2024.10.14

【F速プレミアム】
フェルスタッペンとノリスの緊迫したタイトル争い/スペイン人ライターのF1コラム


(c)XPB Images
 残り6レースとなったF1 2024年シーズン。アップデートが予定されているアメリカGPでレッドブルは果たしてマクラーレンに対抗できるだろうか。スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアがタイトル争いについて語る。
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 私たちは今、なんと奇妙な状況に陥っているのだろう! 9月中旬、F1はシンガポールからオースティンまで、3週間レースが行われない奇妙な休みを迎える。実際カレンダーを見て、パドックの多くの人々がこの決定を批判している。結局のところ、8週の間に最後の6回のレースウイークが開催されることになる。それはちょっとやりすぎではないだろうか?しかし、2024年の終わりが非常に緊迫したものになることは明白だし、私はそれを楽しみにしている。

 もちろん、まず肝心なことは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とランド・ノリス(マクラーレン)のタイトル争いだ。52ポイントの差がついているが、明らかにマクラーレンにはパフォーマンス上のアドバンテージがあり、現時点ではノリスが優位に立っている。しかしその差はまだ大きく、ノリスがシーズン終了までスプリントを含むすべてのレースで優勝し、ファステストラップを記録したとしても、フェルスタッペンが2位である限りは、タイトルを獲得することができない。言い換えれば、ノリスは完璧である必要があり、ライバルが完璧ではないことを望まなければならない。
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 前述したように、こうしたすべての状況は、マクラーレンのパフォーマンスが急上昇したことによって促進された。マクラーレンは今シーズンを通して驚異的な進歩を遂げ、コンストラクターズ選手権を楽々とリードしている。実際、マクラーレンに対してレッドブルが抱えている差(−41ポイント)よりも、レッドブルに対してフェラーリが抱えている差(−34ポイント)の方が小さいのだ。それに加えて、セルジオ・ペレスがシーズンの大半でパフォーマンス不振に陥っているという事実もあり、レッドブルには希望がないように見える。

 何も異常が起こらなければ、マクラーレンがコンストラクターズタイトルを獲得するのは間違いないだろう。一方、ドライバーズ選手権は、それぞれの候補者の運次第で、おそらく最終戦のアブダビで決まることになる。その意味では、レッドブルはすべての兆候がペレスの時代が終わったことを示しているにもかかわらず、彼をチームに残すという決定をしたことを後悔しているのかもしれない。もしかすると、ダニエル・リカルドの方がよい選択だったのだろうか?

 それは決して分からないし、実際、昨シーズンの負傷から復帰して与えられた1年間でリカルドは印象に残る活躍ができず、時間切れとなった。角田裕毅と比較すると、明らかに角田の方が優勢だ。そのためRBは残りの6戦でリアム・ローソンを迎え入れる決定を下した。問題は、このニュージーランドのドライバーに向けた今後の計画が何であるのかということだ。というのも、パドックで飛び交っている最新のうわさでは、ペレスがメキシコでF1からの引退を発表するかもしれないと言われているからだ。

 もしそうなれば、レッドブルでは突然シートが空くことになる。そのシートについては、レッドブル所有のチームからローソンか角田裕毅が有力候補となるだろう。しかし、彼らが代わりに外に目を向けることを選択した場合はどうなるだろうか? バルテリ・ボッタス(キック・ザウバー)は来年の契約がない。そして、カルロス・サインツがウイリアムズとの契約を交渉で解消できたらどうなるだろうか?さらに、そうなったらフランコ・コラピント(ウイリアムズ)は、これまでうまく溶け込んできたチームに留まることも可能になるだろう。

 このアルゼンチン出身のコラピントは、今年の大きなサプライズのひとつだ。FIA F2から直接やって来て、成績不振のローガン・サージェントに代わってウイリアムズのシートに就くのは、決して簡単な仕事ではなかっただろう。しかし、彼はアゼルバイジャンでQ3に進出し、決勝では見事8位につけてF1初ポイントを獲得した。そして最も重要なのは、チームメイトであるアレクサンダー・アルボンとの差がレースごとに驚くほど縮まっていることだ。

 ドライバー市場の面では、解決すべき問題がまだいくつか残っているのは明らかだ。ザウバーには、2025年に向けてまだ空きがあることを忘れてはならない。そしてもちろん、タイトルに向けた戦いがある。その意味では、オースティンでのアメリカGPは極めて重要となるだろう。ほとんどのチームはそこでシーズン最後の大規模なアップグレードを展開するし、場合によってはそれが最後のアップデートとなる。簡単に結論を出すと、COTAで速いということは、残りの5回のレースウイークに向けて非常によい兆候となる可能性もあるということだ。

 一方、レッドブルは現在のタイトル争いの先まで見据える必要がある。過去2シーズンを支配してきたチームは、引き続き主要な人材を失っている。チーフテクニカルオフィサーのエイドリアン・ニューウェイ、スポーティングディレクターのジョナサン・ウィートリーに続き、戦略責任者のウィル・コートネイも去ることになったのだ。

 シーズンの初めにほのめかされた、レッドブルF1代表のクリスチャン・ホーナーとモータースポーツアドバイザーのヘルムート・マルコの権力闘争を思い出さずにはいられない。そしてチームが抱える最大の問題は、メンバーが去り、悪評の暗雲が彼らの頭上に漂っているため、今や誰もそこに移りたがらないということだ。

 もちろん、F1は高度な技術を要するスポーツだが、その根底にはやはり人間的要素が残っている。レッドブルが最高のメンバーを失うだけでなく、新しい才能を引き付ける魅力も失えば、彼らの成功は急速に失われ始めるだろう。

 一方、マクラーレンは現在非常に好調な軌道に乗っている。アストンマーティンがニューウェイの加入と真新しいインフラのおかげで魅力的な環境になっていくように、マクラーレンも新しい人材を引きつけ始めることは間違いないだろう。以前にも言ったが、F1の最も興味深い要素のひとつは、レースはチームの勝敗を左右する要素の一部にすぎないということだ!

 これから6回のレースウイークが控えており、マクラーレンにとっては1998年以来となるコンストラクターズタイトルを勝ち取るだろう。ドライバーズ選手権に関しては……私はまだマックス・フェルスタッペンが首位を守れると考えている。しかし、今シーズンの終わりは非常にエキサイティングなものになるだろう。今年の初めに私が言ったことを覚えているだろうか? これが私たちがモータースポーツを好きな理由だ。何が起こるか分かっていると思うこともあるが、予想外のことは常にあるものだ!

(c)XPB Images

(Alex Garcia/Translation: AKARAG)

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