【F1第19戦ベスト5ドライバー】チームの期待に応えた角田裕毅/フェラーリにふさわしいと証明しつつあるベアマン
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、各グランプリウイークエンドのドライバーたちの戦いを詳細にチェックし、独自の評価によりベスト5のドライバーを選出する。今回は第19戦アメリカGPの戦いを振り返った。
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シャルル・ルクレール(フェラーリ):スプリント予選10番手/スプリント5位/予選3番手/決勝3位
シャルル・ルクレールが勝てるマシンに乗っていたなら、マックス・フェルスタッペンは勝つのが今より難しくなるだろう。ようやくフェラーリが決勝レースで力を発揮したこの週末、ルクレールは炎のような走りを見せ、わずかでも成功のチャンスがあれば彼に何ができるのかを証明してみせた。
予選では素晴らしい走りをし、フロントロウまでわずか0.006秒のタイムを記録。日曜日にはアグレッシブな戦略を採ることを決め、ソフトタイヤでレースをスタートした。ほとんどの人々は、ソフトでスタートすれば2ストップになると予想しており、これは大きなリスクのある決断だった。
そのリスクは半分効果を見せた。ルクレールはスタートでランド・ノリスをかわし、21周にわたってマクラーレンの前方を走り続けたのである。慎重な選択をするならば、残り35周はハードタイヤで走るところだが、ルクレールとフェラーリはミディアムタイヤを選択し、速さで勝るノリスに対してアンダーカットを成功させ、レース残り5周のところまで彼を抑え続けた。
レースの大部分で激しいプレッシャーにさらされながらも、ルクレールは一度もロックアップせず、わずかなミスすら犯さなかった。彼が“ドライバー・オブ・ザ・デイ”に選出されたのは当然のことといえるだろう。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):スプリント予選1番手/スプリント1位/予選1番手/決勝1位
マックス・フェルスタッペンはオースティンでの週末を完全に支配し、2つのポールポジションと2つのレースウインを手にした。今回もレッドブルのセットアップにおける仕事は完璧だった。マシンが施された変更に対して論理的な反応を見せるという点で、サマーブレイク前と比べて改善がみられているようだ。予選でマクラーレンのドライバーたちが小さなミスを犯したり、単にペースを持ち合わせていなかったりするなかで、フェルスタッペンはいつもどおり素晴らしい仕事を果たし、レッドブルをポールポジションに導いた。
スプリントレースでは、両マクラーレンが即座に脱落した後、フェルスタッペンは、序盤、ジョージ・ラッセルの強引な飛び込みに対処しなければならなかったが、その後は、ラッセルから遠ざかって行った。
日曜日の決勝では、ルクレールが21周にわたってノリスを抑えている間に、フェルスタッペンはチャンピオンシップのライバルに対して10秒のリードを築き、レースの終わりまでギャップをコントロールし、タイヤを労わる余裕もあった。
ニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー):スプリント予選4番手/スプリント13位/予選11番手/決勝8位
ニコ・ヒュルケンベルグにとって、今年ここまでで最も好調な週末だった。もちろん、シルバーストンでは記念すべき初表彰台を獲得したが、週末全体のパフォーマンスとしては、今回の方が優れていた。今回はコンディションを読み切った巧みな戦略やタイヤ作戦の助けはなく、ヒュルケンベルグはFP1の段階から純粋なペースで競争力を示していたのだ。
スプリント予選では圧巻の走りを見せ、ザウバーに4番手という素晴らしい結果をもたらした。しかしスプリントではスタートで不運にもオスカー・ピアストリとフェルナンド・アロンソにはさまれてしまい、後退することになった。
だが、日曜の決勝では成果を得ることができた。予選で11番手という立派な結果を収め、決勝では、カルロス・サインツとアンドレア・キミ・アントネッリのインシデントによりポイント圏内に浮上。さらにオリバー・ベアマンが角田裕毅を避けるためにスピンしたことで、ヒュルケンベルグはもうひとつ順位を上げて、チームにとって非常に価値のある4ポイントを獲得した。
オリバー・ベアマン(ハース):スプリント予選16番手/スプリント15位/予選8番手/決勝9位
オリバー・ベアマンは2戦連続でポイントを獲得し、フェラーリが次に大きな期待をかける存在としてふさわしい資質を見せ始めている。ハースがオースティンに持ち込んだ新パーツをスプリント予選開始時に初めて使用したにもかかわらず、ベアマンは、フリー走行ですでにそれを使用していたエステバン・オコンよりも速さを発揮してみせた。
スプリントでは素晴らしいリカバリーを見せ、8位でチェッカーフラッグを受けたが、10秒のペナルティによってポイント圏外に落とされた。
本予選ではアップデートに慣れた様子を見せ、ベアマンは「ベスト・オブ・ザ・レスト」の8番手を獲得、ひとつ上のアントネッリとはわずか0.025秒差だった。
決勝では全体を通してポイント圏内で走行。前を行く角田にアタックした際に、接触を避けるためにスピン、その危険な瞬間を切り抜けたものの、ヒュルケンベルグに抜かれてポジションを落とした。ベアマンはタイヤがもはやベストな状態ではなくなった後も、落ち着いて走り、9位でフィニッシュした。ハースはコンストラクターズ選手権8位のザウバーに追いつこうとしており、ベアマンが稼いだポイントは大きな意味を持つ。
角田裕毅(レッドブル):スプリント予選18番手/スプリント7位/予選13番手/決勝7位
角田裕毅は土曜スプリントと日曜決勝の両方でポイントを獲得し、レッドブルが彼に期待する仕事をやり遂げ、チームがコンストラクターズ選手権でメルセデスおよびフェラーリとの差を縮めるのに貢献した。
とはいえ簡単な週末ではなかった。予選では、すべてをまとめることに苦労し、SQ1では最初のアタックが不出来だった後、チームの戦略ミスにより、2回目のアタックをするチャンスを逃した。土曜の予選では、リアム・ローソンとピエール・ガスリーがアタックの妨げになったとして、Q2で敗退した。
しかしレースは2回とも素晴らしいスタートを決め、ターン1で果敢に攻めた結果、大きくポジションを上げ、角田は両レースを7位でフィニッシュし、チームにとって価値ある8ポイントを持ち帰った。