2026.02.19

“走るラボ”でチームを支えるエクソン・モービル。潤滑油&燃料開発がホンダPU性能向上の一助に【ギョロ目でチェック】


ガレージ内に設置されたエクソン・モービルのラボにて、オイルの分子チェックが行われる
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 2026年の最後のプレシーズンテストがバーレーンで幕を開けた。開幕戦へ向けて、各チームが最終調整を行っており、今年のF1は大きなレギュレーション変更が行われたため例年以上に忙しいテストとなっている。

 2026年からF1のパワーユニット(PU)はMGU-Hが廃止されたことで、ターボを最適な作動領域に到達させるための負担がエンジン(ICE)へと移った。これまでは燃料流入量の関係から、回転数の上限は毎分1万500回転が最適だったが、2026年はスタート準備段階で1万3000回転近くまで引き上げられると見られている。さらに、これまで1レースあたり約4000回シフトチェンジするギヤボックスも、今年はエネルギー回生のために回数が増加すると見られているからだ。

 そのテストで重要な役割を果たしているのが、潤滑油だ。テストでは時間が限られているため、トラブルがなければ、エンジンやギヤボックスの交換は行わない。しかし、パワーユニットやギヤボックスがどのような状態であるのかを確認することは、セッション中にトラブルを起こして走行を中止しないために重要である。このチェックを現在のF1で行っているのが潤滑油だ。

 フォード・RBPTに潤滑油を供給しているエクソン・モービルの担当者はこう語る。

「私たちは、サーキットに“走るラボ”を所有しており、燃料の品質管理だけでなく、エンジンとギヤボックスの品質管理のためのテストも行っています」

 走るラボとは、ガレージのなかに設けられた実験室。セッション後、走行データ上でエンジンやギヤボックスに何か異常があれば、担当者は該当するオイルのサンプルをラボへ持って行き、分子チェックしてもらう。オイルの成分は決まっているため、オイルのなかに通常よりも含有量が高い分子があると、可動部品のいくつかが接触している可能性を疑わなければならない。

【ギョロ目でチェック/第14回】
“走るラボ”ことガレージのなかに設けられた実験室
【ギョロ目でチェック/第14回】
ラボでオイルの分子チェックを行う

「たとえば、分析の結果、チタンのスパイクがある(含有量が高い)としましょう。2025年までの場合、チタンでできている唯一のギヤはリバースギヤなので、そのギヤでうまくいっていないことを示す兆候を私たちは疑います」(エクソン・モービル担当者)

 2025年までレッドブルでエクソン・モービルと一緒に仕事していたホンダ・レーシング(HRC)の折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー兼チーフエンジニア)もこう語る。

「オイルチェックはとても重要で、セッション後、我々のPUメカニックがエクソン・モービルさんのラボに持ち込んで常に解析を行ってもらっていました。それはテストだけでなく、グランプリ期間中も同様です。グランプリ期間中に使用しているパワーユニットは封印されているので、開けることができません。そのため、オイルに溶け込んだ成分を分析することは、パワーユニットの健全性を確認する上では重要な作業となるからです。また、パワーユニットに気になることが起きたり、クルマがぶつかるなどして駆動系にストレスが加わったときなどは、クルマがガレージに戻ってきてからサンプルを抜き取って急いでラボに持ち込みます。だいたい10分ぐらいで通知が私たちのパソコンに届きます」

【ギョロ目でチェック/第14回】
テストに限らずグランプリ期間中も、ガレージ内のラボにオイルのサンプルが持ち込まれ、解析が行われている

 エクソン・モービルでマーケティングサービス&スポンサーシップマネージャーを務めるケイティ・ハウエルには、忘れられないグランプリがあった。2021年のサウジアラビアGPだ。2021年は、エクソン・モービルがパートナーを組むレッドブルとメルセデスがタイトル争いを繰り広げていた。シーズン終盤のサウジアラビアGPの予選でマックス・フェルスタッペンが最後のアタックでリヤタイヤをコンクリートウォールにヒットするクラッシュを喫した。ギヤボックスにダメージを負っている可能性があるが、交換すればペナルティを受ける。かといって、交換しないでレース中にリタイアすれば、ノーポイントとなる。

 その状況で力強いサポート役を担ったのが、エクソン・モービルだった。

「持ち込まれたギヤボックスのオイルのサンプリングを私たちの走るラボで分析した結果、問題がないことが判明したのです」(ハウエル)

 この結果、レッドブルはペナルティを受けることなく、かつレースにも安心して臨むことができた。

 トラブルの可能性をチェックする以外にも、潤滑油は力強いサポート役を演じている。折原GMはこう語る。

「じつは我々のパワーユニットが2018年から劇的に向上した影にもエクソン・モービルさんのオイルと燃料の開発がありました。燃料は燃焼に直結するので重要なのは理解できると思いますが、エンジンの出力を受け止めるのはオイルなので、その性能向上も重要でした。エンジンだけどんどん強くなっても、それをしっかりとサポートしてくれないとパフォーマンスを発揮できません」

 折原GMによれば、ホンダが高い温度レンジを使用できた影には、エクソン・モービルの協力があったという。

「レッドブルへパワーユニットを供給した最後の数年は使用温度レンジがそれまでよりも高かったのですが、それを可能にしたのもエクソン・モービルさんの協力があったからです。というのも、温度レンジが高くなれば、当然油温も高くなり、ストレスも上がります。そういう状況でのオイル分析は我々にとって必要不可欠なものでした。分析の結果、問題がなければ、ボディカウルをもう少し閉じて、さらに高い温度でオペレーションしたときもありました。ボディカウルを閉じて空力を攻めることができれば、クルマのパフォーマンスが上がるからです。我々のパフォーマンス向上を影で支えてくれたのはエクソン・モービルさんでした。本当に感謝しています」

 そして、こう続けた。

「オイルと燃料というのは、エンジンサプライヤーとの関係が密接で、いわば同じ釜の飯を食べた仲。我々もかなりの情報を提供しましたし、彼らも多くの情報を我々に提供してくれました。通常はそこまで情報は出さないのですが、エクソン・モービルさんとはかなり情報を開示してやってきたと思います。そこには一緒にエンジンを開発していこうという共通の目標があったからだと思います」(折原GM)

 今年のプレシーズンテストでのサプライズのひとつに、2026年から新規参入したフォードRBPTのパワーユニットのパフォーマンスがある。その活躍を陰で支えているのがエクソン・モービルということも忘れてはならない。



(Text:Masahiro Owari)

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