【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第10回】モンツァでは新品よりも中古タイヤが機能する現象に直面。ペナルティには異論なし
2024年シーズンで9年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄代表。サマーブレイクも明け、シーズンは後半戦に突入した。ヨーロッパラウンドの最後を飾る連戦は、まったく異なる特性を持つオランダ・ザントフォールトとイタリア・モンツァ。どちらもVF-24の得意とするコースではなかったが、イタリアGPではポイントを獲得。その一方で、毎年何度か悩まされるというある現象にも直面した。オランダGP&イタリアGPの週末を小松代表が振り返ります。
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2024年F1第15戦オランダGP
#20 ケビン・マグヌッセン 予選14番手/決勝18位
#27 ニコ・ヒュルケンベルグ 予選13番手/決勝11位
第16戦イタリアGP
#20 ケビン・マグヌッセン 予選13番手/決勝10位
#27 ニコ・ヒュルケンベルグ 予選10番手/決勝17位
サマーブレイク明けのオランダ、イタリアは、特性のまったく異なるサーキットでの連戦になりました。ザントフォールトは最大レベルのダウンフォースが必要になるサーキットで、モンツァはその反対。基本的に、どちらもうちが得意にしているコースかというとそうではありませんが、このふたつの極端な特性のサーキットでそれなりのパフォーマンスを発揮できたことは評価しています。
まずはオランダGPです。レースペースはまあまあよかったのですが、もう少し予選を改善しないといけなかったですね。特にニコはFP1で2回ロックアップして、FP2でクラッシュして、FP3でもコースオフしていたのでちょっと驚きました。もちろん彼がミスをすることはありますが、それでもレース週末を通して大きなミスはしても一度くらいなので、週末の初めからミスが続いて、いろいろなことが後手に回って追いつかなくなってしまったのが反省点です。
クルマ的には予選で1分10秒9くらいのタイムを出せるパフォーマンスがあったのですが、ニコが1分11秒215、ケビンが1分11秒295で14番手、15番手でした(編注:アレクサンダー・アルボンが失格になったため、正式結果はヒュルケンベルグが13番手、マグヌッセンが14番手)。ケビンはパワーユニットのエレメントを変えなければいけなかったのでピットレーンスタートを選びましたが、ニコがタイトな中団勢のなかで13番手から11位に順位を上げたことを考えると、もし予選で想定通りのタイムを出して9〜11番手あたりでスタートできればレースでトップ10に入れる速さはありました。ですからいかに週末をまとめるのが重要かということですね。
その次のイタリアGPではニコがQ3に進みましたが、Q3で新品タイヤがグリップしなかった件についてはまだはっきりとした結論は出ていません。新品タイヤだとうまくいかず中古タイヤの方が機能するという状況は、実は毎年何回かあるんです。今回はQ2の最初に中古タイヤで走った時に、リアルタイムでデータを見ていて、スムーズで明らかに運転しやすい感じが伝わってきました。しかし2回目のランで新タイヤを履いた時はどうも運転しにくそうな感じのデータが出ていました。
Q3でも同じで、最後のランでは最初のシケイン(ターン1、2)の時点で難しいなとわかったくらいです。今年はモンツァの路面が全面改修されて、縁石も変わったし、ターン1、2はシケインの角度も変わっていますが、はっきりとした理由はこのコラムを書いている今の段階ではわかっていません。
路面については、新しい路面ということは週末を通じてどんどん路面の状態が変わってくるので、この変化にうまく対応していくのが鍵になってきます。レースに向けて1ストップになるか2ストップになるかは路面変化によるタイヤの状況次第だと考え、初日からハードタイヤを2セット残しておいたのは正解でした。FP1でミディアムタイヤで走り出した段階でグレイニングが酷かったのですが、路面がよくなっていけばそれも改善されていきます。ただどのくらいの時間をかけてどれ程よくなっていくのかが正確にはわからないので、2ストップも視野に入れて2セット目のハードを残しておかなければいけない状況だったんです。
1ストップか2ストップかわからないからといって、特に難しい状況だとか大変だということでもありません。グレイニングが酷ければ2ストップというだけで、それも10周ほど走ればわかることです。判断の心配はありませんでしたし、実際にレースをミディアムで走り出して、かなり早めの段階でうちは1ストップでいけるというのは明らかで、ケビンは実際にとてもいいペースで1ストップでレース走り切ることができました。
そのケビンですが、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)との接触で10秒ペナルティを受け、またペナルティポイントも12に達したため、次戦アゼルバイジャンGPを欠場することになります。もちろん彼は納得していませんが、僕は受け入れざるを得ないと思っています。ガスリーとの接触はそれほど大きなものではありませんでしたが、それでもぶつかってガスリーをコース外に押し出しているので、ガイドラインに則って判断すれば10秒ペナルティになるからです。だから僕はこのスチュワートの判断には納得していますし、今後のレースでも一貫性を持って裁定を下してほしいと思います。問題なのは今回のスチュワートの判断というよりもガイドラインそのもので、これは見直す必要があると思います。
ケビンのドライビングスタイルはストリートサーキットに合っているので、バクーでの欠場は非常に残念ですが、出場停止はイタリアGPでの一件だけで決まったわけでなくて、これまでの積み重ねがあってのものです。ペナルティを受けて出場停止になることもお互いにわかっていたので、この件については特にケビンとは事実確認の話以外はしていません。
また9月6日(金)に発表したとおり、アゼルバイジャンGPではケビンの代役としてオリーを起用します。来年彼はハースのドライバーになるので、その前にこのクルマでチャンスを与えられるのは怪我の功名だと考えています。ニコはケビンほどストリートサーキットが得意というわけではありませんが、オリーがニコと比べてどこまでやれるのか、特にニコが得意とする予選でどれくらいついていけるのか楽しみです。