新人アントネッリに求めるのは「今季すべてを学習に充てること」代表は来年に繋がる取り組みを指示【ルーキー・フォーカス】
2025年F1第19戦アメリカGPが開幕する直前の10月15日、メルセデスが2026年のドライバーラインアップを発表。来季も今季と同じく、ジョージ・ラッセルとアンドレア・キミ・アントネッリのコンビで戦うこととなった。
開幕戦から入賞を果たし、第10戦カナダGPでは初表彰台も経験したアントネッリだが、中盤以降は浮き沈みの多いレースが続いた。トト・ウォルフ代表は中盤戦以降のアントネッリを、どのように見ているのだろうか。
「トップチームに突然加入し、チームメイトが優勝を争い、チャンピオンシップ上位を争っている状況では、ルーキーに非常に大きなプレッシャーがかかることは容易に想像できる。さらに彼がイタリア人であること、そしてイタリアが長年競争力のあるドライバーを輩出できていなかったことも影響していると思う」
「だから、私が彼に求めていることは、今シーズンはすべてを学習にあてなさいということだ。しかも、残りのレースは彼にとって未知のサーキットだ。オースティンもそのひとつ。素晴らしい結果が出ることもあれば、難しいセッションや週末もあるだろう。だが来季の開幕と共にすべてはリセットされる。彼はサーキットを経験している。マシンはどのドライバーにとっても新しいものとなる。これは大きな要素だ。他のドライバーたちは、しばらくの間このマシンに慣れているからね。また、メディアや関係者からのプレッシャーにどう対処すべきか、彼は学んできたはず。今年学んだことを来年実現することが、我々のロードマップだ」
なお、ルーキードライバーが前年度のコンストラクターズ選手権4位以上のトップチームからデビューするのは2007年のルイス・ハミルトン(当時マクラーレン)以来で、そのチームで翌年の契約を更新するのも、またハミルトン以来となった。
契約更新後、初グランプリとなったアメリカGPは、アントネッリにとって悲喜こもごもの週末となった。1回60分のセッションだけで臨んだスプリント予選はQ2で敗退。それでも、ほかのルーキーたちもみんな、走り慣れていないコースに手間取っており、アントネッリはそのなかで最上位の11番手を獲得した。
スプリントではスタート直後の1コーナーで発生したアクシデントをうまく潜り抜けて8位でフィニッシュ。日曜日のレースに向けたタイヤのロングランデータをしっかりと持ち帰るとともに、コースをしっかりと習熟していた。
その結果、予選ではQ3に進出し、7番手を獲得。レースでも7番手をキープし、順調に走行していた。
しかし、6周目にカルロス・サインツ(ウイリアムズ)に追突されて、コースアウト。テクニカルディレクターのジェームス・アリソンによれば、その事故によってアントネッリのマシンは「サスペンションに取り付けられたセンサーがかなりの値を示すほど大きな衝撃を受けていた」と言う。
「サスペンション自体にダメージがないことが確認されたため、レースを続行させた」と言うアリソンだが、このときチーム側が最も懸念していたことは、リヤウイングのダメージが確認できなかったことだった。そのため、バーチャル・セーフティカー(VSC)が解除されて、レースが再開された後の1、2周は緊張感に包まれていたという。
そのような状態のなかで、メルセデスのマシンをチェッカーフラッグまで持ち帰ったアントネッリ。13位に終わり、自身初となる4戦連続入賞はならなかったが、スプリント・フォーマットをしっかりと走り切った経験は2026年に向けて、貴重な財産となったことだろう。