“ピアストリの復調”が左右するマクラーレンのチームオーダー問題とノリスの援護【トップチーム密着】
2025年F1第20戦メキシコシティGPで、マクラーレンが5戦ぶりに表彰台の頂点に立った。夏休み明け初戦となった第15戦オランダGPでオスカー・ピアストリが優勝して以降、勝利から遠ざかっていたマクラーレン。そのオランダGPでは104点まで開いていたドライバーズ選手権首位のピアストリと3位のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の差はその後、レッドブルの復調とともに徐々に縮まり、スプリントとレースを完全制覇した前戦アメリカGP終了時点では40点となっていた。
メキシコシティGPでの勝利でレッドブルの勢いをひとまず止めることに成功したマクラーレンだが、この勝利によって別の問題が浮上した。というのも、メキシコシティGPで優勝したのはドライバーズ選手権リーダーのピアストリではなく、チームメイトのランド・ノリスだったからだ。第5戦サウジアラビアGP以来、ランキングトップの座を守り続けてきたピアストリがメキシコシティGPで5位に終わったため、リーダーがピアストリからノリスに交代した。

しかも、ノリスとピアストリの差は、わずか1点。以前から「数字上チャンスがある限り、どちらかのドライバーを犠牲にするチームオーダーは出さない」と、マクラーレンのアンドレア・ステラ代表は公言している。メキシコシティGPで1点差となったことで、チームオーダーを出す可能性は極めて低くなったようだ。
ただし、もしも3人の差が25点以内で最終戦を迎えた場合は、判断は難しくなる。1986年、2007年と最近の最終戦にもつれ込んだ三つ巴ではチームメイト同士を自由に戦わせたチーム(1986年はウイリアムズ、2007年はマクラーレン)は、いずれもライバルに逆転され、チャンピオンを明け渡しているからだ。
もうひとつの問題は、ノリスは復調したが、ピアストリの調子がいまひとつで、前半戦のような勢いが感じられないことだ。たとえば、ピアストリが最終戦までに25点以上の差をノリスにつけられた場合、マクラーレンはチームオーダーを出す理由ができる。ただし、そのような状況となるには、第21戦サンパウロGPから第23戦カタールGPまでピアストリはノリスから大きく遅れをとるような順位に終わるレースが続くことを意味する。つまり、ノリスとフェルスタッペンの間に入るだけの速さがピアストリにはなく、チームオーダーを出してもチームメイトを援護するだけの期待ができない。
ステラ代表が「空気が薄いメキシコシティの低グリップの特別なコンディションが、マシンを滑らせて走ることを苦にしないランドに合っていたためで、オスカーもメキシコシティGPでさまざまなことを学び、自信を持って残りのレースに臨めると思う」と、復調に期待を寄せるのは、ピアストリが復調しなければ、タイトル候補から脱落するだけでなく、ノリスを援護するだけの力もなくなってしまうことを恐れているのかもしれない。

一方、チャンピオンを防衛するには勝ち続けるしかないフェルスタッペンは3位に終わった。ただし、リーダーが交代したことで、フェルスタッペンとリーダーとの差はアメリカGP終了時点の40点から36点と、さらに縮まった。
レッドブルのローラン・メキース代表は、残り4戦に向けて「5戦前もチャンピオンシップを意識していなかったし、オースティンの前もそうだった。そして、メキシコシティGPで3位に終わっても、アプローチを変えるつもりはない」と語り、チャンピオンシップを意識するより、マシンからパフォーマンスを100%引き出すことに集中している。
すでに2026年の開発に軸足を移しているマクラーレンがメキシコシティGPに新しいパーツを持ち込んでいなかったのに対して、レッドブルはトップチーム中、最多となる4つのアップデートパーツを投入。
残り4戦。レッドブルが36点差をひっくり返すには、マクラーレンがどうなるかは関係なく、自力で4連勝するしか道はない。
