「みんな芝生を走ってペナルティも何もない」お咎めなしのショートカットに各車不満【F1第20戦無線レビュー(1)】
2025年F1第20戦メキシコシティGP。スタート直後、ポールポジションのランド・ノリス(マクラーレン)を含む複数のマシンが一斉にターン1に飛び込んだ。大きなインシデントには至らなかったものの、コーナーのショートカットによってアドバンテージを得たドライバーがいたことなどで、順位を落としたドライバーから不満の声が上がった。メキシコシティGP前半を無線とともに振り返る。
────────────────────
スタート直後から、激烈な首位争いが繰り広げられた。ターン1のブレーキングでフェラーリの2台とスリーワイドになったマックス・フェルスタッペン(レッドブル0は、アウト側に大きく出ていった。

フェルスタッペン:押し出された! クレイジーだ。
ジャンピエロ・ランビアーゼ:了解。
その際、フェラーリのシャルル・ルクレールとルイス・ハミルトンも接触していた。
ハミルトン:フロントウイングの一部を失った。
後方ではランス・ストロール(アストンマーティン)がスピン、最下位に後退した。
ゲイリー・ギャノン(→ストロール):ダメージはないようだ。
13番手スタートのニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)は、17、18番手まで順位を落としていた。
ニコ・ヒュルケンベルグ:パワーがない。
トラブルは直らなかったようで、25周目にピットイン。そのままリタイアを喫した。
ターン1の攻防でフェルスタッペンにかわされたジョージ・ラッセル(メルセデス)は、5番手に後退した。
ラッセル:フェルスタッペンはコーナーをカットして、芝生を走って前に出た。ポジションを戻すべきだ。
不満の矛先は、オリバー・ベアマン(ハース)らにも向けられた。
ラッセル:馬鹿げている。みんな芝生を走って、ペナルティも何もない。それでアドバンテージを得ている。
マーカス・ダドリー:記録はされている。

フランコ・コラピント(アルピーヌ)は被せにきたストロールと接触。スピンを喫した。
スチュワート・バーロウ:大丈夫か?
コラピント:(ストロールが)ぶつかってきた。
バーロウ:ダメージはなさそうだ。まだ先は長い。取り戻していこう。
混乱状態のなか、カルロス・サインツ(ウイリアムズ)とリアム・ローソン(レーシングブルズ)も接触した。
サインツ:ぶつかった。
ガエタン・イエゴ:左側をチェックしている。タイヤ内圧に問題はない。
ローソン:チェックしてくれ。ウイリアムズがぶつかってきた。

14番グリッドのフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)も、混乱のなか順位を落としていた。
アロンソ:スタートはよかった。サインツや他のクルマを何台か抜いたのに、コース外から抜き返された。
クリス・クローニン:フロントウイングに問題はない。
アロンソ:ああ、わかった。……でもちゃんとコーナーを回った僕がこの位置にいるのは、フェアじゃない。3、4台が、コース外から抜いている。
クローニン:ちゃんと見たよ。(スチュワードに)報告中だ。
アロンソ:でもこれがどんな深刻な結果になったのか、彼らは本当にはわかっていない。
その後もアロンソは、ペナルティが科されないことに不満を言い続けた。
アロンソ:レースのことを、彼らは何もわかっていない。
クローニン:しっかり記録して、調査してくれているよ。
アロンソ:君たちはしっかり対応してくれている。どうせ無線のやりとりを全部TV中継で垂れ流すなら、これもぜひ流してほしい。
アロンソ:大画面でもリプレイで、さっきのをやっている。なぜ無視なんだ?
5周目
ウィル・ジョゼフ:タイヤはどう? ペースはどうだ?
ランド・ノリス:金曜日(のフリー走行)より、ちょっとトリッキーだね。グリップがない。
クリーンエアで首位を走るランド・ノリス(マクラーレン)だが、ソフトタイヤの感触はあまりよくないようだった。

6周目、フェルスタッペンが3番手ハミルトンに迫り、サイドバイサイドに。しかし押し出され、その隙を突いたベアマンが4番手に上がった。
フェルスタッペン:クレイジーなほど押し出された!
ロナン・オヘア(→ベアマン):グッジョブだ。P4だぞ。
フェルスタッペン:不当なアドバンテージだよ。
ランビアーゼ:心配するな。報告済みだ。

そんな攻防を背後で見ていたラッセルは、笑い出していた。
ラッセル:ほとんどジョークだね。ゴーカート時代を思い出したよ。
ハミルトンにはターン4でエスケープロードを通らなかったとして10秒ペナルティの裁定が出た。
リカルド・アダミ:フェルスタッペンとのターン4(での争い)で10秒ペナルティを受けた。僕らはもちろん納得していない。熱くなるな。
ハミルトン:なんてことだ。あそこはグリップがなさすぎたんだ。
8周目
ハミルトン:ターン17でアドバンテージを得ている連中はどうなってるんだ?
アダミ:今は何も出てない。
ハミルトンにしてみれば、「他の連中も違反してるのに」と、やりきれない思いだったのだろう。

18周目
ジョゼフ(→ノリスに):ルクレールは7秒3後方だ。いいギャップだ。このままできるだけ長く、タイヤを持たせよう。
サインツ:ピットレーンでクルマがものすごく跳ねるんだ。なぜなのかわからないけど。
そのせいなのか、サインツはピットレーンスピード違反で5秒ペナルティを受ける。その症状は治らなかったようで、2回目のピットインの際は10km/h近くオーバーし、ドライブスルーペナルティを科された。
20周目前後から、タイヤ交換のタイミングについてのやり取りが増えていった。タイヤの性能劣化が予想以上に大きく、当初の予定の1回ストップ戦略に多くのドライバーが疑問を持ち始めていた。
19周目
クローニン:プランAで行こう。
アロンソ:いや、プランBだ。ペースが遅すぎる。これ以上、タイムロスしたくない。
クローニン:わかった。プランBに変更する。
23周目
フェルスタッペン:どうしてほしい?
ランビアーゼ:ステイアウトだ。1ストップか2ストップか、境界線だ。どう?
フェルスタッペン:聞こえているよ。
最終的にフェルスタッペンは、1回ストップで持ち堪えた。
────────────────────
F1第20戦無線レビュー(2)に続く