチュワードによれば、フォーメーションラップ開始後にチームメンバーがゲートウェルエリアに立ち入るという違反を犯していた疑いがあったからだ。

 このニュースは少々わかりづらいので、順を追って説明していきたい。

 まずゲートウェルエリアとは何かを説明しよう。これはピットウォールに設けられた開閉式の門を指す。グリッド上でエンジンがストールするなどして身動きがとれなくなったマシンを素早く排除するために設けられているが、レコノサンスラップが始まる前にメカニックらがグリッド上で作業するための道具やタイヤを運ぶための門としても使用される。

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2025年F1第19戦アメリカGP サーキット・オブ・ジ・アメリカズのゲートウェルエリア

 この門はサーキットによって異なるがたいてい2、3カ所開けられていて、門番がいる。グリッドへ行くためには『グリッド・アクセス』が許可されている特別パスか、グランプリごとに許可された者だけに配布されるステッカーをパスに貼っておかないと通過できない。

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ゲートウェルエリアには門番がいる(写真は2021年エミリア・ロマーニャGP)

 メディアやゲスト、またチーム首脳陣らも国歌斉唱が終了した後、ただちにグリッドから退去しなければならないが、チームスタッフはフォーメーションラップがスタートするまで、タイヤを装着したり、マシンをクーリングするなどの作業が残っているため、グリッドの脇にとどまることができる。エンジンがストールするなどの緊急事態に備えるためだ。

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2025年F1第19戦アメリカGP フォーメーションラップ開始時、グリッド脇にはチームスタッフが残っている

 フォーメーションラップがスタートし、全車がグリッド上からいなくなったのを確認した後、グリッド脇にいたメカニックたちは作業道具とともにフォーメーションラップ中に退去しなければならないため、門はこの段階ではまだ開いている。

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フォーメーションラップ開始直前の様子。コースから戻ってくるチームスタッフのために、門は開いている(写真は2021年フランスGP)

 この門はフォーメーションラップ中に完全に閉鎖しなければならないため、グリッド上から退去したチーム関係者がグリッドへ戻ることは許されない。

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門はフォーメーションラップ中に完全に閉鎖する(角田のマシンがピットレーンを走行しているのは、角田のみピットレーンスタートのため。写真は2021年フランスGP)

 しかし、今回スチュワードからの報告では、レッドブルのスタッフが、ピットマーシャルがゲートを閉じ始めた時点において、オフィシャルの指示に従わず、2番グリッド位置付近のゲート1のゲートウェルエリアに再び立ち入ったという。

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2025年F1第19戦アメリカGP 問題となった2番グリッド位置付近のゲート1のゲートウェルエリアで仕事するピットマーシャルたち。レコノサンスラップ中のため、この段階で門は開いている

 この門の開閉は安全上、非常に重要で、かつフォーメーションラップという限られた時間内で完了しなければならないため、ゲート閉鎖プロセスを妨害または遅延させることは、安全を損なう行為とみなされ、50、000ユーロ(約880万円)の罰金が科せられた。

 では、レッドブルのスタッフはなぜそこまでしてグリッドへ戻ろうとしたのか。そこで疑われているのが、ランド・ノリス(マクラーレン)への妨害説だ。今回問題となった2番グリッドはノリスのグリッドポジションで、そこにゲート1があるのがわかる。

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2025年F1第19戦アメリカGP ランド・ノリス(マクラーレン)のグリッドのすぐ脇には、ゲート1がある

 マクラーレンは、そのウォールにある目印を貼っていた。それはフォーメーションラップを終えたノリスがグリッドに正確にマシンを停止するための目印だ。それが門の近くあるため、門が閉まる直前に立ち入って剥がしたのではないかという疑われている。

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2025年F1第19戦アメリカGP 2番グリッド横のウォールに貼られた、グリッドに正確にマシンを停止するための目印(赤矢印)

 スチュワードにチームマネージャーが召喚されたため、レース後に予定されていたレッドブルのチーム代表ローラン・メキースの会見は1時間15分遅れとなった。

 会見でメキースはこう説明した。

「我々としてはチームと確認したが、全員が指示には従っていたと確信している。おそらく誤解があったのだと思う。意図的に無視したわけではないが、再発防止のための対応を行うつもりだ」



(Text : Masahiro Owari)

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