2026.02.26

すでにパドックの尊敬を集めるキャデラック「もう後方集団に匹敵。すぐに戦える」と代表も手応え


現在稼働中の自社製エンジンプログラムも予定より早く進んでおり、2029年にはフェラーリのカスタマーパワーユニットを置き換える予定だ
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 F1プレシーズンテスト完了までの謎と不確実性、さらに政治的駆け引きの渦中を経て、パドックでは満場一致でひとつの結論が下された。『キャデラックは素晴らしい仕事をした』。これは誇張ではなく「よくやっている」という声に特徴づけられる静かな称賛の言葉は、現代のグランプリチームをゼロから構築することがどれほど途方もない仕事であるかを知っている者たちからの、ただただ率直なプロとしての敬意を表している。

 キャデラックは上位争いを繰り広げる存在でなく、短期から中期的な計画でも優勝戦線に姿を見せるのは「時期尚早」だと考えられていた。しかし地元の北米大陸から熱視線を送るモータースポーツ専門サイト『RACER.com』は、テストで見たものすべてが「キャデラックがすぐに後方集団に匹敵するマシンになることを示唆している」とし、107%ルールのもとで「予選を通過できるほどの速さがあるかどうかという正当な疑問は、完全に払拭された」と評価した。

 同誌は、最終的なラップタイムこそ依然として3.6%のギャップが残り、ダウンフォースが小さいにも関わらずタイヤへの負担が大きい特性のため「レースペースはやや物足りないかもしれない」としつつ、キャデラックはライバルにそれほど大きな差をつけられることはなく「苦戦するアストンマーティンと互角に渡り合い、ウイリアムズともそれほど差はないかもしれない」と総括。テストでのパフォーマンス評価に関する一般的な注意点を考慮すれば、これは現段階での素晴らしい成果であり「大きな勝利」だと結論づけた。

「我々は真に前進できるプラットフォームを手に入れたと確信した。これは、まったくの奇跡でもない限り、新チームに求められる最高の成果だろう」と、その論評に同意したチーム代表のグレアム・ロードン。「他チームと同じように物理法則に縛られ、コスト上限も厳しい状況にあり、新チームとしてスタートするために多大な努力とエネルギーを費やさなければならなかった。それらすべてを吸収し、今後の発展に繋がるプラットフォームを手に入れたことは非常に前向きなスタートだ」

 キャデラックは今のところ、最小ではないものの比較的小規模なF1チームであり、スタッフ数は600人弱。この数にはシルバーストン・サーキットに面した英国拠点と米国拠点のスタッフも含まれている。これだけの有能で意欲的な人材を集めるだけでも大変な作業で、彼らをオンボーディングし、急速に拡大する組織に統合していくのは至難の業だ。チームには機材、組織、施設が必要で、財務、マーケティング、人事といった、日曜にグランプリを観戦しているファンの頭には浮かばないような、ありふれた部門も含まれる。

「我々は真に前進できるプラットフォームを手に入れたと確信した」とチーム代表のグレアム・ロードン(右)
キャデラックが正式に参戦を許可されたのは、2025年3月になってからだった

 シルバーストンの施設は稼働しているものの、最終的な構想にはまだ程遠い状況で、インディアナ州フィッシャーズ(チームはインディアナポリスと呼ぶことを好む)にあるアメリカ拠点の建設工事は「今年後半、あるいは2027年第1四半期まで完了しない予定」だと、GMとともにチームの共同オーナーを務めるTWGモータースポーツのダン・タウリスCEOも述べている。

 キャデラックにとって経験の浅いライバルであるハースでさえ、F1で10年もレースを戦ってきたチームであり、膨大な過去のデータと蓄積された知的財産を頼りにすることができる。

 プロジェクト開始当初は、自社開発のシステムはどれもF1で実証されておらず、ここ数カ月、可能な限り公開されたカタチでテストを重ねてきた。もしマシンが走行距離を記録できていなかったら、世界中から否定的な報道が殺到する可能性さえあった。

 つまり、キャデラックがプレシーズンでこれほどの成功を収め、主要なタイムライン目標をすべて達成し、コース内外で完璧なルックスを見せたことは特筆すべきことであり、解決すべき隠れた危機さえ存在しなかった。

「正直なところ、緊急のトラブルシューティングはほとんどなかった」と答えたロードン。「実際に目に見えない部分はたくさんある。新しいチームとして参戦すれば、膨大な数のシステムとやり取りし、統合しなければならない。実際に現場に着任するまでは多くのことが把握できず、それ自体も課題だった。だから、こうした分野に重点的に取り組んでいく必要があったんだ」

「進捗と問題解決には本当に満足している。チームとして取り組む姿勢も非常に冷静だった。ガレージだけでなく、エンジニアリング・ミーティングでも状況を評価するのは非常に容易で、実際シルバーストンでのシェイクダウンで私が特に感じたのは、このチームの特徴のひとつだ。その朝ガレージに入った際に目の当たりにしたのは、落ち着き払って仕事に取り掛かる準備ができているF1チームだった。このような基盤があれば、本当に素晴らしいチーム作りができる。一方で、ガレージに混乱や混沌といった状況があれば、仮にスピードは出せるかもしれないが、いずれ限界に達してしまうだろう」

 キャデラックの堅実なイメージを考えると、F1側の参戦拒否声明がこれほどまでに痛烈だったのは皮肉なことだ。明らかに経済的な理由で下された決定を正当化するために、あらゆる手段を尽くした典型的な例であり、チームが「競争力を持つことができない」というF1の主張(たとえレースでの勝利と表彰台獲得が定義されていたとしても)は、長期的に結果に至る明確な道筋があることを考えると、今にして思えばさらに根拠がないように思える。

 バルセロナでのシェイクダウン前に最初のマシンを走らせ、その後バーレーンでのテストでは平均1日100周弱を走行したセルジオ・ペレスも、チームの好調なスタートに勇気づけられている。

「このプレシーズンテスト期間は本当に楽しかった。雰囲気は最高で、正しい方向に進んでいる。マシンはバランスも良く、多くの走行距離を走破できたからね」と続けたペレス。「周回ごとに多くのことを学んでいるし、今は開発とパフォーマンスの向上に取り組んでいる。やるべきことは常にあるが、メルボルンまでの短いギャップを乗り切れてうれしいし、レースモードでコースに戻れるのが待ち遠しいよ」

フェラーリのエンジンとギアボックス内部部品を使用しながらも、ギアボックスケーシングとサスペンションは独自設計となる
「このプレシーズンテスト期間は本当に楽しかった」とセルジオ・ペレス


(autosport web)

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