【】130R手前での減速が目立ったF1日本GP。電気出力の割合増加に伴い、速度の落ち幅も顕著に/新時代のF1解説第3回
4月13日
「僕は全開で走っていたよ。でも、130Rの手前でバッテリーが切れるから、自然と減速するんだ」
これは2026年F1第3戦日本GPのレース後に、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が語った言葉だ。
フェルスタッペンの言葉を確認するため、日本GPの車載カメラを確認したところ、ほとんどのマシンが西コースのピット入口付近でリヤウイングのライトが1回点滅し、出口付近で2回点滅していた。1回点滅はMGU-Kによるパワー供給が最大値である350kW未満になった状態を示し、2回点滅はMGU-Kによるパワー供給がゼロの状態を指す。この状態を『クリッピング』または『ディレーティング』と呼び、ライトの点滅は電欠による失速から後続車の追突事故を防ぐ目的がある。

クリッピングという現象そのものは、F1にハイブリッドシステムを搭載したパワーユニットが導入された2014年から存在しており、リヤウイングのライトも同様に点滅していた。ただし、当時のパワーユニットのエンジンと電気の出力割合は80対20だったのに対して、現在は50対50なので、電気パワーを失ったときのパワーダウンが著しく大きい。
鈴鹿はセクター2の終点が西コースのピット出口付近にあり、スピードトラップが130Rを過ぎた地点に設定されている。そのため、西ストレートエンドのセクター2終点よりも、130Rの後にあるスピードトラップ地点のほうが速度が若干落ちる。それでも、2025年の予選ではセクター2終点での最高速はジョージ・ラッセル(メルセデス)の時速306.0kmで、スピードトラップでの最高速はジャック・ドゥーハン(アルピーヌ)の時速299.4kmで、その差は時速5.6kmだった。
それが今年はセクター2終点での最高速はアービッド・リンドブラッド(レーシング・ブルズ)の時速338.4kmで、スピードトラップでの最高速はカルロス・サインツ(ウイリアムズ)の時速291.4kmと時速にして47kmもの差となっていた。ただし、ほとんどのマシンが130Rの手前で同じように電欠していたため、アクシデントは起きなかった。
だが、鈴鹿で電欠していた箇所はほかに何箇所もあった。それは1コーナーを過ぎて2コーナーの手前、逆バンク、デグナー手前、ヘアピン手前、そしてスプーン手前だ。これらの場所では130R手前のようにすべてのマシンが電欠していたわけではなく、電欠していないマシンも混在していた。さらに前車の1秒以内にいれば、後続車はブーストボタンを押して、さらにパワーアップすることも可能で、電欠するマシンと電欠していないマシンの速度差が時速約50kmになる状況となっていた。
そんななかで起きた事故が、フランコ・コラピント(アルピーヌ)をオーバーテイクしようとして、オリバー・ベアマン(ハース)がコースアウトしクラッシュした一件だった。

国際自動車連盟(FIA)は、2026年のF1レギュレーションに対する変更の可能性を議論するための会議を4月9日に開催し、各チームおよびパワーユニットマニュファクチャラーの代表者との協議を行い、引き続き15日、16日、20日にも会合を開く予定となっている。
レギュレーションの制定には、チーム、OEM、パワーユニットマニュファクチャラー、商業権保有者らの協調の精神が不可欠だ。だが、鈴鹿で起きた事故を見る限り、現在のレギュレーションには不備があり、なんらかの対策が必要なことも確かだ。安全性はモータースポーツのルールにとって、常に最重要課題である。そして、それをリードするのは、チームでも、OEMでも、パワーユニットマニュファクチャラーでも、商業権保有者でもなく、FIAだということは忘れてはならない。
(Text : Masahiro Owari)

