アストンマーティンの要請でコンパクトに。“チラ見せ”から見えてきたRA626Hの素性/F1 Topic
1月20日、都内で開催された『2026 Honda × Aston Martin Aramco Formula One Teamニューパートナーシップ始動発表会』では、記者会見とともにもうひとつ注目が集まったものがある。それはホンダが2026年より新たなワークスパートナーシップを組むアストンマーティンに供給する、新規定下で設計・開発された新型パワーユニット『RA626H』だ。
新パワーユニットに関しては、1月9日に東京オートサロンで行われたプレスカンファレンスにおいて、シルエットとサウンドが公開されていたが、実物はこれが世界初公開だった。
特徴的だったのは、内燃機関(ICE)の前方に鎮座しているオレンジ色の四角い物体が2段になっていることだ。このオレンジ色の箱はバッテリー(エナジーストア=ES)と、パワーユニットの制御を司る電子デバイスであるコントロールエレクトロニクス(CE)だ。昨年まではこのふたつが前後にレイアウトされて1段だった。


それがなぜ2段になったのか。開発責任者である角田哲史ラージ・プロジェクト・リーダー(LPL)によれば、チームからの要求があったと明かした。
「新車の開発を進めていくなかで、チームから『とにかくコンパクトしたい。できるだけ(全長を)短くしたい』という要求があり、2段組にしました」
2026年のF1はパワーユニットだけでなく、車体に関するレギュレーションも大きく変更され、車の長さを決定づけるホイールベースが2025年から200mm短縮され、最大3400mmとなり、車体全長が大幅に短くなる。これに併せてホイールベースを構成するパワーユニットの全長も短くなるのは、当然の流れだろう。
角田LPLは明言しなかったが、1段目がESで2段目がCEだろう。
変更されたのはレイアウトだけではない。ESの中身も大きく変更されている。というのも、2026年のF1のパワーユニットは、扱う電気エネルギー量が昨年までの約3倍に増大するからだ。
「バッテリーの見た目は、昨年からそれほど変わりませんが、中身に関してはまったく新しいバッテリーを作りました。これによって、ある程度、競争力に貢献してくれるのではないかと思います」
現在のF1のバッテリーはリチウムイオンバッテリーで電解質が液体だ。これに対して、その電解質が固体であるのが全固体電池。そのバッテリーに関しては、ホンダは電気自動車搭載用に全固体電池を開発し、2020年代後半のモデルに採用できるよう研究を加速させていることを公言している。そのため、F1のバッテリーにも全固体電池を採用しているのではないかという噂がある。
しかし、角田LPLは「今の時点ではそれはないです」と、2026年用のパワーユニットであるRA626Hに全固体電池を採用していることは否定した。しかし、「今の時点では」と前置きしているように、将来的に採用することまでは否定しなかった。なぜなら、全固体電池は熱による環境変化が少ないため、軽量コンパクトに設計でき、レスポンスもよく、急速充電も可能になると言われているからだ。可変圧縮比開発で後れをとっているとも言われるホンダがライバルに追いつき、追い越すには全固体電池の投入が鍵となるだけに、今後に動向に注目したい。
2段になったESとCEとともに、もうひとつ目を惹くのがICEの上部にある2本の角のような存在だ。角田LPLは、次のように説明した。
「今年から最大過給圧が設定され、FIAがそれを監視するために全車共通のFIAのブーストセンサーを取り付けなければなりません。それを展示用としてわかりやすくあの場所に置きました」
角田LPLの説明によって、おぼろげながらもRA626Hの素性は見えてきた。ただし、始動発表会で展示されたパワーユニットは「まだ最終仕様ではありません」と角田LPLは語った。さらに、展示用スペースと記者席の間にはパーテーションロープが張られ、限られた角度でしか見ることができず、記者会見終了とともにすぐに幕がかけられた。見せたくない部分にRA626Hの知られたくない本性が隠れているのかもしれない。
