2022.07.29

【F速プレミアム】
さらなる成長を期待される角田裕毅。情熱的な性格の長所と短所/スペイン人ライターのF1コラム


(c)AlphaTauri
 7月の第10戦イギリスGP、第11戦オーストリアGP、第12戦フランスGPの3戦では思うような結果を残すことができなかった角田裕毅。イギリスGPは自身のミスだが、他のレースでは不運やマシンの競争力のなさに悩まされた。チームメイトのピエール・ガスリーはすでにアルファタウリ残留が発表されているが、果たして角田は2023年も残ることができるだろうか。アレックス・ガルシアが現状を語る。

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 現在のF1シーズンは、興味深い話が豊富で、注目すべき要素も多くある。私はしばしば中団に注目する。非常に狭い範囲のなかで多くの戦いがあり、些細なミスでも誰かのレースに大きな影響を与えることがある。そうした話のひとつとして、角田裕毅がF1での1年目から明らかに進歩したということがある。2021年の彼は、いつも非常に速いスピードを出していたが、今シーズンはまったく別人のドライバーに見える。だが、それはアルファタウリに来年も残留するのに十分なほどだろうか?

 数字を見てみると、簡単に言えばイエスだ。角田はより経験豊富なチームメイトのピエール・ガスリーにかなり近づいている。ガスリーはF1のレース優勝経験者であり、元レッドブル・レーシングのドライバーであったことを忘れるべきではない。ふたりのポイント獲得数はずっと近づいている。そしてどちらかがもうひとりより上の順位につけるか、少なくともより競争力を発揮したレースの数は同じくらいだ。概して言えば、角田とガスリーは昨年に比べて今年ははるかに近づいている。
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 しかし、角田の2022年シーズンを難しいものにしているひとつの大きな違いがある。それはアルファタウリのAT03のパフォーマンスの低さだ。昨年のマシンと比べると速さがないのだ。2021年に、AT02はしばしばマクラーレンやアルピーヌと競い合うことができたが、今年はアルファロメオとハースと同レベル(下回ることも多い)で、かつてのライバルたちからは明らかに離されている。つまり角田やガスリーには、調子が良い日もマシンの競争力のなさがつきまとっていることが多く、そのためにポイントを獲得することができない。ポイントが取れたとしても、彼らの実力に見合うポイント数より少ない。

 もちろんこれは一般的なファンやメディアが受けた印象から感じられることでしかなく、アルファタウリの人々は彼らのマシンの良し悪しを分かっており、ドライバーたちを公平に評価するだろう。その意味で、ガスリーの立ち直りは予想外ではなかった。ガスリーは確固たるチームリーダーになっており、どの若いドライバーにとっても基準となる理想的な人物に見える。ここで、状況を理解するためにF1を超えたところを見る必要がある。

 レッドブルは若いドライバーを使うことを好む。つまり、F1に至るまでのキャリアでレッドブルのサポートを受けてきた、ジュニアチームのドライバーたちのことだ。現実的に考えれば、今のところアルファタウリのドライバー候補になり得るドライバーはF2にしかいないことになる。そして現在5人のドライバーがいるものの、適格者はいない。

 順番に見ていこう。まずFIA F2に岩佐歩夢(ダムス)がいる。ホンダとレッドブルがサポートしている日本人ドライバーの岩佐は、F2のルーキーだが、競争力のないマシンで非常に興味深いことをやってのけた。FIA F2第9戦ル・キャステレの決勝レース2で見事初優勝を遂げたのだ。彼は将来F1でも通用するかもしれないが、賢明な頭脳の持ち主ならば、彼はあと少なくとも1年は成長のためにシリーズに残る必要があると考えるだろう。

 同じことはデニス・ハウガー(プレマ・レーシング)にも言える。ハウガーは2021年のFIA-F3王者であり、F2でもすでに優勝を果たしている。彼はすぐにも活躍するかもしれないが、もう1年同じ選手権にいた方が彼のためになるだろう。

 F2でともに2年目を迎えているリアム・ローソン(カーリン)とユーリ・ビップス(ハイテック)の状況は少々複雑だ。両者ともそれほど印象的な走りはできていないし、ビップスは人種差別発言によってレッドブル・レーシングのテストドライバーを降ろされたため、自身の問題に対処する必要がある。彼らが来年のアルファタウリのシート候補になるとは思えない。

 しかしながらユアン・ダルバラ(プレマ・レーシング)の場合ははるかに興味深い。彼はF2で3年目を迎えており、F1から注目されるのに必要な一貫性をようやく見せるようになった。プレマのマシンと、彼の経済的支援者も助けになっている。彼が昨年のマクラーレンマシンでテストを行った事実は、彼の目標が何であるかを物語っている。それにもかかわらず、レッドブルとアルファタウリは、ダルバラに注目していないと私は感じる。
(c)AlphaTauri

 実際のところ、キーパーソンたちの言葉から、私は角田裕毅がアルファタウリで少なくとも3年目を迎えるだろうと思う。たとえばフランツ・トストの発言を見てみよう。

「クラッシュを除けばだが、シーズン中同じように続けてくれれば、彼が我々のところに残るチャンスは十分にあると思う。彼次第だ」とトストは語っていた。言葉を変えれば、彼のパフォーマンスは良く、今年そうしているように、成長を続ける必要があるだけだということだ。もちろん第10戦イギリスGPで起こしたチームメイトとの同士討ちはプラスにならないが、優れたドライバーは悪い状況を貴重な学びの経験に変えることができる。

 ヘルムート・マルコは、裕毅のことをチームの「問題児」と呼んだ。表面的には悪いことのように見えるが(正直、私はその部分を読みたくなかった!)その背景を理解することが重要だ。マルコはドライバーたちにプレッシャーを与えて、パフォーマンスを発揮させることを好む。これは彼らの戦略だ。F1から、F4の若手ドライバーに対してさえそうなのだ。精神的な強さのないドライバーは、グランプリレースで成功できないというのが、マルコの考えだ。そのことを考慮すると、『Servus TV』でマルコが角田のために心理学者を雇ったと説明したことの意味が分かる。

 つまり、彼らは角田が問題を克服し、情熱的な性格をコントロールし、進歩をさまたげることなくそうした気質を役立たせることができると考えている。私は裕毅の個性は彼の長所のひとつだと心から思っているが、怒りやストレスを感じている時に自分をコントロールできないと、その個性は彼に害を及ぼすこともある。もちろん私の立場からそう言うのは簡単なことだが、それが真実であることに変わりはない。

 しかし、外部からこの状況を見ていると、レッドブルは基本的に角田を信頼しており、彼の成長を助け、才能を発揮する方法を見出しているように感じる。他のドライバーのなかにはそうしたチャンスが与えられなかった者もいる。だから(ブランドとしての)レッドブルが角田のために力を尽くしているのを見ると、彼らは角田がパフォーマンスを発揮できる、才能あるドライバーだと考えていることが分かると思うのだ。

 ずいぶん前のことだが、私は角田裕毅がF1グランプリで優勝する初の日本人ドライバーになると信じていると言った。私は今も、彼ならできると思っている。彼は驚異的なスピードと、レースへの素晴らしい情熱を持っていることを示してきた。あとは自分自身を磨き、必要なものを持っていることを見せる必要があるだけだ。

 来年は?そう、彼はアルファタウリにいると思う。彼はまた競争力を発揮できるマシンが必要なだけだが、その後はどうだろう?彼は2、3年のうちにマックス・フェルスタッペンのチームメイトになれる可能性があるかもしれない。セルジオ・ペレスが引退したらという条件付きだが……もし実現すればそれはエキサイティングなことではないだろうか?

(Alex Garcia Translation: AKARAG)

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