F1史に刻まれたワーストレギュレーション(1)ハイテク禁止&給油解禁/イモラ事故後の安全対策/溝付きタイヤ義務付け
2026年にF1は、バトルを増やし、環境負荷を低減することなどを主目的に、レギュレーションを一新、新世代マシンを導入した。3戦を消化した段階での評価には、エネルギーマネジメントの重要性が高まったことで、予選でも全力でプッシュできない、バトルが人工的、速度差が大きくなり危険が生じるなどの批判的な声も多々あり、第4戦からの規則修正も決まった。
今年のレギュレーションはまだ初期段階であり、確定的な評価は下せない。だが、F1の歴史のなかでは、後年に振り返っても否定的な見方をされるレギュレーションやマシンがいくつかある。今回の特集では、そういうレギュレーションとマシンに焦点を当て、ベテランF1ジャーナリストの柴田久仁夫氏と尾張正博氏に、1999年以前、2000年以降に分けて、ワーストレギュレーションおよびワーストマシンを3つずつ選んでもらった。
今回は柴田氏によるワーストF1レギュレーション3選を紹介する。
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以下に挙げるF1ワースト規約3選はいずれも、マックス・モズレーがFIA(国際自動車連盟)会長を務めていた当時に導入されたものだ。
1)ハイテク装備の禁止と給油解禁(1994年)
2)イモラ事故後の場当たり的緊急安全対策(1994年)
3)グルーブドタイヤの義務付け(1998年)
モズレー会長は1993年の就任以来、「安全性向上」と「コスト削減」に熱心だった。しかし一方で「レースが面白くない」と批判されると、安全とは矛盾する対応策を打ち出すなど、必ずしも方針は首尾一貫したものではなかった。

これは就任まもないモズレー会長が満を持して打ち出した施策だった。F1は前年まで、アクティブサスペンションやトラクションコントロールなどのハイテク装備が全面的に許され、コーナリングスピードが危険なほどに高くなっていた。走行中に突然システムダウンした際の事故の危険性も指摘されていた。
何らかの歯止めをかけることには、誰も異論はなかった。ところが禁止が決まったのは、前年1993年のシーズン中盤。ほとんどのチームは、ハイテク装備搭載を前提に新車開発を進めていた。その結果、著しく挙動が不安定になったマシンが続出。この年のサンマリノGPではルーベンス・バリチェロの大クラッシュ、アイルトン・セナ、ローランド・ラッツェンバーガーの死亡事故が発生している。
一方の給油解禁に関しても、懸念された通り、ベネトンピットでの給油作業中に出火事故が起き、ピットクルーとマックス・フェルスタッペンの父ヨスが火傷を負った。



イモラの悲劇を受けて、安全対策が導入されたが、これは場当たり的かつ完全に冷静さを欠いた措置だった。最たるものが、スペインGP直前に急遽決まった、車体に関する規約変更だった。コーナリング速度を下げるため、フロントウイングの地上高を上げること、ディフューザーを縮めることなどを義務付けた。しかし急場の改造マシンをテストしたロータスは、リヤウイングが脱落。GP予選でも大クラッシュが起き、いずれもドライバーが大怪我を負った。

これは、コーナリング速度抑制のために、モズレー会長が出した指示だった。溝付きにすれば接地面積が減り、グリップが低減するはずという目論見だった。しかしタイヤ性能は年々向上し、逆に直線スピードは想定以上に上がってしまった。見た目も美しくない溝付きタイヤを使い続ける意味はもはやなくなり、2008年シーズンを最後にF1から姿を消した。