2025年F1第20戦メキシコシティGP オリバー・ベアマン(ハース)

【】「ノーズが前に出ていたから、行くしかないと思った」新たなスターの登場を思わせるベアマンの好走【ルーキー・フォーカス】

11月6日

 2025年F1第20戦メキシコシティGPのルーキーのなかで最も輝いたのは、オリバー・ベアマン(ハース)だろう。ベアマンの活躍はルーキー勢のみならず、F1に参戦している20名のなかでも秀でたものだったことは、メキシコシティGPのドライバー・オブ・ザ・デーを、2位のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の14.5%を抑えて41.3%の得票率で獲得していることからもわかる。

 土曜日の予選で10番手だったベアマンは、予選7番手のカルロス・サインツ(ウイリアムズ)が前戦アメリカGPで科せられたペナルティによって5グリッド降格したため、日曜日のレースを9番手からスタートした。

 スタート直後に6番手にジャンプアップしたベアマンの快進撃は、それだけでは終わらなかった。6周目の1コーナーから始まった3番手のルイス・ハミルトン(フェラーリ)と4番手のフェルスタッペンのバトルが4コーナーまでもつれて集団が乱れると、ベアマンはそのチャンスを活かして、前を走るジョージ・ラッセル(メルセデス)だけでなく、フェルスタッペンの前に出ることにも成功し、4番手に浮上した。

【ルーキー・フォーカス】
2025年F1第20戦メキシコシティGP 上位勢のバトルの隙をついて、4番手に上がったオリバー・ベアマン(ハース)

 その瞬間をベアマンはこう振り返る。

「あのときは正直に言うと、前の状況が全部見えていたから安全に行こうと考えていた。でもマックスとサイド・バイ・サイドになったとき、僕のノーズのほうが前に出ていたから、行くしかないと思った。ちょっと怖かったけどね」

 ベアマンが4番手を走行できたのは、上位勢に混乱があったからだけではなかった。その後、ベアマンはフェルスタッペンを寄せ付けず、4番手の座をキープ。この好走によってベアマンはその後、上位勢と表彰台争いを展開していくことになる。

 3番手を走行していたハミルトンがフェルスタッペンとのバトル時に違反を犯して10秒ペナルティを科せられたことで、ベアマンは3番手に浮上した。ベアマンを抜けない後続がアンダーカットを狙って2度目のピットストップを行ってきたため、ベアマンも48周目にピットイン。その間に、1ストップ作戦だったフェルスタッペンに3番手の座は明け渡すことになったが、ベアマンはラッセルやオスカー・ピアストリ(マクラーレン)からのプレッシャーにひるむことなく、4位でフィニッシュした。

「運も味方したかもしれないけど、スピードがなければ、この位置はキープできない。僕たちは実力で4位を獲得したんだ。このチームを誇りに思う」

 ベアマンはそう言って、F1での自己最高位となる4位を喜んだ。

【ルーキー・フォーカス】
2025年F1第20戦メキシコシティGP ハースのオリバー・ベアマンは4位、エステバン・オコンは9位に入賞した

 そのベアマンの才能を早くから評価していたのが、小松礼雄代表だ。小松代表はベアマンがハースからフリー走行に出走した2年前のメキシコシティGPのことをこう振り返り、いかに成長しているかを語った。

「初めてこのチームで走ったときオリー(ベアマンの愛称)はまだ18歳でした。彼は非常に成熟した考えを持っていて、チームが必要とするものを理解していました。18歳だなんて信じられないくらいしっかりしていました。その後、彼は驚くほど多くのことを早く学び、2年経ったいま、彼はあらゆる面で成長を遂げました。たとえば、バクーではオリーはFP1からFP3まで驚異的な速さを見せていたんです。でも、Q2で限界をわずかに超え、悪い結果に終わりました。それでも、彼はそこから学び、シンガポールでは見事にまとめ上げました。オースティンでは多少の波はありましたが、全体として予選は非常によかったです。レースごとに驚異的な進歩を見せています」

 ベアマンのメキシコシティGPでの4位は、F1に新たなスターが誕生した瞬間だったのかもしれない。



(Text : Masahiro Owari)