「これが精一杯」「滑るようになった」後半戦は各車ソフトタイヤのマネージメントに手を焼く【F1第19戦無線レビュー(2)】
2025年F1第19戦アメリカGP。迎えたレース後半は、多くのマシンがソフトタイヤを選択したが、一度もトップの座を譲らずにポール・トゥ・ウインを果たしたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)から中団勢まで、タイヤマネージメントに手こずることになった。アメリカGP後半を無線とともに振り返る。
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レース中盤、ソフトタイヤスタートのシャルル・ルクレール(フェラーリ)が早めにピットインしたことで、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)は4番手を走行。背後のジョージ・ラッセル(メルセデス)は、1秒ちょっとまで迫っていた。
29周目
トム・スタラード:ラッセルがアンダーカットレンジにいる。先に入ってソフトを履くか、それともラッセルを行かせてコース上で抜く?
ピアストリ:先に入りたい。
30周目にピットインし、結果的にラッセルの前をキープすることに成功した。
2番手のランド・ノリスはタイヤの性能劣化が限界と見極めたか、自分からピットインコールを出した。
33周目
ノリス:ボックスだ
ウィル・ジョゼフ:わかった。
クリーンエアで周回を重ねた首位マックス・フェルスタッペン(レッドブル)も、タイヤに手こずっていた。
フェルスタッペン:タイヤが厳しい。
ジャンピエロ・ランビアーゼ:ノリスも同じだ。ターン12でロックアップしていた。このあと、ピットインするぞ。
ノリスはタイヤ交換作業に手間取り、3秒6かかってしまった。だが順調だったとしても、ルクレールに先行することは難しかっただろう。
ブライアン・ボッツィ(→ルクレール):ノリスは2秒後ろだ。
21周目にせっかくコース上で抜きながら、またルクレールの後ろになってしまった。
35周目、6番手角田裕毅(レッドブル)に、オリバー・ベアマン(ハース)が迫る。しかしターン15のブレーキングで追突を避けようとコースオフ。スピンを喫し、9番手まで後退した。
36周目
ベアマン:(角田が)ブレーキングで動いた!
ロナン・オヘア:リカバリーしろ。まだ大丈夫だ。
しかし「記録」にもならず、不問に付された。
フェルスタッペン:(ノリスの)タイヤマネージメントについてアップデートをくれるかな。
ランビアーゼ:S字でタイヤをいたわっている感じじゃないね。君のほうがずっと注意深い。
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)はスタート直後のスピンもあって、17番手と苦しいレースを戦っていた。
38周目
ジェームズ・アーウィン:3ストライクだ。注意しろ。
アルボン:え? どこで? 何も言ってくれなかったじゃないか。
アーウィン:最後のふたつはターン12だ。
アルボン:言ってよ。
アーウィン:そうだね。申し訳ない。
ベアマンはなんとか9番手にとどまっていた。
ベアマン:(角田は)審議中なの?
オヘア:依然として、こちらから説明中だ。
32周目にソフトタイヤに変えたノリスが、悲鳴をあげた。
40周目
ノリス:タイヤが完全にダメだ。
ジョゼフ:わかった。まだ周回数はかなり残っている。なんとか持たせよう。タイヤ温度をいったん下げるんだ。
他のドライバーもソフトタイヤのマネージメントに苦労していた。
エルネスト・デジデリオ:ターン7から、8、9でタイヤを持たせよう。(前を走る)アロンソは、そうやってペースを上げている。
リアム・ローソン:これが精一杯だよ。
デジデリオ:とにかくアロンソのDRSに付き続けろ。
ローソン:きついよ。
4番手のルイス・ハミルトン(フェラーリ)は、前のペースについていけない。
41周目
ハミルトン:どこでロスしているんだ。(3番手ノリスに)もう10秒も離された。
リカルド・アダミ:ターン20の進入、それから立ち上がりでもロスしてる。
ハミルトン:さっきまで、すぐ後ろにいたのに。とにかく遅い。
アダミ:ターン6、7でプッシュだ。
43周目
フェルスタッペン:突然滑るようになった!
44周目
ノリス:とにかく遅い。グリップがない。
ジョゼフ:ああ、わかる。でもペースは速いぞ。あと12周だ。後ろは、かなり空いてる。タイヤを冷やして、ルクレールを仕留めるんだ。
ノリスと4番手ハミルトンとの差はその後10秒以上に広がった。ルクレール攻略の際に万一コースリミット違反を犯して10秒ペナルティを取られても、ノリスは3番手をキープできる。
ランビアーゼ(→フェルスタッペン):ランドがタイヤのことで文句を言っている。このタイヤは壊れやすいから、君も気をつけるんだ。
51周目、ノリスがルクレールを抜いて2番手を取り戻した。それでもフェラーリ陣営は2番手奪還を諦めない。
52周目
ボッツィ(→ルクレールに):プレッシャーをかけ続けろ。(ノリスは)3ストライクだから。
ジョゼフ(→ノリス):グッジョブだ。ルクレールはプッシュし続ける。君にトラックリミット違反を犯させるつもりだ。
チェッカー3周前、下位を走るアルピーヌ2台の間に、問題が持ち上がっていた。18番手フランコ・コラピントが、すぐ前のピエール・ガスリーを抜きにかかったのだ。
54周目
スチュワート・バーロウ:順位保持の指示を守るんだ。
コラピント:なんだって? 順位を守れ? でも(ガスリーは)遅いんだけど。
バーロウ:言い分はわかるが、とにかくそのままだ。リフト&コーストだ。
コラピント:何だって? 順位を守れ?
その直後のターン1で、コラピントはガスリーを抜いていった。
ガスリー:グッジョブだ。
皮肉を返すガスリー。アルピーヌ首脳陣は、コラピントに対し怒り心頭だった。
一度も首位を譲ることなく、フェルスタッペンがチェッカーを受けた。
ランビアーゼ:今回も素晴らしいレースだった。勝利を存分に堪能してくれ。またメキシコで会おう。
フェルスタッペン:ありがとう。信じられない週末だった。帰りのフライト、気をつけて。
翌週にはメキシコシティGPの連戦が控えているが、ランビアーゼはイギリスに急いで帰国するようだった。フェルスタッペンはスプリントでの優勝を含め、この週末に33ポイントの荒稼ぎ。選手権首位ピアストリとの差を、一気に40ポイントまで縮めたのだった。