
【】“マクラーレンの前でフィニッシュ”を優先。ライバルを抑え込んだ走りとクリーンな週末を代表が評価【角田裕毅F1第17戦分析】
9月22日
レッドブル移籍後、最高位となる6番手からF1第17戦アゼルバイジャンGPの決勝レースをスタートした角田裕毅(レッドブル)。2番手にはカルロス・サインツ(ウイリアムズ)、3番手からはリアム・ローソン(レーシングブルズ)がスタートするため、角田には6位以上のポジションが期待された。
しかし、同時に角田の後方からはマクラーレン勢2台とフェラーリ勢2台がスタートすることになっていた。移籍後、ここまでのレース結果を考えると、角田が6番手を維持するのは、簡単なことではなかったはずだ。

そのような状況のなかで、アゼルバイジャンGPで角田は移籍後ベストレースとも言える走りを披露した。結果だけを見れば、6番手スタートで6位入賞は現状維持に終わったように映るかもしれない。さらに、ひとつ前を走るローソンを最後まで抜けなかったことで、角田を応援するファンにとっては消化不良気味のレースとなったかもしれない。
だが、ローソンは前日の予選で、バクー市街地サーキットの最高速が記録されるフィニッシュラインでトップとなる時速344.7kmを出しており、ストレートスピードが伸びていた。その証拠に、レース序盤はアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)が、レース中盤はシャルル・ルクレール(フェラーリ)がローソンの背後まで迫ったものの、オーバーテイクできなかった。

この日、角田がローソンを抜けなかったのには、もうひとつ理由がある。それは、角田の背後にマクラーレンのランド・ノリスがいたことだ。
角田はこう語る。
「最も重要なことはマクラーレンの前でフィニッシュすることでした。それがレッドブル・ファミリーにとって最も重要なことでした。もちろん、あれだけ接近していれば、(ローソンを)オーバーテイクしてヒーローを演じたい気持ちもありました。でも、大切なことはオーバーテイクすることではなく、リスクを冒かさないことだったので、無理はしませんでした」
もし、角田が強引にローソンを抜こうとして1コーナーに飛び込んでオーバーテイクに失敗した場合、角田の背後にいたノリスが角田を抜くだけでなく、状況によってはローソンもオーバーテイクしてしまう可能性があった。そうなると7番手(6点)を走行していたノリスが5番手(10点)となる。ドライバーズ選手権でフェルスタッペンがマクラーレンを逆転するためには、レッドブルとしては1点でも余計なポイントを与えたくなかったのである。
またメルセデスとフェラーリとともにコンストラクターズ選手権2位の座をかけて戦っているレッドブルにとっても、角田がローソンを無理やり抜くことよりも、マクラーレンの背後にいるフェラーリ勢2台の前で確実にフィニッシュすることが重要だった。

ローソンを抜けなかったと見るか。ノリスや2台のフェラーリ勢を抑え切ったと見るか。少なくとも、レッドブルの角田に対する評価は後者だ。ローラン・メキース代表はこう言って角田を称えた。
「ユウキは非常に力強いレースを展開し、マクラーレンとフェラーリを抑え込んだ。クリーンな週末が必要だった彼が見事にそれを実現し、チームにとって重要なポイントを獲得してくれた」
フェルスタッペンと角田が獲得した33点はこの日の最高得点であり、レッドブルとしては今シーズン最高点、昨年のマイアミGP(44点)以来の高得点となった。
コンストラクターズ選手権2位のメルセデスと18点、3位のフェラーリとも14点までその差を縮めたレッドブル。いまや角田がチームの命運を握る存在となっていると言っても過言ではない。

(Text : Masahiro Owari)