ピレリは2029年以降のタイヤ供給にも関心。F1のための開発は市販車製品にも活きると元現場責任者が語る
F1にタイヤを供給するピレリは、契約をさらに1年間延長するオプションを行使し、2028年末までの契約を確保するとともに、来年FIAが実施する2029年から2031年までのタイヤ供給に関する入札にも参加する予定だ。これは、2月末までピレリのレーシングディレクターを務め、7月1日よりイタリア自動車クラブ(ACI)のスポーツ部門のゼネラルディレクターに就任するマリオ・イゾラが、スイスのウェブサイト『スピードウィーク』のインタビューで最近示唆した内容だ。
F1では、ピレリがなぜF1の唯一のタイヤサプライヤーであろうとするのかという疑問がよく聞かれる。タイヤメーカーがメディアやファンの注目を集めるのは、彼らにとって物事がうまくいかない時ばかりになりがちだ。タイヤの選択が適切で、レースが順調に進んでいる時は、レポートや解説のなかでピレリの名前に言及しているところを見つけるのは難しい。しかしデグラデーション(タイヤのささくれ摩耗)が激しかったり、パンクなどの問題が起きると、ピレリはたちまち見出しを飾ることになる。
イゾラは、「タイヤについてポジティブな情報発信をするのは確かに難しい」と認めたが、その一方で「舞台裏での取り組みに関する情報を共有することで、それが可能になる」と主張した。

またタイヤサプライヤーとしてのピレリの戦略について、イゾラは「2011年にF1に参戦した時、スリックタイヤのコンパウンドは2種類しかなかったので、チームは多様な戦略を追求できず、タイヤへの関心を持つことができなかった」と振り返った。
「我々はタイヤの活用についてよりよい方法を見つけるためにチームとFIAと協力し、現在は3種類のコンパウンドを提供している。ピットストップの回数に応じて戦略的な選択も可能だ。これは観客にとってより興味深く、また複数の色を使うことでタイヤのコンパウンドが一目でわかるので、理解もしやすい。ソフトタイヤは赤、ミディアムタイヤは黄色、ハードタイヤは白というふうに判別できる」
ピレリのコミュニケーション戦略には、レーシング製品の改良を続けるために必要なプロセスに、ファンを巻き込むことが含まれている。これについてイゾラは、「配合や構造に関しては企業秘密が含まれるため、すべてを伝えることはできない。しかし最先端技術の開発に携わっていることをみなさんに理解してもらいたい。そうすればF1タイヤの開発がいかに困難であるかを伝えられるし、もう一度ポジティブなイメージを構築できる。簡単なことではないが、不可能ではない」と述べた。

さらにイゾラは、F1向けの新製品の開発は、ピレリが市販車向けに供給するタイヤにもすぐに影響を与えると明かした。
「我々はデジタルツインを活用している。つまり、バーチャル上でのプロトタイプと実物のプロトタイプを並行して開発しているということだ。自動車メーカーから車両の仮想モデルを提供してもらっているので、我々は開発を加速させ、それと同時に実物のプロトタイプの製作数を減らすことで、より持続可能な開発を実現できる」
「これはF1で学んだことだ。最高峰クラスのマシンには多くのセンサーが搭載されており、そこからテレメトリーデータが得られるので、最初のバーチャルモデルはF1で利用できるようになった」
「この研究結果は市販タイヤの開発にも活用できるし、バーチャルモデルもそれに合わせて調整できる。なぜなら、たとえばタイヤが発する騒音といった、サーキットほど重要ではない市販タイヤの要求が存在するからだ」