【予選日レポート】
フェラーリ勢の予選トップ3は今季初。ノリスはペースを警戒も、ライバルを引き離し選手権逆転も狙えるか【F1第20戦予選の要点】
2025年F1第20戦メキシコシティGPの予選直後のインタビューに、フェラーリのシャルル・ルクレールとルイス・ハミルトンが並んだ。フェラーリのふたりが予選グリッド3番手以内に入るのは、今季初めてのことだ。ルクレールは第14戦ハンガリーGPでのポールポジションを始めこれまで6回登場しているが、ハミルトンは第11戦オーストリアGPの4番グリッドが予選最高位だった。
それがよほど嬉しかったのだろう。観客の大歓声に応えることに忙しく、「前2台のトウ(スリップストリーム)を使えば、1コーナーで一気にトップに立てるのでは?」というインタビュアーの質問も、ハミルトンはまともに聞いていなかった。
「チームは決して諦めずに、クルマの改良を重ねてくれた。そのおかげだ。今日はマシン性能を100%引き出せたよ」とまくし立て、肝心の質問には「スタートから全力を尽くすよ」と答えるにとどまった。


とはいえスタート直後の順位逆転は、ここでは過去に何度も起きてきた。グリッド最前列から1コーナーのブレーキングまで800m近くあるため、ポールシッターが絶対有利とはいえない。今回も1コーナーまでにトウに入り、フェラーリのふたりがランド・ノリス(マクラーレン)を抜き去る可能性は十分にある。
ノリス自身、「フェラーリはレースペースがいいことが普通だし、明日も決して簡単な戦いにはならないと思う」と、一応は警戒感を見せていた。ただし区間ごとの最高速を見ると、フェラーリ勢がフィニッシュラインとセクター1、2でトップ。逆に低速のセクター3での区間タイムで、ノリスに差をつけられている。ダウンフォースを削った仕様にしていることは明らかで、決勝レースはタイヤの劣化に苦労するかもしれない。

ノリスにしてみれば、万一スタート直後の1コーナーで遅れをとっても、挽回できるという自信があるのではないか。何より彼にとっては、タイトル争いで直接のライバルであるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が5番手、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)も8番手に終わったことが大きいはず。
ここ数戦はフェルスタッペンの驚異の追い上げばかりが脚光を浴び、選手権2番手のノリスは若干影が薄かった。しかしもしこの予選順位のまま明日のレースを終えることができれば、26ポイント差まで迫ってきたフェルスタッペンを突き放し、首位ピアストリとの14ポイント差をひっくり返すことも可能だ。
インタビュー後の記念撮影でフェラーリのふたりに囲まれて見せたノリスの会心の笑みは、そんな風景を想像していたゆえかもしれない。
