2012.12.25

【今宮純のアフターザレース】
[2012年総括5大ニュース]第2弾“ベストバージョン”


 前回に続き2012年総括として“グッドニュース”をセレクト。見ごたえあるレースが感動のシーズンを彩る──まさにそのとおりの年、5つに絞るのが難しいほど話題豊富だった。

(c)LAT
【1】ベスト・ドライバーにはアロンソを選びたい。ニューF2012を2月9日へレス合同テストで初ドライブした彼は、トップから2.8秒落ちに愕然となった。この“駄馬”ではとうてい戦えない、あきらめて来季の“駿馬”に期待するしかない、そこまで追い込まれていた。
 開幕戦で予選12位に沈んだフェラーリのピット、お通夜みたいな重たい雰囲気を思い出す。珍しくスピンするほど限界域を超えたアタックもトロロッソ勢以下(!)。見ていて加速時でさえリヤがまったく不安定な挙動は、前途多難どころか獄門を彷徨うフェラーリそのもの。
 だがこの“メルボルン地獄”からアロンソはコース上ばかりか、エースドライバーとしてチームを結束させる言葉力をコース外でも発揮。奇跡は自らの努力で起こすもの、運を引き寄せるのも実力だ。第2戦マレーシアGP優勝以降の“カリスマ・レース”の数々、ドライバーズ・ゲームの連続でアロンソ以外の誰ができたか。
 本人も自己最高シーズンと言い、他チーム関係者も(レッドブル以外)彼を最強と認める。自分もそのひとりだ。

(c)Redbull
【2】チームとともに「ダブルV3」を達成したベッテルも正当に評価しよう。2012年『マン・オブ・ザ・イヤー』として後々まで語りつがれる伝説をいま造りつつある。
 無欲で獲れたV1、独走できたV2、しかしV3はまったく違った。前半戦、切れ味を欠いたコーナリングに彼の苦悩が如実に表れ、A・ニューウェイもうつむくばかり……。
 後半戦シンガポールGPからの4連勝はダイナミック・ダウンフォースの進化と、ベッテル走法が戻ったから。序盤は巧く乗りこなして2勝したウェーバーも後半は2位1回、アクセル全開率で敵わず率直に「セブはスゴイ」と認めた。
 ニューウェイとチームメイト・ライバルのウェーバーの存在があってこそ、彼らはダブルV3にこぎつけたと思う。

(c)LAT
【3】春の嵐さながらに、バトン、アロンソ、ロズベルグ(103人目グランプリ勝者)、ベッテル、マルドナド(104人目)、ウェーバー、ハミルトンと“開幕7戦7人ウイナー物語”が続いた。そして終盤はベッテル、ライコネン、ハミルトン、バトンと4人ウイナーが出て閉幕。勝者は8人(6チーム)、彼ら以外に5人のラップリーダーが現れ、稀に見る激戦展開だった。来年以降、しばらくないかもしれない……。

(c)LAT
【4】真夏のサンパウロで見るXマスツリー、史上初の全20戦ロング・シーズン。ブラジルGP日曜には豪雨注意報が出ていて、長靴を買いにショッピングモールに行くと雪飾りの“カマクラ”で遊ぶ子供たちがいた。
 11月末最終戦ブラジルGPはそんな季節感のなか、ウエットレース決戦に。だが豪雨ではない微妙なコンディション、スタート直前グリッドにいて雨粒に気付いた。
「荒れるぞ絶対」。オーバーテイクおよそ150回のゲームは空模様との戦いと化した。そして霧雨のなかセーフティカー・ゴール状態で静々と徐行しながらの結末、こういう終わり方もあるのだ。ベストレースを全20戦の最後、ブラジルGPとする──。


【5】けじめとして小林可夢偉の「自己ベスト更新」を取り上げる。12月17日までグロージャンとシートを争った末、我々の国力及ばずに孤軍奮闘してきた日本人ドライバーは“落選”した。
 インテルラゴスではメキシコ人(ペレス関係)、ドイツ人(ヒュルケンベルグ)、イタリア人(フェラーリ)のジャーナリストから頻繁に声をかけられた。皆カムイを惜しんでいた。自己ベスト記録をすべて更新、予選フロントロー、3位表彰台、最速ラップ樹立、60戦中27回入賞、これらの記録だけでなく内外ファンの記憶に残るレースを演じた最高のジャパニーズ。
 夢の続きをかなえるためにロータスとの関係を保ちつつ(水面下で)、14年はいくつかのレギュラーシートが空くと予測されるので今から備えて欲しい。ライコネンは2年の“ブランク”の後に戻っているのだから──。

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