2025.10.17

【F1コラム】歴史あるGPが消滅、誤った方向に進むF1カレンダーの変化。ローテーション制は最適な解決策にはならず


2025年F1エミリア・ロマーニャGPスタート(イモラ)
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 ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、F1で起こるさまざまな出来事、サーキットで目にしたエピソード等について、幅広い知見を反映させて記す連載コラム。今回は、F1開催を望む国が増加するなかで選択されつつあるローテーション制をテーマに取り上げる。

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 ザンドフォールト(F1世界選手権デビュー:1952年)は今年、同サーキットでの最後から2番目のグランプリを開催した。このレースは2026年での開催の後、消滅する予定である。

 カタロニア・サーキット(F1デビュー:1991年)でのスペインGPも、来年が最後となる見込みであり、スペインGPは新設されるマドリードのマドリングに移される。

2025年F1第9戦スペインGP
2025年F1第9戦スペインGP ルイス・ハミルトン(フェラーリ)、シャルル・ルクレール(フェラーリ)、ジョージ・ラッセル(メルセデス)

 イモラ(F1デビュー:1980年)を開催するエミリア・ロマーニャGPは、今年5月の開催をもって現契約は終了した。

 ポール・リカール(F1デビュー:1971年)は、2022年に最後のフランスGPを開催した。ちなみに、モーターレースを「グランプリ」と呼ぶアイデアは、フランスで生まれたものである。

 ホッケンハイム(F1デビュー:1970年)は、2019年の最後のドイツGPをもって、F1カレンダーから姿を消した。ちなみに自動車はドイツで発明されたものだ。

 ヨーロッパの視点から見ると、F1世界選手権は間違った方向に進んでいるように見える。

 クラシックなサーキットとレースが、驚くべき速さで消えつつある。代わりに、モータースポーツの文化が乏しい国々の新しいサーキットが、カレンダーに加えられるようになった。アゼルバイジャンのバクー、サウジアラビアのジェッダ、カタールのロサイルは、その代表例だ。

角田裕毅(レッドブル)
2025年F1第17戦アゼルバイジャンGP 角田裕毅(レッドブル)

 各レースから収益を得るF1組織を含む誰もが、現在の24レースからなる世界選手権カレンダーが限界点に達していることに同意している。しかし、タイ、トルコ、南アフリカなどの、国の補助金を得られるサーキットが、F1レースの開催を求めて列をなしており、これがクラシックなヨーロッパのサーキットに対する圧力を高めつつある。

 F1は、歴史が現代のF1の成功において重要な要素であることを理解している。たとえば、モンツァは、1950年にファン・マヌエル・ファンジオやアルベルト・アスカリが競った場所だ。

 したがって、新たな開催地を含め、古くからのレースを守るための解決策として、F1は『交代制』を提案している。それは、イモラ、カタロニア、スパ・フランコルシャン、ホッケンハイム、あるいはザンドフォールトといったクラシックサーキットが、2年または3年ごとに1戦ずつ開催する方式である。ポルトガルのポルティマオもこの『交代制』に加わる可能性がある。

 理論上は、複数の歴史あるヨーロッパのサーキットを世界選手権カレンダーに残す、理にかなった解決策である。

 しかし現実には、対象となるサーキットにとって、簡単に受け入れられるアイデアではない。インフラやスタッフ、維持費の固定費は毎年かかるが、グランプリからの収入は2年または3年に1度しか得られないからである。

 F1は、新たな収益性の高い開催地への欲求と、歴史あるレースの保護との間で、良い妥協点を見つけなければならないが、それは簡単な仕事ではない。CEOステファノ・ドメニカリ率いるチームが今後、どのようにこの問題に対処していくのか、注目される。

2025年F1第18戦シンガポールGP
2025年F1第18戦シンガポールGP 決勝スタート前のグリッド


(Text : Peter Nygaard)

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