【F1アメリカGP予選の要点】ピアストリに漂う焦り。初タイトル獲得に黄信号を灯すプレッシャーの要因
2025年F1第19戦アメリカGP予選は、ドライバーズランキング3位につけるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が圧巻のポールポジション獲得で幕を閉じた。
ランキング2位ランド・ノリス(マクラーレン)が2番手につけた一方で、ランキング首位オスカー・ピアストリ(マクラーレン)は6番手に沈んだ。ピアストリはこの日のスプリントでも、スタート直後の多重クラッシュでノリスとともに0周リタイア。ノーポイントに終わっている。
本稿掲載現時点ではまだ本人のコメントは届いていないが、予選で振るわなかったのはスプリントでのクラッシュの影響でマシンに受けたダメージが直りきらず、パフォーマンスが今ひとつだったせいかもしれない。
とはいえこの多重事故も、ピアストリ自身の動きがきっかけのひとつとなった。スタートで2番手ノリスをわずかに先行したまではよかったが、ターン1のブレーキングでノリスが前に出た。そこでピアストリはクロスをかけて抜き返しに行ったのだが、イン側にはすでにニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)とフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)がおり、クラッシュしてしまったのだ。
夏休み明け以降の5戦を振り返ると、ピアストリはかなり苦しんでいる。オランダGPこそ堂々のポール・トゥ・ウィンを果たしたが、その後の決勝はイタリアGPで3位、アゼルバイジャンGPでリタイア、シンガポールGPで4位。予選順位はさらに悪く、イタリアGPは3番手、アゼルバイジャンGPは9番手、シンガポールGPは3番手。そして今回アメリカGPの6番手。ドライバーズランキングでは首位を守っているものの、最大34ポイント広げていたランキング2位ノリスとの差は、22ポイント差まで縮まってしまった。
そしてふたりの背後には、フェルスタッペンが迫る。アメリカGP開催前の時点で、ピアストリとは63ポイント差。今季残り6戦で10ポイントずつ縮められても、まだ逃げ切れる。ピアストリにしてみれば、余裕のはずだった。
しかしここ4戦のフェルスタッペンは優勝2回、2位2回と勢いに乗る。予選もレースもイタリアGP以降、一度もマクラーレンふたりに負けていない。そして今回のスプリントでは、フェルスタッペンがポール・トゥ・ウィンを果たす一方で、マクラーレン勢は全滅。一気に8ポイント縮まっている。『1戦あたり10ポイント縮める』という超難易度の高いミッションも、フェルスタッペンならやってのけてしまうかもしれない、そう感じてしまうほどの活躍ぶりが続いている。
追われるピアストリは、フェルスタッペンからのプレッシャーをひしひしと感じているのではないか。ノリスとの関係も、今や微妙だ。F1デビュー3年目、24歳の若者とは思えない冷静沈着さには何度も驚かされてきたが、カナダGPでの同士討ち、イタリアGPでの順位入れ替え、シンガポールGPスタート直後の接触、そしてその後のチームの対応に対して、ピアストリはかなり不満が溜まっているように見える。
今回のスプリントでのクラッシュは、1周も走れなかったことで、レースのメインタイヤとなるであろうミディアムタイヤのロングランペースを見極められないこともかなり痛かった。日曜日の決勝レースの結果次第では、ピアストリはさらに厳しい立場に置かれてしまうかもしれない。