「ピット戦略自体は悪くなかった」詳細は語らずもタイミングの悪さを指摘。代表は“着実に前進”と擁護【角田裕毅F1第20戦分析】
2025年F1第20戦メキシコシティGPの予選で7番手を獲得したカルロス・サインツ(ウイリアムズ)は、前戦アメリカGPで受けたペナルティを消化するため、5グリッド降格し12番手となり、予選11番手だった角田のスタートポジションはひとつ上がって10番手となった。好スタートを決めた角田は、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)とアイザック・ハジャー(レーシングブルズ)をかわして、ふたつポジションを上げて8番手で1周目のコントロールラインを通過した。
角田は10周目までピアストリを抑えていたが、11周目に抜かれた。これはスタート時に履いていたタイヤのコンパウンドが角田はミディアムで、ピアストリがソフトだったためだ。その後、角田は背後に迫ってきたソフトタイヤを履くエステバン・オコン(ハース)を、タイヤをマネージメントしながら抑え続けた。


ソフトタイヤを履いていた上位勢が次々とピットインしたことで、26周目には4番手浮上。そして、36周目にピットインする。ところがここでリヤタイヤの交換に手間取り、約12秒もの時間をピットボックスで費やす。このため、ピットアウトすると15番手まで後退した。
前を走るマシンが2回目のピットインを行ったことで、角田の順位は12番手まで浮上。さらに62周目にはハジャーをオーバーテイクして、ポイント獲得間近の11番手となった。しかし、10番手のガブリエル・ボルトレート(キック・ザウバー)を抜くまでには至らず、11位でチェッカーフラッグを受けた。10位のボルトレートとは約2秒、9位のオコンとも約5秒差だっただけに、ピットストップで通常より約10秒失っていなければ、9位は確実だった。
角田にとって、このレースでフラストレーションをためていたのは、それだけではなかった。
「詳しくは言えませんが、まずピットストップ(でのミス)もありましたし、ピットに入るタイミングもそうでした。今日は6位か7位には行けたと思います。でも、僕がコントロールできないところで、ただただ自分たちでポイント獲得するチャンスを逃したので、フラストレーションがたまります」
ライバル勢と同じように2ストップのほうがよかったのか? レース中、角田は無線で「プランAか? それともプランBか?」と尋ねる場面があった。だが角田は「ピットストップ戦略自体は悪くなかった」という。では、何に不満があったのか?
「ピットストップ戦略自体は悪くなかったと思いますが、ピットに入るタイミングだったりですね」

そこで角田のレースを振り返ると、ピットインする4周前の32周目から、タイヤを履き替えた上位勢に毎周のようにオーバーテイクされていた。オーバーテイクされるとどうしてもラップタイムが落ちる。31周目に1分23秒台で走行していた角田の32周目のラップタイムは1分24秒台となり、33周目には1分25秒台まで落ちた。34周目は1分24秒台だったが、35周目は再び1分25秒台。この4周だけで6秒タイムを失っていたこととなる。
2ストップ勢にオーバーテイクされる前の31周目にピットインし、しかも、ピットストップでミスがなければ、確実にオコンの前でピットアウトでき、かつ上位勢で2ストップしたドライバーたちとも戦えたかもしれなかった。
ただし、この日の角田にとって不運だったことは、無線の調子が今シーズン最も悪く、角田からレースエンジニアへの声が聞き取りづらい状況となっていたことだった。
そんな角田の走りをレース後、ローラン・メキース代表はかばった。
「今日のユウキのペースはよかった。特にミディアムタイヤでの最初のスティントが際立っていた。 残念ながら彼のピットストップはかなり長引いた。我々の超強力なピットクルーでは通常起こりえない事態が起きてしまったが、私がこのチームで見てきたなかで、最高の週末だった。彼は着実に前進している」
パフォーマンスは見せた。ただ、結果がついて来なかった。
