2025.11.03

【角田裕毅を海外F1解説者が斬る】フェルスタッペンとの差を縮め、結果以上の内容だったメキシコ。朗報を招き寄せられるか


2025年F1第20戦メキシコシティGP 角田裕毅(レッドブル)
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 F1での5年目に突入した角田裕毅は、2025年第3戦からレッドブル・レーシングのドライバーとして新たなチャレンジをスタートした。元ドライバーでその後コメンテーターとしても活躍したハービー・ジョンストン氏が、角田の戦いについて考察する。今回はメキシコシティGPの週末を中心に振り返る。

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 実は先週末、私はメキシコシティまで出かけてきた。そして、我らが角田裕毅にとって非常に心強いデータと最新ニュースを持ち帰ってきたのだ。

「いやいや。角田はQ3にも進めず、ポイント圏外でフィニッシュしたじゃないか。何を言っているんだ、ハービー?」と皆さんは言うかもしれない。では、説明させてもらおう。

角田裕毅(レッドブル)
2025年F1第20戦メキシコGP 角田裕毅(レッドブル)

 まず、裕毅の1ラップペースからだ。金曜日は彼にとってはテストデーのようなものだった。マックス・フェルスタッペンがFP1を走らなかったため、裕毅がハードタイヤ(このタイヤはこのサーキットには遅すぎた)でのロングランを担当することになった。マックスのマシンに乗ったルーキーのアービッド・リンドブラッドは、路面コンディションが良いセッション終盤に、ソフトタイヤでプッシュすることを許され、そのタイムが注目を浴びていたが。

 マックスは走り出すとすぐにペースをつかみ、FP2で最速タイムを記録した。だが角田も立派なもので、チームメイトから約0.5秒遅れの7番手タイムをマークした。彼はタイヤマネジメントを優先して、より保守的なセットアップを選んでいたため、1ラップペースでは当然ながら代償を払っていた。

 フェルスタッペンがFP3でレース向けのセットアップに変更すると、両者のタイム差はわずか0.173秒だった。もしこれが角田の燃料搭載量が軽かったからだと思うなら、それは違うと、予選Q1を見れば分かるだろう。Q1では、4度のワールドチャンピオンと我らが角田との差は0.158秒だったのだ。確かに、裕毅は新品ソフトタイヤを2セット使い、フェルスタッペンは同じセットを2回使用したが、タイム差は大きくなかった。

 結果的に角田はQ2で11番手タイムに終わった。しかしQ2でマックスとの差がどれくらいだったかというと、わずか0.211秒だ。マックスと同じマシンに乗ってこれほど彼に近づいたドライバーが存在したのは、約2年ぶりだ。こうしたことを考えると、裕毅は土曜日に良いパフォーマンスを見せられなかったという考えは正しくないだろう。

「とはいえハービー、マックスは表彰台に上がり、裕毅は11位でフィニッシュ、しかもほぼ50秒遅れだったじゃないか。それはさすがに良いパフォーマンスとは言えないんじゃないか?」という意見はあるだろう。それでは再び数字を見てみよう。

角田裕毅(レッドブル)とオスカー・ピアストリ(マクラーレン)
2025年F1第20戦メキシコシティGP 角田裕毅(レッドブル)とオスカー・ピアストリ(マクラーレン)

 ふたりともミディアムタイヤでスタートし、マックスはターン1と2を完全に無視して4番手をキープした。裕毅はコース上でオスカー・ピアストリとアイザック・ハジャーの前に出て、8番手に上がった。

 10周目の時点で角田はフェルスタッペンから3.58秒差、重要なのは後方にピアストリをきっちり抑えていたことだ。やがてピアストリに抜かれ、20周目にマックスと角田の差は10.522秒に広がっていた。つまり、1周あたり約0.5秒だ。そこから先は、ふたりのタイムは大きくは違わなかった。30周目にはどちらのタイヤもかなり消耗しており、フェルスタッペンのリードは12.946秒。角田に対して10周で稼いだ差はわずか2.424秒だった。

 レッドブルが角田の最善の利益を考えていたなら、この時こそ、彼をピットインさせるべきタイミングだった。しかしチームは、フェルスタッペンのレースを助けるため、オリバー・ベアマン、アンドレア・キミ・アントネッリ、ジョージ・ラッセル、ピアストリ、ルイス・ハミルトンを遅らせる役割に角田を使った。その結果、角田はわずか5周で6秒以上を失った。その上、ピットストップの作業が遅れ、ここで約9秒をロスすることになった。

 つまり、フェルスタッペンの順位上昇に貢献するために使われた後、角田は正味約15秒を失ったことになる。両者がソフトタイヤに交換した後、彼がチームメイトから27.172秒遅れだったため、レースの最初の39周で世界最高のドライバーに対して約12秒しか失っていなかったことになる。これは決して悪い内容ではない。ソフトタイヤでは経験の差も出て差が広がったが、それでもあの15秒のロスがなければ、角田は楽に9位フィニッシュを果たしていたはずだ。

角田裕毅(レッドブル)
2025年F1第20戦メキシコシティGP 角田裕毅(レッドブル)

 ここまでがデータの話だ。では、私が得た良いニュースとは何か。ある情報筋から聞いた話では、ブラジルで予期せぬ事態が起こらない限り、角田は来年レーシングブルズに戻り、リンドブラッドと組む可能性が高まっているということだ。その場合、リアム・ローソンは放出されることになるだろう。首脳陣がローソンを外すとすれば、その主な理由は、パフォーマンスではなく、インシデントに巻き込まれることが多く、ルーキーにとって良いベンチマークとなるには一貫性が足りないためだ。

 レッドブルはハジャーを次の有望株とみており、レッドブル・レーシングに昇格させたいと考えている。角田がレッドブル・レーシングから外されてジュニアチームに戻るとすれば、それは少し残念かもしれないが、とりあえず2026年にF1に残ることが重要だ。したがって、実際にレーシングブルズで来年走れるなら、それは喜ぶべきニュースととらえるべきである。

角田裕毅とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2025年F1第20戦メキシコシティGP 角田裕毅とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)

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筆者ハービー・ジョンストンについて

 イギリス出身、陽気なハービーは、皆の人気者だ。いつでも冗談を欠かさず、完璧に道化を演じている。彼は自分自身のことも、世の中のことも、あまり深刻に考えない人間なのだ。

 悪名高いイタズラ好きとして恐れられるハービーは、一緒にいる人々を笑顔にする。しかし、モーターレースの世界に長く関わってきた人物であり、長時間をかけて分析することなしに、状況を正しく判断する力を持っている。

 ハービーはかつて、速さに定評があったドライバーで、その後、F1解説者としても活躍した。彼は新たな才能を見抜く鋭い目を持っている。F1には多数の若手育成プログラムがあるが、その担当者が気付くよりもはるかに前に、逸材を見出すこともあるぐらいだ。

 穏やかな口調でありつつも、きっぱりと意見を述べるハービーは、誰かが自分の見解に反論したとしても気にしない。優しい心の持ち主で、決して大げさな発言や厳しい言葉、辛辣な評価を口にせず、対立の気配があれば、冗談やハグで解決することを好む。だが、自分が目にしたことをありのままに語るべきだという信念を持っており、自分の考えをしっかり示す男だ。



(Text : Herbie Johnston)

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