【F1第4戦ベスト5ドライバー】セナを超える衝撃/アルゼンチン期待の星がキャリアベスト/リーダーシップでチーム復調に貢献
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、各グランプリウイークエンドのドライバーたちの戦いを詳細にチェックし、独自の評価によりベスト5のドライバーを選出する。今回は2026年第4戦マイアミGPの戦いを振り返った。
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アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス):スプリント予選2番手/スプリント6位/予選1番手/決勝1位

メルセデスの若き逸材アンドレア・キミ・アントネッリは、記録を塗り替え続けると同時に、かつてのアイルトン・セナ、ミハエル・シューマッハー、マックス・フェルスタッペンですら自らの時代に見せなかったほどの衝撃をF1界にもたらし続けている。確かにメルセデスW17は現時点で最も競争力のあるマシンであるが、ジョージ・ラッセルのパフォーマンスが示しているように、安定して勝つためには、その性能を最大限に引き出す必要がある。
マイアミでマクラーレンがメルセデスの支配に本格的な挑戦を仕掛けた時、メルセデスを勝利へと導いたのはアントネッリだった。見事なラップでポールポジションを獲得し、オープニングラップで後退した後に巻き返して勝利を手にした。一方、はるかに経験豊富なチームメイトは精彩を欠いた。セーフティカー終了後の46周における両者の差は、実に43秒に達し、今回のチーム内の力関係を如実に物語っている。
3連勝を挙げたアントネッリだが、そのなかで今回の勝利が最も困難だった。スタートで出遅れた後、先頭に返り咲かなければならず、その後も、30周にわたって2秒以内に迫るワールドチャンピオンを背後に抱えながら走らなければならなかったが、アントネッリは、その間、一切ミスを犯さなかった。見事なパフォーマンスであり、ライバルたちにとっては不吉なメッセージでもある。経験を積むことでアントネッリはさらに強くなるだろう。
ランド・ノリス(マクラーレン):スプリント予選1番手/スプリント1位/予選4番手/決勝2位

常に得意としてきたマイアミのコースで、ワールドチャンピオン、ランド・ノリスは、マクラーレンの反撃を牽引し、実に印象的な走りを見せた。そして2026年シーズンにおいて初めてメルセデスを打ち破ったドライバーとなった。確かにそれはスプリントレースであったが、それまでメルセデスは序盤の3戦のグランプリに加え中国スプリントも制しており、無敗を誇っていた。しかもノリスは棚ぼたではなく、ポールポジションからスタートし、19周を完全に支配して勝利したのである。
しかし決勝に向けたセットアップ変更でメルセデスが立て直すと、予選ではアントネッリが圧倒的な速さを見せた一方、ノリスは4番手に沈み、予選での優位性を失ったことを認めた。それでも決勝スタート直後の1コーナーでトラブルを避け、序盤のシャルル・ルクレールとアントネッリの争いを突いてアントネッリをかわすと、有利な位置につけた。さらにセーフティカー後に優れたペースを発揮して首位に立った。
軽い雨による“フリーピットストップ”を誰もが待った後、ノリスはメルセデスのアンダーカットに屈した。アウトラップでわずかにアントネッリの前に出たものの、冷えたタイヤの状態ではライバルを抑えきれなかったのだ。
その後もノリスはチェッカーフラッグまで全力でプッシュし、残り4周でタイヤが限界を迎えるまでアントネッリにプレッシャーをかけ続けた。勝利のためにできるすべてをやり切り、完全には報われなかったものの、素晴らしいパフォーマンスだった。
フランコ・コラピント(アルピーヌ):スプリント予選8番手/スプリント10位/予選8番手/決勝7位

まさに“民衆の力”である。デモ走行を一目見ようとブエノスアイレスの街に繰り出した60万人のファン、さらにサーキットに駆けつけた数千人のアルゼンチン人たちの熱狂的な応援に後押しされ、フランコ・コラピントはF1キャリア最高のパフォーマンスを披露した。そしてアルピーヌに貴重な6ポイントをもたらし、コンストラクターズランキングでハースの上に立つことに貢献した。
新型リヤウイングが1基しかなく、それがピエール・ガスリーに割り当てられたことは、結果的にコラピントにとって幸運だったかもしれない。チームは新ウイングの効果を十分に引き出せなかったからだ。低グリップ路面という、彼の才能が生きる条件の中で、コラピントは週末を通してチームメイトよりも速かった。
スプリントでは、スタートで不運に見舞われトップ8圏外に落ちた。しかし決勝では見事に挽回した。オープニングラップでのルイス・ハミルトンとの不要な接触が唯一のミスで、その後は“ベスト・オブ・ザ・レスト”として他を寄せ付けない走りを見せた。さらにルクレールのペナルティもあって、キャリア最高の7位を獲得。コラピントはこの勢いを維持し、今後ガスリーに強いプレッシャーをかけ続けることになるかもしれない。
カルロス・サインツ(ウイリアムズ):スプリント予選14番手/スプリント13位/予選13番手/決勝9位

ジェームズ・ボウルズ代表がカルロス・サインツをウイリアムズに迎え入れるために約1年を費やしたのは、単なる速いドライバー以上の価値を見込んでいたからだ。サインツは父親同様、チームを導くことができるドライバーであり、F1におけるあるべき姿への理解が極めて深く、必要とあれば惜しみなく努力を注ぐ。
ウイリアムズはグリッドで最も重いマシンを抱え(しかも大差で)、その他の面でも多くの弱点に悩まされている。それでもサインツのリーダーシップのもと、マイアミでは改善を見出し、2台ともQ2進出を果たし、その後、ポイント圏内でフィニッシュした。
決勝では序盤、アレクサンダー・アルボンとサインツは激しくもクリーンに争ったが、ハードタイヤではサインツが優位に立ち、そのまま引き離した。最終的にはチームメイトに約9秒差をつけての9位。現状のウイリアムズにとって十分に誇れる結果だ。
オスカー・ピアストリ(マクラーレン):スプリント予選3番手/スプリント2位/予選7番手/決勝3位

シーズン最終盤に差を生むのは、苦しい週末にどれだけポイントを持ち帰ったかである。オスカー・ピアストリはマイアミの週末を通して純粋な速さの面でノリスにかなわなかったが、貴重な22ポイントを稼いだ。
予選Q1では16番手という厳しい状況で辛うじて通過し、その後、巻き返したものの、常にチームメイトより遅れをとっていた。スプリントでは終盤のルクレールの猛追をしのいで2位に入ったが、決勝のスタートも楽ではなかった。
さらにフロントランナーの中で最後にタイヤ交換をしたことで、タイムを失ったが、レース終盤23周でラッセル、フェルスタッペン、ルクレールを次々に攻略した。ハードタイヤではミディアムよりもノリスに近いペースを見せ、それがポジションを押し上げる力となり、重要な表彰台フィニッシュへとつながった。