「我々は急いでいない」ラインアップ決定を遅らせたメキース代表。レッドブルの主導権争いにも変化【代表のコメント裏事情】
当初、「F1メキシコシティGP後に決定する」と言われていたレッドブルの2026年のドライバーラインアップ。しかし、第20戦メキシコシティGPのレース後に行われたレッドブルのローラン・メキース代表の記者会見で、代表は「決断まで、もう少し時間をかけたい」と語り、決定が延期されたことが明らかになった。
その会見でメキースは延期された理由をこう説明した。
「最終決定について、みなさんが早く知りたがっていることは承知しているが、私が何度も申し上げてきたように、我々は急いでいない。(角田)裕毅は着実に前進していて、他の若手も同様に前進している。だから、決断を急ぐ理由はない。もう少し時間をかけるつもりだ。必要な時間はすべて取る。そして彼らには、トラック上でできる限りの機会を与え、誰が最高かを証明してもらいたい」
じつはメキースはチーム代表になった当初、ドライバー選考に関しては「それは私の仕事でない」と、レッドブルのドライバーを育成してきたヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)の役割だという意味の発言をしていた。

ところが夏休み明け以降、メキースの2026年のドライバーに関する発言にも変化が出てきた。
「裕毅はよくやっている。だから、時間を与えたい」
一方で、アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)を評価しているマルコは直前の第19戦アメリカGPまで、「何も変わらない。メキシコシティGPの後に決定する」と言い続けてきた。
そんななかで、先送りとなった2026年のラインアップ。これは単に決定が延期されたというだけでなく、レッドブル内部の権力争いに変化が起きていることを示唆している。
かつてレッドブルのドライバー人事は、レッドブルのドライバーを育成してきたマルコの専権事項だった。しかし、ニック・デ・フリースを起用したことが裏目に出てから、影響力に翳りが見え始めていた。
そこに加入してきたメキース。当初は突如チームを去ることとなったクリスチャン・ホーナーの代役として、メキースの役割は限定的なものと考えれていた。しかし、メキースの改革によってマシンのパフォーマンスが向上すると、メキースの手腕が評価され、影響力を持つようになる。

今回のドライバーラインアップの決定延期は、コンストラクターズ選手権の2位争いをフェラーリ、メルセデスと繰り広げているレッドブルが、角田のモチベーションを維持するためだという見方もある。
その一方で、この方針転向は単にドライバー選考が先送りになったということだけでなく、レッドブル内部の主導権争いにも変化が生じていることを示唆している可能性も考えられるという点で、非常に興味深い発表でもあった。
