ノリスへの処分の詳細は「答えられない」とマクラーレン。措置の公表が“透明性の維持”だと主張【代表のコメント裏事情】
マクラーレンの第19戦アメリカGPは、前戦シンガポールGPでの一件を引きずったまま開幕した。
シンガポールGPでコンストラクターズ選手権を制したマクラーレンだが、スタート直後の3コーナーでオスカー・ピアストリのインにランド・ノリスが飛び込み、軽く接触。結果、ノリスが2番手の座をピアストリから奪って、最終的にノリスが3位でフィニッシュ。4位のピアストリに先着した。
レース中、チームに順位入れ替えを要求したピアストリだが、チームはスタート直後の混乱のなかで起きた接触として問題視していなかった。そのため、コンストラクターズタイトルを獲得した祝勝会に現れたふたりのドライバーは当初、複雑な表情をしていた。しかし、シンガポールGP後、マクラーレンは接触を再検証し、ある処分を下していたことがアメリカGP前日にノリスの囲み取材で判明した。
金曜日の国際自動車連盟(FIA)の公式会見に出席したマクラーレン・レーシングのCEOであるザク・ブラウンは、記者からの質問にこう答えた。
「みなさんがよく話題にする『パパイヤ・ルール』は、ほぼひとつのルールに集約される。それは、接触しないこと。チームメイトをコース外に追い出さないことだ。非常にシンプルで、ある種の独自の発展を遂げたルールだ。我々が望むのは、激しいレースを繰り広げつつも接触を避けること。というのも、接触はドライバー自身とチームを危険にさらすからだ。シンガポールGPでのスタート時の出来事は非常に軽微なインシデントだった。スタート時は混乱が激しく、路面も湿っていた。明らかに意図的な行為ではない。したがって、状況に応じて異なる結果を適用した。今回は軽微な状況だったため、結果も軽微なものにとどめた」
しかし、ブラウンはその結果の中身を明かさなかった。
「その点についてはお答えできない。これはチーム内の問題だからだ。みなさんが知りたい気持ちは理解するが、気づかれない程度の軽微なものだから、特に言う必要はない」
気づかれない程度の軽微なものなら、なぜ、マクラーレンが常々大切にしているオープンで透明性を保つことをしないのか?
ブラウンはこう続ける。
「可能な限り透明性を保つよう努めているが、我々は他の9チームと競っているからだ。戦略を明かす必要がないものもある。だから、ランドの件は明かさないことが最善策だと考えている。何らかの措置が取られたことを明かしたことが、我々にとって『可能な限り透明性を持って伝えた』と考えている。F1は競技であり、すべてを明かすことはできない。セットアップシートが公開されていないのと同様だ。我々はレースチームだ。レースをしたい。両ドライバーにチャンピオン獲得の機会を与えたいだけだ」
だが、これはマクラーレンが圧倒的に速い場合の話だ。ふたりが接触しない限り、自由にレースをしてもどちらかが優勝できるような状態に、いまのマクラーレンはない。いまマクラーレンが本当に抱えている問題は、じつはチーム内の調和を保つことよりも、マシンの戦闘力をいかに上げるかではないだろうか。
ブラウンはこう語る。
「両ドライバーにチャンピオン獲得の機会を与えたいが、それには2007年のようなリスクが伴う。だから我々はみんな、その可能性を認識し、結果として起こり得る事態に備えている」
残り5戦。いまのマクラーレンには私たちが想像している以上に長く感じていることだろう。