2030年の“ネットゼロ”達成を目指すF1、現時点で二酸化炭素排出量を26%削減。カレンダーの調整などが効果を発揮
F1はコース上でのスピードがすべてかもしれないが、気候変動対策に関しては長期的な取り組みとなることを重く受け止めており、急速に前進している。最新の年次持続可能性報告書で発表されたように、F1は二酸化炭素の総排出量が26%削減されたことを受けて、2030年までにネットゼロを達成するという目標に向け、しっかりと歩みを進めていることを明らかにした。
F1の評判は、轟音を立てるエンジンと世界各地を移動する物流によって築かれているが、一方で持続可能な工夫を凝らした、素晴らしいイノベーションの象徴としての価値も高まっている。報告書によれば、二酸化炭素の総排出量は22万8793トンから16万8720トンに減少した。これは意義深い一歩だが、F1のCEOを務めるステファノ・ドメニカリは、これはほんの始まりに過ぎないと述べている。
「我々は、2030年までにネットゼロを達成することに力強く取り組んでいる。これは具体的な目標であり、このことはすでに我々のスポーツの二酸化炭素排出量が大幅に削減されたことに表れている」とドメニカリは語った。
「世界的な成長を続けるなかで、持続可能な開発は可能であり、採用した戦略が目に見える成果を生み出していることを示してきた」
よくある誤解を解いておくと、“ネットゼロ”は、二酸化炭素排出量ゼロを意味するものではない。それよりも、信頼できる炭素回収プロジェクトや類似の方法を通じて、避けられない排出量をすべて相殺し、全体的な気候への影響を中立にすることを意味している。
F1の最新戦略は、動きの激しい国際的なスポーツが排出ガスを完全にゼロにすることは決してできないことを認識している。しかし報告書が述べているように、より洗練された物流、より環境に優しい燃料、そして先進技術によって、選手権は環境負荷を削減し、「ベストプラクティスのガイダンスに沿った、信頼できるプログラム」を通じて残ったものを相殺することを計画している。
F1の持続可能性推進における最大の手段のひとつはなんだろうか? それはレースカレンダーを修正することだ。F1は、活発なピンボールのように大陸間を飛び回るのではなく、レースを地域ごとに開催することで、最大の排出量源のひとつである長距離移動を大幅に削減した。また、F1は欧州の貨物輸送業務にバイオ燃料を導入し、この分野での輸送関連の排出量を83%も削減した。さらに一部のチームでは、風力や太陽光発電施設の導入を進めている。
今後に目を向けると、2026年は次世代のパワーユニット(PU)がデビューする年となる。このエンジンは内燃機関と電気エネルギーの動力を50対50に分割するものであり、F1の中核製品であるレースカーの脱炭素化に向けた大きな一歩となる。
「F1は、常に革新と向上心の同義語となっている」とドメニカリは語った。
「改めて我々は、この考え方によって重要な進歩を遂げることができた。この世界で働く人々のためだけでなく、社会全体のためにもだ」
2026年にすべてのF1マシンに先進的な持続可能燃料が導入されることで、レースだけでなく、より広範なモビリティの世界にも新たな変革がもたらされることが期待される。
「我々はプロジェクトを継続し、来年はすべてのF1マシンに先進的な持続可能燃料を使用するなど、新たな取り組みを導入する予定だ」とドメニカリは述べた。
「この一歩は、道路を走る自動車やその他の交通手段にも大きな機会をもたらすだろう」
ガソリンを大量に消費する見世物というイメージにもかかわらず、F1は持続可能な技術の実験場へと着実に変化しつつある。これは単なるマーケティングの宣伝ではない。巨額の投資、世界的なパートナーシップ、そして巧みなスケジュール管理により、このスポーツは持続可能性と見ごたえあるショーを両立できるという、説得力のある主張を展開している。
「我々はこれまで達成してきたことを誇りに思っており、今後もこの道を歩み続ける決意をしている」
「この旅路において根本的な貢献をしてくれたたFIA、各チーム、パートナー、プロモーターに感謝している」
F1からのメッセージは明確だ。ネットゼロへの道はピットストップではなく、長く曲がりくねったサーキットだ。そして、そのレースはまさに始まっている。