「2ストライクだ」「ターン13に気をつけて」ドライバーはトラックリミット違反とも格闘【F1第19戦無線レビュー(1)】
2025年F1第19戦アメリカGP。ソフトタイヤを活かしたシャルル・ルクレール(フェラーリ)がスタートに成功し、ランド・ノリス(マクラーレン)を抜いて2番手に上がった。序盤から各車トラックリミットに注意を払い、またヒートハザードが発令されるほど暑かった今年のアメリカGPではタイヤ戦略に懐疑的にならざるを得ず、厳しいレースとなった。アメリカGP前半を無線とともに振り返る。
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ポールシッターのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が首位をキープする一方で、上位勢では唯一ソフトタイヤを履いたシャルル・ルクレール(フェラーリ)が、ランド・ノリス(マクラーレン)を抜いて2番手に浮上した。
後方では9番グリッドからスタートしたカルロス・サインツ(ウイリアムズ)が、2周目にオリバー・ベアマン(ハース)を抜いて、アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)に迫っていた。
2周目
ガエタン・イエゴ(→サインツ):P8だ。このまま行こう。アントネッリはDRS圏内だ。
3周目
ウィル・ジョゼフ:ランド、ターン19の進入と、縁石、通過スピードに注意だ。
ルクレールを抜き返すことに集中していたノリスは、トラックリミットを越えがちだったのだろう。
ターン12のフルブレーキングで、アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)が止まりきれず、飛び出していった。
4周目
ハジャー:一体、何なんだ!
ピエール・アムラン:ブレーキングに問題がある。オフセットマイナス1に変えるんだ。
担当エンジニアが、ブレーキバランスの変更を指示した。
ハードタイヤでスタートしたエステバン・オコン(ハース)は、ペースの遅さに苦しんでいた。
4周目
ラウラ・ミュラー:背後の2台との差はキープできている。
オコン:彼らもタイヤに苦しんでるのか?
ミュラー:オリー(ベアマン愛称)も苦しんでる。
オコン:タイヤで?
ミュラー:ペースが伸びてないが、タイヤかどうかは不明よ。
6周目、ターン15でアントネッリとサインツが接触。右フロントにダメージを負ったサインツはリタイアとなった。
サインツ:(ダメージを)チェックしてくれ。
イエゴ:パンクチャー、パンクチャーだ。フロントウイングにもダメージがある。
7周目
アントネッリ:跳ね飛ばされた。
ピーター・ボニントン:見ていたよ。
アントネッリ:なんてことをしてくれたんだ。
それでもアントネッリは、なんとかレースに復帰した。
イエゴ:クルマを止めろ、止めるんだ。マーシャルポストで止めろ。
サインツ:みんな、申し訳ない。アントネッリが被せて来た。
サインツの言い分は認められず、次戦メキシコシティGPでの5グリッド降格のペナルティが科された。
アントネッリ:ダメージの影響は?
ボニントン:空力的には、大丈夫だ。でもチェックを続ける。大きな接触だったからね。
最後尾スタートから順位を上げていたハジャーも、何度もトラックリミット違反を犯していた。
アムラン:アイザック、これ以上ストライクはもらえない。あと1回コースを出たら、黒白旗だ。
ハジャー:ええ? どこで?
アムラン:ふたつはターン12、もうひとつはターン19だ。
ジョージ・ラッセル:ドリンクが漏れている。
マーカス・ダドリー:了解。
ヒートハザード(高温警報)の出ているレースで、このトラブルはドライビングに影響が出るかもしれない。
10周目
オスカー・ピアストリ:左フロントがよくない感じだ。
ミディアムタイヤで6番手スタートのオスカー・ピアストリ(マクラーレン)はラッセルをかわしてひとつ順位を上げていたが、左フロントタイヤに早くも変調を感じていた。
11周目
ラッセル:ピアストリが遅い!
ダドリー:左フロントに苦しんでるようだ。この周の君のタイヤマネージメントは、すごくよかったぞ。
14周目
ルクレール:ノリスがトラックリミット違反だ。
背後のノリスは確かに最終コーナーではみ出していたが、あの小さなミラーで視認していたとしたら驚きだ。
ノリスのペースは明らかにルクレールに優っていたが、抜くことができない。
17周目
ジョゼフ(→ノリス):ターン20で2ストライクだ。
接近戦を仕掛け、コースをはみ出すことが続いた。それはルイス・ハミルトン(フェラーリ)も同様だった。
ルイス・ハミルトン:またコースを出た。
リカルド・アダミ:ああ。2ストライクだ。
ジョゼフ:ボックスだ。ボックスしてルクレールを抜こう。
ノリス:了解。ピットインで抜く。
ジョゼフ:いや、ステイアウト、ステイアウトだ。
この時点でピットインは早すぎるという判断だったのだろう。
21周目
ジョゼフ:3回目食らったぞ。ターン13に気をつけろ
ノリス:押し出されたんだよ。いや、そうだね。わかっている、わかっているってば。
ジャンピエロ・ランビアーゼ(→フェルスタッペン):ノリスは3ストライクだ。
22周目、ソフトタイヤスタートのルクレールがピットイン。ミディアムタイヤに履き替えた。
ブライアン・ボッツィ:出口でアロンソが近づいている。
ルクレール:フルアタックしろってこと? 最終コーナーの時点で言ってよ。
ボッツィ:高速コーナーだったから、控えたんだ。
レース前のピレリの推奨戦略は、ミディアム→ハードの1ストップだった。しかしハードは遅すぎる、ミディアム→ソフトで行くというのが、この時点での各チームの共通認識になっていたようだ。
24周目
スティーブン・ぺトリック:ニコ、どうやらみんな同じボートに乗っているようだ。全員がハードは避けて、ソフトに履き替える。そして最後まで走り切る。
ニコ・ヒュルケンベルグ:それ、気に入らないな。
ぺトリック:でも君はP8だ。ペースも速い。
ヒュルケンベルグ:アロンソは防げている?
ぺトリック:ああ。君のほうがコンマ5秒速いよ。
27周目
フェルスタッペン:タイヤがトリッキーになってきた。
ランビアーゼ:ああ。コンディションが変わってきているね。
29周目
ジョゼフ:ソフトで最後まで行くのはどうだ?
ノリス:いや、難しいだろうね。
タイヤの劣化に苦しむドライバーたちは、ミディアム→ソフトの1ストップ戦略に懐疑的だった。